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日本IBM、「Systems z」などハイエンド・システム製品の事業戦略を発表

CAMSS時代に向けてハイバリュー提案を強化

日本IBM 常務執行役員 システム製品事業本部担当の武藤和博氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は15日、エンタープライズシステムの「Systems z」、「Power Systems」、およびストレージ製品などを扱うシステム製品事業の戦略について記者説明会を開催した。

 「世界のCIO、CTO、ITエグゼクティブは、ITインフラとビジネス業績の関係性についてどうとらえているのか。IBMが実施した調査によると、その71%がITインフラはビジネス戦略やビジネスの結果に重要であると認識していた。また、60%以上が今後12-18か月の間にITインフラへの投資を予定していると回答した。一方で、実際にモバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドなどにフル対応できるインフラを備えているのは10%以下であった」と説明するのは、日本IBM 常務執行役員 システム製品事業本部担当の武藤和博氏。

 「さらに、世界70カ国のCEO4000人に、組織と戦略を考えるうえで最も重要な外部要因を聞いた結果では、2012年、2013年とテクノロジーがトップだった」と、ITインフラやテクノロジーが経営やビジネスに大きな影響を及ぼすようになってきたことを強調する。

 こうした市場背景を受け、同社では、今後のビジネスを支えるテクノロジーを「CAMSS(クラウド、アナリティクス、モバイル、ソーシャル、セキュリティ)」とし、CAMSS時代に向けた戦略の軸を“ハイバリュー”へと変革。

 「CAMSS時代において、環境の変化をとらえた顧客のニーズに的確に対応していくためには、堅牢で高い信頼性を備えた柔軟なITインフラが必要不可欠になる」(武藤氏)との考えを示す。そして、システム製品事業の基本戦略として、サーバー製品では、「CAMSSソリューションにおけるインフラストラクチャの重要性」、「オープン・テクノロジーを活用したハイブリッド・クラウド環境」、「フロント&バックオフィスを一つのアーキテクチャで統合」の3つ、ストレージ製品では、「先進的なストレージ・テクノロジーを活用した企業システムの最適化の提案」、「ハイブリッド・クラウドを支えるデータ基盤の統合」の2つをポイントに挙げ、顧客へのハイバリュー提案を強化していく方針を打ち出した。

 具体的な施策について武藤氏は、「CAMSS提案力の向上を図るため、全システム製品事業およびパートナーの人材育成に投資を行うとともに、デジタル/モバイルを活用した競争力のあるツールを積極展開する。また、ハイバリュー提案の強化に向けて組織再編も行い、ハイエンド・システム事業部を設置し、CAMSS対応の専門部隊を組織する。あわせて、顧客への価値訴求力を高めるオファリングとして、実績のある各種アセスメント、ワークショップ、コンサルテーションを提供する。さらに、パートナー協業の強化、拡大も進めていく」としている。

日本IBM 理事 システム製品事業本部 ハイエンド・システム事業担当の朝海孝氏

 次に、日本IBM 理事 システム製品事業本部 ハイエンド・システム事業担当の朝海孝氏が、CAMSS時代に向けた同社システム製品の特徴と先進テクノロジーについて説明した。「当社のメインフレーム製品『Systems z』は、既存の定型業務処理システム(Systems of Record)と、新規の情報活用システム(Systems of Engagement)を、統一アーキテクチャで実現することができる点が大きな特徴。しかも、システムが大きくなればなるほど、トランザクション単価が下がる、業界唯一のスケールメリットを備えている」という。

 「ミッション・クリティカル・データの活用を支えるために、セキュリティを重視しているのも『Systems z』の特徴だ。例えば、開発やデータベース管理者に個別の細分化された特権を与えることで情報漏えいを防止する。また、ハードウェア暗号化と組み合わせることで、リアルタイムなトランザクション分析による詐欺や不正行為の検出も可能となる。このほか、UNIXサーバー製品の『Power Systems』では、『Systems z』に倣ったハードウェア暗号技術などによりOSの乗っ取りを阻止できることに加えて、仮想化を生かした一元的なセキュリティ管理を実現する」(朝海氏)と、ミッション・クリティカル・データの保護と活用の双方をカバーする優れたセキュリティ機能を備えていると訴えた。

クリティカルなデータの活用を支えるセキュリティ重視の「Systems z」
IBMが提供するハイブリッド・クラウド

 さらに朝海氏は、同社のサーバー製品とストレージ製品を適材適所に組み合わせたオープン・ハイブリッド・クラウドにより、コストとパフォーマンスの両立を実現できると説明。「オンプレミスのシステムは、x86だけでなく、ワークロードに適したマルチ・プラットフォームで最適化を図る。また、ストレージ製品も適材適所に配置し、自動的に階層化を行う。クラウドには、オープン・クラウド・アーキテクチャを活用することで、疎結合型の組み合わせを可能にした」としている。

 CAMSS時代に向けた先進テクノロジーについては、分析スピードをさらに向上するソリューションとして、「Systems z」上でのHadoop処理を実現するソフトウェア「IBM InfoSphere Big Insights for Linux for Systems z」、16TBインメモリを搭載し低コストで基幹データをセキュアに保管するPOWER 8ハイエンドサーバー「E880/E870」、NVIDIA GPUカードを搭載しJavaアクセラレーターによりJavaアプリ性能を8倍高速化するPOWER 8 Linuxサーバー「IBM Power Systems S824L」、POWER 8サーバーとのCAPI接続によりあらゆるI/Oボトルネックを解消するオールフラッシュストレージ「Flash System 840」をラインアップ。

 また、ハイブリッド・クラウドを支えるソリューションとして、プライベートクラウドとパブリッククラウドを同一画面で簡単管理できるツール「Cloud Manager with OpenStack」、POWER 8アプライアンスでコストを90%削減できるデータ基盤「Elastic Storage」を用意したとしている。

唐沢 正和