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レッドハット、Libertyリリースベースの「Red Hat OpenStack Platform 8」
フリービットのOpenStack導入事例も発表
(2016/5/18 06:00)
レッドハット株式会社は17日、OpenStackディストリビューションの最新版「Red Hat OpenStack Platform 8」を提供開始した。同時に、Red Hat OpenStack Platformを含むプライベートクラウドに必要な基盤製品をひとまとめにした製品「Red Hat Cloud Suite」を6月1日から提供することを発表した。なお、いずれも米国で4月20日に発表された製品の、日本での提供アナウンスとなる。
さらに同じく17日、導入事例として、Red Hat OpenStack Platformがフリービットの社内システムの基盤へ採用されたことが発表された。また、エーティーワークスがレッドハットとともに、サーバーやストレージなどとOpenStackの組み合わせを検証したエンジニアドシステムに向けて、共同性能検証を実施することも同時に発表された。
同日開催された記者発表会において、レッドハット 執行役員 サービス事業統括本部 統括本部長の水橋久人氏は、「OpenStackの売り上げは、昨年度(同社の会計年度は3月~2月)は一昨年の約3倍に伸びた。また、昨年度の第4四半期売り上げが、昨年度全体の半分近くあった。さらに、企業において、昨年度の第1~3四半期まではPoC(Proof Of Concept:概念実証)での利用が多かったが、第4四半期から今年度にかけては実際の業務に使うように変わってきた」と市場の成長を語り、「OpenStackのエリアで、マーケットシェアもマインドシェアもRed Hatをトップにしていく」と抱負を述べた。
OpenStack Libertyベース、テレコムNFV向け機能も追加
Red Hat OpenStack Platform 8は、Red HatのOpenStackディストリビューション製品の最新版。2015年10月にリリースされたバージョンの「OpenStack Liberty」をベースとしており、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)7」を統合して提供する。サポート期間は3年。前バージョンからの価格の変更はない。
なお、前バージョンまでは「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」という長い名前だったが、今回のバージョンから「Red Hat OpenStack Platform」と改名した。
OpenStack Libertyの変更点以外のRed Hat OpenStack Platform 8の新機能としては、まず、OpenStack自身のアップデートにOSP directorを採用した。これにより、アップデートを高速化してダウンタイムを最小化する。なお、RDO directorは、OpenStackを用いてOpenStackをインストールするTripleO(OpenStack on OpenStack)がベースになっている。
また、クラウド統合管理ツール「Red Hat CloudForms」(Red Hat OpenStack Platform以外を統合管理するには別途購入が必要)と、分散ストレージソフトウェア「Red Hat Ceph Storage」(64TBまで。それ以上は別途購入が必要)を搭載する。
テレコムNFV(通信事業者のネットワーク機能仮想化)に向けた機能も追加された。Linux上のソフトウェアでのパケット処理を高速化するIntel DPDKや、CPUなどの割り当て配分を管理してレイテンシーを制御するリアルタイムKVMに対応。さらに、オープンソースのNFVプロジェクト「OPNFV(Open Platform for NFV)」の設計を受け、SDNコントローラのOpenDaylightを搭載する。
そのほか、OpenStackのプロジェクトからRally(ベンチマークサービス)とkolla(OpenStack自体のDockerコンテナ化)を新たにテクノロジープレビューとして搭載。また、Cells、DVR、Manilaも、従来からひき続きテクノロジープレビューとして搭載する。
レッドハット シニア・ソリューション・アーキテクト OpenStackチームリードの内藤聡氏は、Red Hat OpenStack Platformの利点として、Linuxと統合してサポートする重要性を強調。たとえば、LinuxカーネルのアップデートのときにOpenStackが無事動くかどうかの検証や、KVM上のWindows仮想マシンでディスクアクセスに問題が発生したとき、どこに問題があるかしっかり検証することなどを例に挙げた。
