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富士通とPDJが挑戦、施設園芸における植物生産の最大化へ

カギは植物の生体情報をいかに活用するか

 富士通株式会社とPLANET DATA JAPAN株式会社(PDJ)は8日、施設園芸分野において、ICTによる「農業の高度化」に向け、共同で事業を推進すると発表した。植物の生育状態に合わせて環境制御・栽培管理する「統合環境制御」を実現し、「植物生産の最大化」をめざす。

 日本の農業栽培技術を支える篤農家は経験や勘により、高品質・高収量を実現しているが、農業先進国のオランダでは、ICTによる大規模な太陽光植物施設で環境制御することで暗黙知を形式知とする取り組みが進んでいる。そんなオランダでも、植物の生育状態を見極めるために必要な「植物生体情報(光合成活性情報や葉の大きさ・枚数など)」の計測は、週に1回程度の目視による観察や物差しによる測定で、より革新的な手法の確立が求められているという。

 富士通は、「食・農クラウド Akisai」を2012年より提供しており、施設園芸向けには、温室内の温室度といった各種データをクラウド上に蓄積し、暖房機や換気扇などの機器をコントロールする「施設園芸SaaS」を提供している。

 一方のPDJは、愛媛大学発のベンチャー企業として、愛媛大学農学部 高山弘太郎准教授が開発した植物計測手法を活用した革新的な栽培技術の確立をめざし、2014年から植物生体情報を用いた計測・解析技術や各種サービスを提供している。

 今回、両社は施設園芸分野においては植物生体情報の活用が重要なポイントと考え、富士通のICT技術に、PDJの植物生体情報計測・解析技術と、それらを活用する知見を融合させることで、環境制御と栽培管理を統合的に組み合わせる。

 この統合環境制御では、栽培中の植物生体情報や施設内外の環境情報を計測し可視化するだけでなく、たとえば特定時間帯の気温設定が適正成育の阻害要因であると分析し、自動で改善提案するなど、作物の収量・品質向上のために環境制御するシステムを提供する。これらにより、農業の高度化と植物生産の最大化に貢献していく考え。

川島 弘之