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富士通研、ストレージアクセスを高速化するSDN技術を開発

FCoEトラフィック経路の制御を実現、2014年度中の実用化を目指す

 株式会社富士通研究所は9日、ネットワーク上のストレージアクセスを高速化するSDN(Software Defined Networking)技術を開発したと発表した。同技術は、12月9日から、米アトランタで開催される国際会議「IEEE MENS(Management of Emerging Networks and Services ) 2013」で発表されることになり、2014年度にも実用化する予定だという。

FCoEのストレージネットワークへSDN技術を適用可能に

 今回の技術では、LANとSANの統合ネットワークを対象に、ストレージのトラフィック経路を制御し、スループットの向上を実現した点が大きな特徴となっている。

 富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の清水剛主管研究員は、「データセンターではSDN技術の適用が注目されるものの、従来のSDN技術はEthernetやIPなど、LANトラフィックに対するフローの制御が主眼で、LANスイッチの制御を想定しているため、SANのストレージトラフィックの最適化には適用できなかった。そのため、LANとSANを統合したネットワークに適用する場合は、システムを拡張する際の性能向上に課題があった」と、技術開発の背景を説明する。

 実際、LANとSANの統合ネットワーク化の動きは加速する傾向にある。FC(Fiber Channel)ではなく、Ethernetを利用するFCoE(Fiber Channel over Ethernet)により、従来は個別に配備していたネットワークを統合することで、スイッチやアダプタ、ケーブルなどの機器コストの削減効果や、運用管理作業の効率化が実現できるというメリットがあるからだ。

 だが、その一方で、前述したようにSDNの適用が不十分であることから、統合ネットワークの効率的な利用ができず、システム性能の十分な活用ができないといった問題があった。また、スケーラビリティにも限界がある点が課題となり、今後、SDNの技術適用が求められることが想定されていたという。

新技術が求められる背景
富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の清水剛主管研究員

 今回、富士通研究所が開発した技術は、ストレージトラフィックの制御に必要な機能をネットワークスイッチに実装し、それをコントローラから制御することで、SDNによるストレージトラフィックの経路を制御可能とし、ネットワーク資源を仮想網が有効に活用できるようにした点が大きな特徴だ。

 具体的にはまず、FCoEのデータ中継に必要な機能を、外部からの制御に適するように、ストレージフロー検出と、ストレージフロー操作に分割。これを富士通研究所が試作したコンバージドファブリックスイッチに実装した。

 一方、複数スイッチの集中制御を実現する外部コントローラへのソフト制御インターフェイスを開発し、ストレージフローの検出と操作を、外部コントローラから制御できるようにしている。

 また、複数のスイッチでのストレージトラフィックの制御を可能とする外部コントローラ自身も開発し、一部構成において、ストレージトラフィックの経路操作を外部から行えるようにした。

 「富士通では、5月8日にコンバージドファブリックスイッチにおいて、FCoEをサポートすると発表しており、次のステップとして、今回の取り組みがある。従来のSDNには、ストレージトラフィックの制御に必要なフロー検出、操作機能が定義されていないが、ストレージトラフィックの制御に必要な機能を抽出し、スイッチに実装することで、コントローラーからのストレージトラフィックの制御が可能になった」。

今回開発した技術
新技術の仕組み

 富士通研究所では、この技術を適用した試験構成によるLAN、SANの統合ネットワーク開発環境において、約2倍の性能向上を実現できたという。

 「フロー多重度が高いほど、より高い効果を得られることがわかったほか、ストレージアクセスのローカリティを活用し、中継点を回避し、上下方向のリンクを削減することで、スケーラビリティ向上につなげることもできる」(富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の白木長武氏)。

 清水主管研究員は、「この技術によって、垂直統合型の仮想化、クラウド基盤のシステム構築において、ネットワークの効率利用が可能になり、スケーラビリティの向上が期待される。今後は、この技術を含めて、ネットワーク利用の効率化に向けた研究を進めることで、2014年中には実用化を目指したい」との考えを示した。

試験構成では2倍の性能向上を実現した。理論的には、フロー多重度が増すことでさらなる性能向上の可能性がある
ローカリティを活用し、上下方向のリンクを削減することで、スケーラビリティの向上が図れるという
富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の白木長武氏
2014年度中の実用化を目指す

大河原 克行