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汚職、架空取引、脱税――不正な取引を検知する「SAP Fraud Management」
全世界の不正損失額は年間3.5兆ドルにも
(2013/12/12 15:02)
SAPジャパン株式会社は12日、不正取引リスクを検知するソフト新製品「SAP Fraud Management」を発売した。
新製品は、インメモリプラットフォーム「SAP HANA」上で動作するソフト製品。SAPおよびnon-SAPの業務システムにある大量の取引データの中から、不正の恐れのある取引を自動的に検知する。不正取引は例えば、贈収賄や利益供与の強要といった「汚職」、架空取引や不適切な在庫評価といった「財務諸表不正」、さらにはレジの現金着服や残業時間の虚偽申告、経費精算のごまかしといった「資産の不正流用」などだ。
ACFE(Association of Certified Fraud Examiners:不正検査士協会)の調査によると「一般的な組織において売上の5%が不正により消失」「2011年の不正によるグローバルの損失合計額は3.5兆ドルと推定される」という。
こうした不正な取引を、インメモリによる早さを生かして、サンプリング調査ではなくデータすべてを精査できるのが特徴。検知は事前に定義されたポリシーに基づいて行われ、不正の恐れのある取引を発見するとアラートを通知する。
発見されたリスクは、発生場所の地図表示や時系列グラフ表示、取引間の相関関係表示などでビジュアル化。本当に不正かどうかの判断を支援してくれる。その調査の過程と結果をすべて記録することで、結果に基づいたポリシーの見直しや、再発防止案の策定などの一貫したリスク対応が可能になるという。
重要なのが、事前に定義する検知ポリシーだ。例えば、「特定ベンダーとの取引高が短期間に急速に増えていて、特定の承認者のみが該当取引の承認を行っている」「事前登録されていないワンタイムの取引先の請求書が大量に存在する」「自動車事故において、推定損失額が大きいにもかかわらず、同等額の事故レベルに比べ、負傷者が軽傷で済んでいる」といった条件を定義する。
標準で事前定義テンプレートが提供されるほか、ユーザー定義にも対応。条件文を独自に定義できるほか、上の例の「特定ベンダーとの取引高が短期間に急速に増えていて」の部分で、具体的に金額がいくらなら「急速に増えていて」に該当するか、しきい値も自由に設定できる。
ポリシーが適切かどうかを確かめるためのシミュレーション機能も搭載。例えば、上のしきい値を「1億円」としていたとして「5000万円」に変更した場合、アラート数はどう変化するか――そんな試行錯誤が簡単に行える。HANAを基盤にすることで、シミュレーションのレスポンスも軽快で、手軽にポリシーを見直せるのが強みとのこと。
SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部 シニアソリューションプリンシパル 米国公認会計士 公認内部監査人の中野浩志氏は、そのビジネスバリューを「SAP HANAを活用して大量取引データの中から網羅的、迅速に不正リスクを発見し、不正に伴う財務的損失を最小化」「ERPと連携して、日常業務プロセスの中に統制(不正への気づき)を組み込むことで不正予防」「シミュレーション機能で不正発見ルールの修正・改善を継続的に行うことで、誤検知数を最小化し、同時に業務効率を向上する」「過去に発生した不正をパターン化し、これから起きようとする不正発見のコストと労力を最小化」「保険請求、購買、脱税、腐敗などに関する複数の不正シナリオをサポートする」と5点にまとめて説明した。