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九大が講義資料を電子配信、“教育ビッグデータ”研究として開始

 国立大学法人九州大学(以下、九大)が、京セラ丸善システムインテグレーション株式会社(以下、京セラ丸善)の「BookLooper」を利用し、学生2700名を対象に講義資料の電子配信を開始した。教育ビッグデータの利活用に関する研究を本格始動するという。

 九大では、2013年4月から学生全員のPC必携化、eラーニングを含む教育の情報化、合い学にセンサーを配置した行動分析などを行っており、教育に関するさまざまなデータが蓄積されている。一方、BookLooperは、講義で使用する教科書や教材を電子化し配信するサービス。複数の出版会社から提供されたコンテンツを高セキュリティで管理・配信する。また、閲覧ページや時間などの詳細な学修ログ機能も備える。

 本研究では、九大に蓄積されたデータとBookLooperのログを統合し、「ビッグデータの教育分野における利活用アプリケーションの研究」を提唱。国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)の「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」の研究助成において、教育分野で唯一採択された。

 これを受けて、九大機関教育院では、2015年4月13日から1年生約2700名を対象に、BookLooperを利用したデジタル教材配信を開始。教育ビッグデータの利活用に関する研究を本格始動した。

 学生・教職員がBookLooperを利用することで、既存のeラーニングシステムで行っている学習支援に加え、学内外からPC・タブレット・スマートフォンで閲覧・書き込みできる、新たな教育環境を実現する。

 また、大学内のeラーニングシステム、eポートフォリオシステム、ならびにシラバスなどの学務情報と、BookLooperのアクセスログを統合分析して、学内外でシームレスに学習をサポートするという。

 現在、文科省は2020年度までに初等中等教育における1人1台の情報端末の導入を進めている。それに伴い、今後は電子教科書の活用増加が見込まれる。また、全国の学校におけるさまざまな活動履歴が日々集約され、ビッグデータを形成すると予測される。

 高等教育において電子教科書・書籍を導入し、教育ビッグデータを利活用することで、教育・学習の適切な支援方法を検証するのが本研究の狙い。集約・検証された情報をオープン化し、研究成果を外部(企業内教育などの異分野含む)へ展開し、教育分野の発展に貢献したい考えだ。

研究概要図

川島 弘之