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日本HP、企業向けルータ市場に本格参入~2016年に市場シェア10%を目指す

ハイエンドルータ「HSRシリーズ」と拠点向けの「MSRシリーズ」を提供

今回発表された日本HPの企業向けルータ製品
HPネットワーク事業本部 多田直哉事業本部長

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は17日、企業向けルータ「HP HSR Routerシリーズ」「HP MSR Routerシリーズ」を発表した。同社では、これらの製品によって企業向けルータの日本市場に本格参入し、「2016年には、市場シェア10%の獲得を目指す」(HPネットワーク事業本部 多田直哉事業本部長)という。

 ネットワークスイッチや無線LAN製品を国内で展開している日本HPのネットワーク製品事業は、2年以上にわたって前年を上回る成長を継続的にしており、非常に好調に推移しているという。しかし、ワールドワイドでは2位の市場シェアを持つ企業向けルータ製品については、国内ではほとんど展開されていなかった。

 一方、IDC Japanの調査・分析によると、国内の企業向けルータ市場は、同ネットワーク市場の36.3%(2013年)を占めるほど大きいほか、2013年から2017年のCAGRは、スイッチが1.5%なのに対してルータは9.0%と、今後も大きな成長が見込まれている。また、クラウドの普及やコミュニケーションツールの普及といった昨今のネットワークを取り巻く状況の変化もあり、日本HP自身、ネットワークの最後のピースを埋めるモノとして、顧客からはルータの提供を望まれていたという。

 こうした状況を受け、日本HPは今回、企業向けのハイエンドルータとなる「HP HSR Routerシリーズ」(以下、HSRシリーズ)と、ブランチオフィスなどに向けた「HP MSR Routerシリーズ」(以下、MSRシリーズ)を国内で提供することにした。

 新製品のうち「HSRシリーズ」は、データセンターのコア、あるいは企業ネットワークのセンタールータとしての利用に適する製品群。2~8スロットのインターフェイスモジュールを装着できるシャーシ型「HSR6800シリーズ」と、2Uのコンパクト型である「HSR6600シリーズ」が提供され、最上位の「HSR6808」では、最大276Gbpsの高スループットを実現している。

 さらにHSRシリーズではいずれの製品も、ルーティングをつかさどるコントロールプレーンと、データ転送を行うデータプレーンが独立しており、コントロールプレーンが万一故障した場合でも、データフォワーディングは継続できるため、高い信頼性が確保されているという。もちろん、コントローラや電源の冗長化にも対応した。

 OSはHPネットワーク製品共通のComware OS 5を搭載し、パケット転送能力は最大420Mpps。今後は、仮想シャーシ機能(IRF)や100Gigabit Ethernetにも対応する予定という。

HSRシリーズの特徴
HSR6800シリーズの「HSR6804」

 一方の「MSRシリーズ」は、主に企業の支社・支店や小規模店舗などでの利用を想定した、拠点向けのルータ製品群。規模にあわせて、「MSR4000シリーズ」「MSR3000シリーズ」「MSR2000シリーズ」から選択できるほか、多拠点での店舗展開に最適な小型ルータ「MSR930シリーズ」も用意された。

 もっとも大型のMSR4000シリーズは最大8つのHigh Speed Multiple Interface Card(HMIM)を搭載でき、パケット転送能力は最大20Mppm、IPsec処理能力が8Gbps、IPsecセッション数は8000。ボックス型のMSR930シリーズは、WAN用×1、LAN用×4の1000BASE-Tポートを備え、パケット転送能力は300kppsである。

MSRシリーズの特徴
MSR930シリーズ

 インダストリスタンダードサーバー・ネットワーク製品本部 HPネットワーク製品企画部の深川佳公氏によれば、HSRシリーズ・MSRシリーズとも、高いコストパフォーマンスが最大の特徴とのこと。特に、1万円あたりのパケット処理能力(pps)を比べた場合、MSR930では他社製品の3倍以上、MSR3000シリーズの「MSR3012」では8倍以上の価格性能比を示すという。

 また、多数のグローバルIPの管理など負荷がかかるVPNの運用についても、VAM(VPN Address Management)プロトコルを用いたDynamic VPN(DVPN)機能により、動的なグローバルIPアドレスも自動収集できるため、管理部門の負担を減らせるとした。

 価格は、HSR6800シリーズが469万4550円から、HSR6600シリーズが249万2490円から、MSR4000シリーズが161万7000円から、MSR3000シリーズは29万9250円から、MSR2000シリーズが14万9100円からで、別途インターフェイスモジュールの購入が必要となる。ただし、「他社と異なり追加ライセンスを購入しなくても、WAN必要なすべての機能を標準搭載している点は大きな強み」(深川氏)とのことだ。また、エントリーのMSR930シリーズは9万300円からとなる。

高いコストパフォーマンスを提供
Dynamic VPNによりVPN管理の負荷を軽減

石井 一志