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SAPジャパン、異なる製品を統合し業界標準に対応した「SAP Mobile Platform 3.0」

SAP Mobile Platform 3.0の主な強化点

 SAPジャパン株式会社は3日、モバイルアプリケーションの開発を支援する統合プラットフォーム「SAP Mobile Platform」の新版「同 3.0」を発表した。「買収したものなど、複数の製品を1つのプラットフォームに統合したほか、オープン性を飛躍的に高めたのが特徴。また、管理者機能の向上も行っている」(IVE&ソリューション本部 テクノロジーエンジニアリング部 モバイルソリューションズの井口和弘ダイレクター)とのことで、提供は同日より開始されている。

 「SAP Mobile Platform」は、モバイルアプリケーションの開発および運用を支援するためのモバイル基盤。SAPアプリケーションだけでなく、SAP以外のさまざまなバックエンドシステムに接続し、モバイルアプリケーションの管理機能や分析・レポート機能を提供する。

 新版では、まず、さまざまな製品を1つに統合している。具体的には、分散データベースに対応したモバイルアプリ開発基盤「Sybase Unwired Platform」、ノンコーディングで設備保全やフィールドサービスのアプリを開発できる「Syclo Agentry」、データアクセスのためのミドルウェアである「SAP NetWeaver Gateway」、コンシューマ向けアプリの開発基盤「Sybase Mobiliser」の機能を継承。これらの機能を利用しながら、開発と実行を1つの基盤で行える点がメリットという。

4つの異なる製品の機能を継承し、1つのプラットフォームで利用できる
IVE&ソリューション本部 テクノロジーエンジニアリング部 モバイルソリューションズの井口和弘ダイレクター

 2つ目の強化点は、オープンかつ標準のテクノロジーを採用している点。旧来のアーキテクチャも利用できるが、「もともと、買収した異なる会社の製品だったものを持ってきているので、各レイヤで異なる部分がある。これを統合するにあたり、バックエンドとデータモデルはOData、通信プロトコルにはHTTP RESTといった標準技術を採用し、一貫して利用できるようにした」(井口氏)とのこと。

 開発フレークワークについても、クロスプラットフォーム開発を可能にするCordovaを採用し、SAP Mobile Platformの機能を利用できる7つのプラグインを提供することで、サードパーティのSDKも使用できる「BYOT(Bring your own tool)」を実現。開発者が使い慣れたツールを用いてアプリを開発できるため、生産性の向上が期待できるとしている。

 開発についてはこのほか、ドラッグ&ドロップとクリック操作で、HTML5によるモバイルアプリ開発を行えるUI開発ツール「SAP AppBuilder」を提供し、開発者を支援するとのこと。

統合した各製品は異なる技術を利用していたため、業界標準のオープン技術に準拠した機能が新たに追加された

 3つ目の、管理者向けの機能強化では、UIをHTML5ベースのシンプルな画面に変更し、なるべく直感的な操作を行えるように改善した。既存のSybase Unwired PlatformやSyclo Agentryで開発したアプリも一元管理できるほか、アプリのトレースや分析機能が強化され、いつ、誰がどのくらいアプリを使っているかといったことをトレースし、ユーザー別、デバイス別、アプリ別などの切り口で、どのくらいの利用率なのかを分析することができる。

管理者向け機能の強化

 販売については、直販ならびにパートナー経由で行う考えで、業種別のソリューションとして販売を検討する。また、単体ではなく、SAPが扱うビッグデータ、クラウド、データベースアナリティクスなどの製品と組み合わせての展開もあり得るとした。

 加えて、現在コンシューマ向けのモバイルアプリを開発している層に訴求し、エンタープライズ向けのアプリ開発に参入してもらうような取り組みも進めるとのこと。ビジネスソリューション統括本部 モバイルソリューション部長の溝上勝功氏は、「B2Cのアプリは、市場は大きくなっているものの、競争が激しくビジネスが難しくなっている面がある。そうしたアプリ開発者に対し、SAPがブリッジとなってビジネス機会を提供できるようにしたい」と、この取り組みを説明した。

 なお、SAP Mobile Platform 3.0の価格はオープン。課金体系は、開発者向け、利用者向けのユーザーライセンスとなる。

石井 一志