ニュース
NEC、2015年度中間決算は減収減益だが、通期目標は変更せず
「通期目標の当期純利益650億円達成目指す」と遠藤社長
(2015/10/30 06:00)
日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2015年度中間決算を発表した。連結決算の売上高は、前年同期比1.3%減の1兆3081億円、営業利益は同38%減の133億円、経常利益は同31.7%減の114億円、当期純利益は同98.2%減の2億円と、減収減益となった。
代表取締役執行役員社長である遠藤信博氏は、「減収減益となったが、下半期予測値の修正は行わない。下半期で増収増益を実現し、当期純利益650億円達成を目指す」と通期見通しの変更は行わないと明言した。この要因として、好調な事業があることを挙げ、「ITサービスが好調で、マイナンバー関連に加え、セーフティ/サイバーセキュリティ事業が前年比7割増と好調。この好調領域にさらに注力していくことで、通期増収増益を実現する」と説明した。
また、今年度は現在進行中の「2015中期経営計画」の最終年度にあたることから、現在策定中の次期中期経営計画の方向についても触れ、「大きな方向は2015中期経営計画と変わらない。成長のためのポイントとして、お客さまにバリューを提供することができるカンパニー、Valueプロバイダーになることを目指す。あらにグローバル競争力が足りないことは明確で、この部分をさらに強化する」ことを盛り込むと説明した。
NECの第2四半期(2015年7月~9月)の業績は、売上高が前年同期比0.6%減の7215億円、営業利益が前年同期より52億円減の234億円、経常利益が前年同期より76億円減の191億円、当期純利益が前年同期より123億円減の102億円。
セグメント別上半期実績としては、パブリック分野は売上高が前年同期比2.9%減の3346億円、営業利益は前年同期から93億円減の126億円。官公庁向けで前年同期にあった大型案件の売り上げ分がなくなったことで減収となったものの、マイナンバー関連需要の取り込みなど公共向け事業は堅調に推移した。ただし営業利益では売上減に加え、拡販活動の強化費用、ITサービス関連の不採算案件の増加によって減益となった。
エンタープライズ分野は、売上高は15.7%増の1466億円、営業利益は67億円プラスとなる90億円となった。流通・サービス業務向け、製造業向けで大型案件があったことから売り上げ増となった。営業利益についても、売上増、システム構築サービスの収益改善の影響で増益となった。
テレコムキャリアについては、売上高は1.5%減の3275億円、営業利益はマイナス63億円の103億円となった。国内事業が減少し、海外事業は海洋システム、TOMSなどが増加したものの売上高トータルでは前年を下回った。営業力も売上減によって減益となった。
システムプラットフォーム分野は、売上高は0.7%増の3478億円、営業利益は20億円プラスの107億円となった。ビジネスPC売上は減少したものの、サーバーが堅調に推移して増収となった。営業利益についてもハードウェアを中心とした収益改善などによって増益となった。
その他は、売上高は13.8%減の1516億円、営業利益はマイナス44億円で、前年から17億円のマイナスとなった。物流サービス事業の非連結化の影響、携帯電話端末事業の減少の影響で売上は減少し、営業利益についても減益となった。
重点領域には投資を強化、マイナンバー関連事業は好調
NECでは2015年度の戦略的投資を強化しており、120億円をSDN、ビッグデータ、サイバーセキュリティ、クラウド分野に投資。これは前年に比べ60億円の増加となっている。
また、遠藤社長は非公開だった上半期のエンタープライズ、パブリック、テレコムキャリアの3分野の上半期計画値を公表。これによれば、エンタープライズ事業は売上高については計画と実績の差異は0だが、営業利益は20億円プラス。一方、パブリック分野は売上高では100億円の未達、営業利益では90億円の未達、テレコムキャリアでは売上高は50億円の未達、営業利益では50億円の未達となった。
この数値の理由として遠藤社長は、「エンタープライズ分野は製造業、流通・サービスとも想定通りの好調を継続し、システム構築サービスの収益性改善などで過達となり、年間では上振れが期待できる。パブリック分野は航空宇宙防衛の領域で下期以降への期ずれが発生し売上高未達となり、利益もスマートウォーター関連、宇宙関連の拡販活動強化費用の前倒し、不採算案件増で未達となってしまった。テレコムキャリアについても、モバイルバックホールや国内工事で下期ずれが発生し、開発費、市場開拓費前倒しで利益も未達となった」と説明。売り上げが下期にずれた案件も多いことから、下期には売上増が期待できるとした。
また、国内のIT投資状況として、「国内ITサービスは、14年度第4四半期以降、公共や流通・サービス業が好調。PCサーバーは上半期には10%を超える伸びとなった」と好調で、この傾向は下半期にも継続するとの見方を示した。
マイナンバー関連事業についても、上半期の受注高は200億円で、年間目標額の150億円を上半期時点で大きく上回り、「さらなる上積みが期待できる。政府系の基盤システム構築ノウハウをもとに、地方自治体向けビジネスが今後も期待できる」とした。また、マイナンバー制度開始にともなって、地方公共団体向けの顔認証システムの受注も増加しており、この売り上げ増も期待できるという。
セーフティ/サイバーセキュリティ分野は、前年比7割増と大きく実績を伸ばしている。日本だけでなく、中華圏APAC、米国、南米などグローバルで売り上げが伸長している。
SDNについても、グローバルキャリアへの提案、実証実験が40案件以上となるなど拡大を続けている。「TOMS製品連携による仮想化導入、vEPC、vMVNO、vCPEなどのSDN/NFVソリューション提供での先行性、さらにオープンエコシステムへの貢献とパートナー協業などの強みによって、世界のトップグループ入りを目指す」とさらに事業強化を進める。
次期中期経営計画で確固たる成長力と次への成長基盤作りを進める
また、来年度にスタートする新たな中期経営計画については、「現在最終年度の2015中期経営計画は、2011年の厳しい経営環境時期を経て、どういう方向にNECとして向かうべきなのか、社内で協議して策定したものだった。その中でグローバルの成長なくしてNECは生き残れないと判断。成長のために必要な基盤作りが必要と考え、信頼回復と次の成長の経営基盤作りのために2015中期経営計画を進めてきた。その結果、積み残し課題があり、さらに反省、進ちょくなどを踏まえて、次期経営計画でなすべきことが明確となってきた」という。
成長のためのポイントとしては、(1)Valueプロバイダー、(2)財務経営基盤強化(営業利益率での貢献)、(3)グローバル競争力強化(海外注力事業の明確化)、(4)文化の構築(=教育システム)という4点を挙げた。
グローバル競争力強化のためには、海外で注力する事業をセーフティ、スマートウォーター、リテール、ネットワークと対象領域を明確化。「One to Manyを前提として、注力事業を明確化し、事業基盤を確立する」としている。
業務改革ではNECマネジメントパートナー(NMP)を核に、グループ10万人の働き方改革をさらに推進する。業務のワンマネジメント化の対象をNEC単体だけでなくグループ企業にまで拡大していく。共通のIT資産については、NMPに移管するなど不要な業務の廃止、標準プロセスの設計、これをNECグループ全体に普及・定着させていく。
コンプライアンス推進として、企業倫理、コンプライアンスをNECグループ全体の企業文化として浸透・定着させることを狙い、トップからのメッセージ発信によるコンプライアンス方針の徹底、企業倫理・コンプライアンス教育の充実、社内制度や体制の強化などを進める。
こうした要素を踏まえ、2016年度から2018年度に実施する次期中期経営計画では「2015の基盤をベースに、確固たる成長力と次への成長基盤作りを進める、成長のための時期となる」と成長実現と位置づけることを強調した。