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「エンタープライズ用途に最適」と強調、「Oracle OpenStack」提供開始

Oracle LinuxやOracle VMに対応

米Oracleのチーフコーポレートアーキテクト エドワード・スクリーベン氏

 日本オラクル株式会社(以下、オラクル)は8日、同社の「Oracle Linux」「Oracle VM」に対応したエンタープライズ向けOpenStackソリューション「Oracle OpenStack for Oracle Linux(以下、Oracle OpenStack)」の一般提供を開始した。Oracle LinuxやOracle VMのプレミアユーザーは追加料金なしですぐに利用可能となっている。

 米国から来日した米Oracleのチーフコーポレートアーキテクト エドワード・スクリーベン(Edward Screven)氏は「Oracle OpenStackは、ミッションクリティカルなワークロードに関する大量のノウハウを蓄積した、オラクルにしか提供できないクラウドソリューション。オラクルが培ったエンタープライズのナレッジをOpenStackにまで拡張した」と語り、エンタープライズ用途に最適なクラウドソリューションであることを強調する。

最新バージョンのIcehouseを採用したOracle OpenStack for Oracle Linux

 今回発表されたOracle OpenStack for Oracle Linuxは、Oracle Linux上に追加インストールすることで利用できる、OpenStack Icehouseをベースにしたソフトウェア。Oracle VMがサポートするLinux、Windows、SolarisといったゲストOSから本番環境のワークロードを容易に実行できるようになる。ユーザーはOpenStackに用意されている豊富なプラグインやエクステンションを利用することで、柔軟性とスケーラビリティの高いマルチテナント環境を構築でき、オラクルアプリケーションだけでなく非オラクル製品や既存のハードウェアリソースとの統合や相互運用も可能になる。OpenStackにはCinderやNovaなど数多くのプラグインが提供されているが、オラクルはその全パーツを完璧にサポートできるのが強みという。

Oracle OpenStackではOpenStackの全パーツを利用出来るだけでなく、ZFS、Ceph、DTrace、KspliceといったSolaris由来の機能を利用できる

 スクリーベン氏は「オラクルのミッションは顧客が望むリソース(コンピュート、ストレージ、ネットワークなど)を顧客が望むときに提供し、その上でミッションクリティカルなアプリケーションのワークロードをストレスなく稼働させること。Oracle Databaseなどの重要なアプリケーションを、パフォーマンスと信頼性を担保しながらクラウド上で実行できるのは、Oracle LinuxとOracle VMを基盤にしているOracle OpenStackだけ」と自信を見せている。

 同氏はつづけてクラウド環境としてのOracle LinuxとOracle VMの優位性について、

・Oracle Linux……ほとんどのオラクル製品はOracle Linux上で開発されており、検証にも品質保証にも膨大なリソースと時間が費やされている。ダウンタイムなしのカーネルパッチを実現する「Ksplice」や、Solaris由来の「DTrace(動的トレース機能)」「ZFS(次世代ファイルシステム)」などもOracle Linuxの優位性であり、これらの機能がOpenStackまで拡張される
・Oracle VM……1つの仮想マシンにつき、VMwareに比べて2倍のスケーラビリティを誇り、Oracle DatabaseをはじめとするエンタープライズアプリケーションをVMwareの7~10倍のパフォーマンスで稼働可能。ライセンス費用が不要ながら、ライブマイグレーション、高可用性、動的リソーススケジューリングなど最新機能を利用できる

点を挙げており、加えて「MySQL Enterprise Edition」を導入済みのユーザーであればMySQLとOpenStackの統合やサポートの一本化を実現できるメリットを強調する。

 また、オラクルのエンジニアードシステムである「Virtual Compute Appliance」上でOracle OpenStackを展開することで「電源を投入してから約1時間後にプライベートクラウド上で完璧な本番環境を稼働できる」(スクリーベン氏)と、ハードウェア統合によってさらに価値が向上する点についても言及している。

エンジニアードシステム上で展開すれば、さらに簡単にOpenStack環境が展開できる点を強調

 オープンソースのクラウドフレームワークであるOpenStackはここ1~2年、IBM、Red Hat、Dell、HPといったビッグベンダが競うようにして開発と投資に力を入れており、Oracleもこれらのベンダに倣うように2014年5月にサポートを表明している。いわばOpenStackに関しては後発とも言える立場だが、「数千台を超えるケースもある大規模なクラウド環境においては、パフォーマンスに加え、信頼性や可用性の高さが重要になる。エンタープライズ市場で最も普及しているオラクルアプリケーションの開発とサポートで培ったノウハウは、OpenStackによるクラウド構築にもそのまま生きる」とスクリーベン氏は説明。

 オープンクラウドの代名詞のように語られることが多いOpenStackだが、エンタープライズのプライベートクラウド環境として利用するには不安定な要素も少なくない。オープンで汎用性が高く、既存の環境とも統合しやすいOpenStackを、エンタープライズに特化した基盤であるOracle Linux/Oracle VMと組み合わせることで、“OpenStack by Oracle”の導入を本格化させ、OpenStackに代表されるオープンクラウド市場でのオラクル認知度を高める狙いがあると思われる。

 Oracle OpenStack for Oracle Linuxは「Oracle Linux Premier Support」または「Oracle VM Premier Support」を契約しているユーザーであれば無料(追加料金なし)で利用できる。ダウンロードは「Oracle Public Yum Server」もしくは「Unbreakable Linux Network」からすでに可能になっている。

五味 明子