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独SAPと日産、横浜F・マリノスが提携、技術をマリノス強化に活用

 独SAP SEは17日、横浜F・マリノス(以下、マリノス)、日産自動車株式会社(以下、日産)との提携を発表した。この提携は、SAPがマリノスの少数株主であるシティ・フットボールグループ(CFG)と行っているグローバルパートナーシップの一環として行われたもの。SAPの技術を活用し、クラブチーム運営業務の効率化、ファン満足度向上のためのマーケティング活動などに取り組む。

マリノスのホームスタジアムである日産スタジアム

 SAP グローバルスポンサーシップ担当バイスプレジデントのクリス・バートン氏は、「現在、デジタル変革が世界中で起こっている。われわれの技術を生かす方法について、きちんとチームと話し、ローカルな状況に合わせたユニークなやり方を提供していきたい。SAP日本法人のメンバーと、日本でどんなことができるのか話し合いを行っているが、日本向けにできることをもっと考えていきたい」と話した。

SAP グローバルスポンサーシップ担当バイスプレジデントのクリス・バートン氏

 横浜マリノス株式会社の代表取締役社長である嘉悦朗氏は、「われわれとしてはビジネス面では、データを元にしたマーケティング活動の強化、ファンエンゲージメントの強化。オン・ザ・ピッチにおいては、チームをどう強くするのかを課題とした人材管理、選手のパフォーマンス管理に関し、SAPの技術、ノウハウを活用していきたい」と述べ、SAPの技術がチーム強化の大きな武器となると説明した。

 SAPでは、「スポーツエンターテインメントは、われわれが注力している24産業分野のひとつ」(バートン氏)と、スポーツ分野へのテクノロジー活用を積極的に進めている。実績としても、ドイツのサッカーナショナルチームの選手、チーム強化のためのデータ分析、米国のNBAなど複数のスポーツで行っている動員力増加のためのマーケティング活動など、テクノロジーをさまざまな分野で活用した実績を持っている。

 マリノスに対しては、1)競技場のLEDバナー、大型映像表示装置などで表示する情報を、来場中のファンへ、ピッチ上で起こっているプレーに関連したデータをリアルタイムで提供するなど、スタジアム内でのブランドイメージの向上、2)ファンをスタジアムに呼び込むためのテクノロジー活用、を計画している。

 マリノス側では、ビジネス面では、「データを元にしたマーケティング活動」「ファンエンゲージメント」という2点を期待する。

 「私がマリノスの社長に就任した2009年以来、日産スタジアムへの入場者数増加に取り組み、改革を進めてきた。その結果、2009年以前と比べ25%増となっているが、昨年から壁にぶつかり、なんらかの進化が必要だと考えてきた。進化のひとつとしてデータをもっと上手に活用し、ファンプロフィールに合わせた情報発信を行うことを検討していきたい。デジタル進化として、スタジアムで試合を見ている人、見ていない人も含め、マリノスへの関心を高めるようなインフォマーシャル、SNS活用などを検討したい」(嘉悦氏)。

 さらにチームの強化策として、選手のパフォーマンス管理、人材管理のためのシステム活用を行い、「マリノスにあった人材を世界で探すといった使いかができるのではないか」といったことも期待する。

 SAP側ではSAPジャパンが窓口となって、日本のクラブチームにあった支援方法を行うことを計画している。

 今回の提携は、横浜F・マリノスの少数株主であるCFG(シティ・フットボール・マーケティング)が進めている、SAPの技術を活用し、傘下のサッカークラブチームを強化している取組の一環として行われた。CFGは、英国プレミアリーグに所属するマンチェスター・シティFC、豪州Aリーグに所属するメルボルン・シティFC、米国メジャーリーグ・サッカーのニューヨーク・シティFCを所有する。すでに日本以外の地域では、2015年7月から順次提携を発表しており、横浜F・マリノスが4カ国目の提携発表となった。

 CFGが横浜F・マリノスに出資した経緯について、日産 常務執行役員 グローバルマーケティング ブランドコミュニケーション担当のルードゥ・ブリース氏は、「CFGとの提携も、1年半前に発表を行った。日産自動車としては、マリノスに日本リーグだった時代から継続的に投資を行い、日本だけでなく、世界で戦うことができるチームになってほしいと考えている。CFGはそのためのノウハウを注入することができるパートナーであり、ほかの地域での成功ノウハウを取り入れることができる」と説明した。

 今回、CFGを通じてSAPとパートナーシップを結ぶことについても、「テクノロジーの活用は、われわれも自動車作りで行っていることだが、サッカーにテクノロジーを取り入れることで単に試合だけでなく、トレーニング、分析などには高度な方法論が必要となる。チーム、プレイヤー個人にテクノロジーを活用することで、目標である世界で戦えるチーム作り実現につながる」(ブリース氏)と効果が見込めると説明した。

日産 常務執行役員 グローバルマーケティング ブランドコミュニケーション担当のルードゥ・ブリース氏

 CFGのシティ・フットボール・マーケティング コマーシャル・ディレクターであるオマール・ベラーダ氏は、「われわれはSAPを高く信頼している。ファンにとって素晴らしい経験をしていただくための強力なパートナー」と、SAPのテクノロジーが強力な武器となるとの見方を示した。

CFGのシティ・フットボール・マーケティング コマーシャル・ディレクターであるオマール・ベラーダ氏
会見では記念撮影も行われた

三浦 優子