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JEITA、ITユーザートレンドやクラウドなどの活用度合いを調査

パブリッククラウドは着実に浸透も、利用意向なしの割合も増える

 一般社団法人電子情報技術産業協会(以下、JEITA)は28日、同協会が独自に調査を行っているITユーザートレンド2013、およびビッグデータ、クラウドへの取り組み動向調査を発表した。

 同調査は、1999年度から継続的に実施しているものであり、ユーザーのシステムの変化や意識などについて調査している。

 調査は、2013年12月に実施。284社のユーザー企業から有効回答を得た。

IT投資は増加傾向、2014年度も継続

 これによると、2013年度のIT投資は増加傾向を見せており、さらに2014年度も引き続きIT投資意欲は継続するとの結果がでている。

 2013年度の調査では、35%の企業がIT投資予算を昨年に比べて増加させると回答。また、50%の企業が横ばいと回答した。一方で2014年度は、34%の企業がIT投資予算を増加させ、同じく50%の企業が横ばいと回答した。

 調査を担当したJEITA プラットフォーム市場専門委員会の西崎亨副委員長は、「IT投資需要は回復基調にある。また仮想化の進展により、購入した物理サーバーの2倍程度の物理サーバー+仮想サーバーが導入されていることになる」と総括した。

2013年度における投資スタンスと投資予算推移
JEITA プラットフォーム市場専門委員会の西崎亨副委員長(三菱電機インフォメーションテクノロジー 開発部 担当部長)

 IT化関連テーマの注目度としては、「運用コストの削減」、「ネットワークセキュリティ」、「自然災害や事故に対するシステム強化対策」の各項目で、50%以上の企業が「注目度が高い」と回答。

 一方で、「モバイル端末の活用」は高い注目度を集めているが、取り組み速度は遅いという。また「BIの活用」や「ビッグテータの活用」は、まだ注目度も取り組みの度合いも低いが、徐々に関心が高まっているとのこと。

 また64%の企業が、1年以内にサーバーを導入。そのうち、76%の企業がIAサーバーを導入しており、圧倒的に多かった。外付けストレージも増加しており、39%の企業が新たに導入しているという。

 サーバーの保有率は89%となっているが、メインフレームでは3割、オフコンでも2割強の企業が保有しており、まだまだレガシーシステムを継続的に利用している企業が多いことも示された。

IT化関連テーマの注目度
一年以内の購入状況
サーバー、ストレージの保有率

プライベートクラウドは大企業での利用が進む

 パブリッククラウドの活用状況では、すでに活用していると企業が27%と、前年調査の23%から増加。「パブリッククラウドの増加は着実に進んでおり、7割以上の企業が活用指向性を示している」(西崎副委員長)と述べた。

 SaaSについては、活用済みの企業が24%と増加したが、その一方で利用意向なしとした企業が32%と、前年に比べて1ポイント増加。PaaSやIaaSでも、活用済みの企業比率は増加したが、同時に利用意向なしとする企業も増加している。

 プライベートクラウドの活用状況では、20%の企業が活用済みとしており、前年調査の16%から増加。特に、1000人以上の企業では32%が活用済みと回答しており、大企業でのプライベートクラウドの利用が進んでいることが明らかになった。

パブリッククラウドの活用状況
SaaS/PaaS/IaaSの活用状況
プライベートクラウドの活用状況

ビッグデータの効果的な活用が今後の課題

 データの活用に関しては、4割の企業が、データを「十分に活用」あるいは「一応活用できている」と回答。だが、5割の企業でデータ活用がうまく行われておらず、ここが今後の課題であると分析した。

 ビッグデータの活用では、「活用中」「準備中」「検討中」と回答した企業が22%であり、2012年度から活用意識が若干上昇。特に、金融/保険/証券での活用が進んでいるという。ビッグデータで活用したいデータとしては、業務データが最も多く59%を占めたが、前年調査に比べて、各種ログデータ、SNSなどのユーザー発信情報、POSデータを含む記録データ、各種センサー情報、公共オープンデータなどの活用意向が増加している。

データの活用度合いに対する認識
ビッグデータ活用に関する認識・関心状況
ビッグデータで活用したいデータに対する見解

64%の企業がサーバー仮想化に取り組む

 サーバー統合や仮想化への取り組みは年々上昇傾向にあり、2013年度は6割以上が取り組んでいるという結果も明らかになった。調査では64%の企業が仮想化に取り組んでおり、62%の企業がサーバー統合に取り組んでいる。

 IAサーバーにおいては、15%が仮想化用途で利用。サーバー全体でみると、2013年度に購入した物理サーバーに対しては、2.1倍のOSが稼働しているという結果が明らかになった。Linuxが動作するIAサーバーでは2.6倍、Windowsが動作するIAサーバーでは、2.2倍が動作しているという。

 「物理サーバー1台に対して、約2台が動いている。これは昨年度の調査と同じである」(西崎副委員長)という。

サーバー統合、仮想化への取り組みの推移
仮想化サーバーの割合

 また、仮想化システムに望まれるサーバーとしては、これまで注目を集めていたブレードサーバーとともに、メモリが大量に搭載できること、多重ネットワークが組めるという観点から、高機能のラック型サーバーへの関心が高まっているという。

 さらに、ストレージでは、あらゆるデータ領域において、NASの利用が最も多いほか、基幹系データベース/情報系領域、ファイルサービス領域、メールサービス領域、Webサイト関連領域、アーカイブ記録保管関連領域、研究開発関連領域といった全領域でデータ量が増大していることが明らかになり、特にメールサービス領域は前年比33.2%増となっているとのこと。

仮想化に望まれるサーバー
ストレージ利用状況

大手ほど活用度合いが高い垂直統合システム

 今回は、垂直統合型システムに対する関心度についても調査している。

 垂直統合システムは、仮想化構築としての用途が約1割。大手企業ほど活用検討度合いが高いことが明らかになったほか、垂直統合システムの活用領域としては、活用済み、準備中、検討中をあわせて、52%の企業が仮想化サーバーとして、45%の企業がプライベートクラウドの統合用基盤として想定していることがわかった。また垂直統合システムでは、TCO削減や運用容易化、障害対応や保守の容易さがメリットとされる一方で、投資対効果の不透明感、ブラックボックス化すること、運用における人材やスキル不足がデメリットにあげられた。

垂直統合型システムに対する関心
垂直統合型システムに対する関心
垂直統合型システムのメリット、デメリット

 IT基盤の最適化への課題に関する調査では、IT基盤の複雑化により、運用要員やコスト面で苦労していること、旧システムからの移行が困難、導入/改変する場合の手間がかかるといった課題が浮き彫りになり、最適化に向けては、IT基盤の標準化や統一化、仮想化に取り組む企業が多いことも示された。

 「IT基盤の最適化やプライベートクラウド構築用途として垂直統合システムが普及しはじめている。また、仮想化用途のサーバーでは高機能サーバーが求められている。サーバー、ストレージを提供するベンダーは、これらの需要に適切に応えるソリューションを提供していく必要がある」(西崎副委員長)とした。

大河原 克行