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ヤフー、財務会計システムに「Oracle EBS」導入 約8カ月の短期間で稼働開始

 TIS株式会社と日本オラクル株式会社は19日、ヤフー株式会社(以下、Yahoo! JAPAN)が、財務会計の新システムとして「Oracle E-Business Suite(EBS)」を導入したと発表した。新システムは約8カ月という短期間で稼働開始できたという。

 Yahoo! JAPANでは、国内ベンダーのERPパッケージを2005年に導入し、決算業務および債務管理に利用していたが、事業規模の拡大に伴い、売り上げが導入当時の3倍に成長したため、旧システムでは処理が間に合わないなどの不具合が生じていた。

 また、2014年度からIFRS(国際会計基準)対応の決算開示が決定しており、旧システムで対応するには作業工程が複雑化することなどを懸念。IFRS対応のERPへの移行を迫られていたという。

 そこで同社は、2013年に新たなERPパッケージ導入を決定し、導入に関するコンサルティングと導入支援を行えるパートナーを選考した。その結果、10社以上の候補の中から、さまざまなERPパッケージに対応できること、大規模ERPの導入経験が豊富であることなどが決め手となり、TISをパートナーに選定した。

 その後、2013年9月から約3カ月をかけて、TISが業務分析と各ERP製品の性能評価を行い、複数パッケージを提案。多様な評価基準の照合と、社員が実際の操作を行うといった過程を経て、Yahoo! JAPANがOracle EBSの導入を決めている。

 その決め手となったのは、数カ月の間隔で業務・組織が大きく変わる同社のスピード経営に対して、高い適性があると判断された点。さらに、データソースの構造が公開されているため、業務に合わせて柔軟なカスタマイズが行え、モジュール追加によって適応業務範囲を拡張できる柔軟さなども評価された。

 なお新ERPへの刷新プロジェクトは、旧システムと同じく「財務会計(GL)」「債務管理(AP)」に機能を絞って行われたとのことで、2015年2月の四半期決算報告での新システム活用を目指し、2014年2月に導入作業が開始された。

 システム導入にあたっては、約15の既存システムとの連携が必要になったが、TISがOracle EBS向けに独自開発したツール「TIS自動仕訳エンジン」が効力を発揮した。このツールは、専用画面で仕訳ルールを設定すれば、既存システムのデータをOracle EBS向けに変換できるため、個別のアドオンの開発が必要なくなり、プロジェクトのプログラミング工程の大幅な圧縮に貢献したとしている。

 なお、新システムは2014年10月より稼働を開始しており、当初の予定通り、2015年2月に開示した四半期決算報告では、Oracle EBSで処理したIFRS対応の決算情報が用いられたとのこと。また新システムでは、データ集計のバッチ処理が約半分に短縮されるなど、処理速度の改善を実現すると同時に、決算業務がシンプルになり作業手順がより厳密になることで、内部統制の強化にもつながったという。

「Oracle E-Business Suite」導入後のシステム構成

石井 一志