また、プライベートクラウドが必要かという疑問に対して、「パブリッククラウドとプライベートクラウドは対立するものではなく補完するもの」としてハイブリッドクラウドの必要性を主張。オンプレミスでの技術革新として1PBストレージのDropbox Diskotechの例を、パブリッククラウドのみへの依存を避ける例としてパブリッククラウドを大いに利用しつつ自社内にも同様のクラウドを設ける国内企業の例を紹介した。
プライベートクラウドに必用な製品をまとめたRed Hat Cloud Suite
同時に発表された「Red Hat Cloud Suite」は、プライベートクラウドに必要なすべての要素製品をまとめた製品だ。Red Hat OpenStack Platformに、仮想化基盤のRed Hat Enterprise Virtualization(RHEV)や、システム管理のためのRed Hat SattelliteやRed Hat Insights、PaaSプラットフォームのOpenShift Enterpriseなどを含む。
これにより、クラウド基盤製品の選択肢が、Red Hat OpenStack Platfrom(50万6900円~)、RHEVやRed Hat Satellite・Red Hat Insightsを加えたRed Hat Cloud Infrastructure(64万9900円~)、さらにOpenShift Enterpriseを加えたRed Hat Cloud Suite(166万3900円~)の3つとなる(価格は2ソケットに対するStandardサポートの1年間サブスクリプション費用)。
内藤氏はRed Hat Cloud Suiteの価格について「含まれる製品から比較すると、戦略的な価格付け」と説明した。
運用標準化を目指したフリービットのOpenStack導入
記者発表会には、導入事例としてフリービット株式会社が、共同検証として株式会社エーティーワークスが登場した。
フリービットは、社内システムの基盤としてRed Hat OpenStack Platfromを採用した。背景にあるのは、設立17年を経て、ハードウェアやソフトウェアの種類やバージョンが入り交じり、複数の運用方法を維持する苦労があった。そこで、老朽化した機材のリプレースを兼ね、OpenStack導入により運用の標準化や自動化、俊敏性をはかったと、同社 YourNet事業部 副事業部長の井口幸一氏は説明した。
導入にあたり、同社では各社のOpenStackディストリビューションを検証して、Red Hat OpenStack Platfromを選定した。
選定ポイントは、「サポート」「信頼性」「互換性」の3つ。OpenStackの初の導入だったためサポートを重視して、標準サポートより上のサービスを契約した。「ストレージの設定が反映されないという問題で問に合せたとき、それが仕様上対応していないというだけでなく、『やりたいのはこういうことだと思うが、そのためにはこういう方法もある』とていねいな回答をもらった」(井口氏)。
また、まずは社内システムでの採用だが、将来的にはお客様向けサービスを動かすので、自律的なフェールオーバーとフェールバックに対応する信頼性が必用。さらに、サーバーなどは購入時点ごとに性能や価格のバランスを見て購入しているため、さまざまなハードウェアに対応する互換性も重視した。
OpenStack導入の効果は、まず標準化。サーバーの運用をNova/Neutronの標準APIで75%をカバーできるようになった。ストレージもCinderのAPIで制御し、ベンダー依存のオペレーションから抽象化した。さらに、Glanceによる仮想マシンのテンプレート機能を活用し、最初に作るとき以外は属人性を排除できた。
また機敏性としては、46インスタンスを構築するのに、手動で2日近くかかっていたのが、8分26秒でできるようになったという。
【お詫びと訂正】
初出時、井口氏の肩書きを副部長としておりましたが、副事業部長の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
A.T.WorksのサーバーによるOpenStack構成の検証
エーティーワークス(A.T.Works)の取締役副社長、永井浩和氏は、エンジニアドシステムに向けてのレッドハットとの共同性能検証について説明した。
永井氏は、OpenStackは汎用サーバーで動作するぶん、一般企業のシステムに導入するときに設計に時間がかかることを問題として定期。そこで、ストレージ容量など以外の変動要素を排除した検証済みの構成を選定するとともに、エンジニアドシステムとしてレッドハットやそのパートナーにより迅速に構築できるようにすることを目的として語った。
そのために、エーティーワークスのRed Beagleサーバーの1/4Uモデル(幅・奥行とも1/2サイズ)に、IntelのSSDやNVMe、NICを組み合わせて、Red Hat OpenStack Platfromの動作・性能検証をする。これにより、3Uに収まる小型OpenStack環境など、スモールスタートを実現する最適化したソリューションを提供するという。