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富士通研究所、遠隔地からのファイル共有サーバーへのアクセスを高速化する技術を開発
(2015/6/22 12:19)
株式会社富士通研究所は22日、遠隔地からファイル共有サーバーを利用する際のファイルアクセスをソフトウェアで高速化するデータ転送高速化技術を開発したと発表した。
富士通研究所ではこれまで、遠隔地間のデータ転送を高速化する技術として、一度送信したデータを2回目以降省略して高速化する重複除去技術を開発してきた。この技術は多様な通信環境に適用できるが、ファイル共有プロトコル(CIFS、SMB)特有の処理があるため、効果が限定的だった。また、高速化の手段として回線の増強や専用ハードウェアを導入する方法もあるが、コスト負担が大きいという課題や、専用ハードウェアを導入しても数KB程度の小容量なファイルを大量に転送する場合はそれほど速くならないという課題があった。
ファイル共有プロトコル特有の処理と課題としては、多数のファイルを含むフォルダーのコピーでは、ファイルごとに属性情報やファイル取得の通信が発生するため、遅延が大きいネットワーク環境でフォルダーを転送すると各通信の遅延が累積して遅くなるという点がある。また、比較的大きなサイズのファイルを転送する場合、転送するファイルを数十KBといった小さなデータに分割して各データにヘッダー情報を付加するが、このヘッダーは毎回変更される情報であるため、過去に同一のデータを転送したことがあっても異なるデータに見え、重複除去が効かないことがある。
今回、富士通研究所が開発した技術では、サーバーとクライアントの両方にデータ転送高速化のモジュールを設置。サーバー側のモジュールが、複数ファイルを含むフォルダーのダウンロードが実行されていることを認識し、ダウンロードするすべてのファイルを一括してクライアントの代理で先読みするとともに、先読みしたファイルをまとめてクライアント側のモジュールに転送する。クライアント側モジュールは、ファイル共有クライアントからのデータ取得の要求に、サーバーの代理として応答する。
これにより、遠隔ネットワーク上で複数のファイル名、ファイルサイズなどの情報取得で発生する通信を大幅に減らし、ネットワーク遅延の影響を低減することができる。
また、サーバー側のモジュールについては、ヘッダー部分を分離してから重複除去を行う技術を開発。これにより、ヘッダーが付加されても、データが同一であれば重複除去の効果が発揮される。
富士通研究所内の実験では、川崎にあるファイル共有サーバーに九州の拠点からアクセスする想定のネットワーク遅延を再現した疑似環境下で、1KBのファイル100個を含むフォルダーの一括ダウンロードを行い、最大10倍の高速化を実現。同じ疑似環境下における10MBのファイル1個のダウンロードでは、最大20倍高速化できた。
富士通研究所では、今回開発した技術はソフトウェアとして実現しており、既存のファイル共有システムに搭載可能だと説明。また、クラウドやサーバー仮想化環境、モバイル端末などにも適用可能で、ネットワークの各種サービスへの展開も可能で、遠隔の拠点間での情報共有や共同開発を効率化できるとしている。
富士通研究所は、開発技術の富士通での社内実証を経て、2015年度中にデータ収集・統合ソフトウェアの転送高速化機能として製品搭載を目指す。