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未知なる宇宙を切り開く、大型電波望遠鏡「アルマ」のスパコンが稼働
(2013/3/14 12:22)
富士通株式会社は14日、自然科学研究機構国立天文台(以下、国立天文台)が富士通グループと共同で、チリで進められている世界最高の感度と分解能を持つ大型電波望遠鏡アルマ(正式名称:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計。以下、アルマ)のプロジェクトにおいて、専用スーパーコンピュータ「ACA相関器システム」を開発、稼働を開始したと発表した。
アルマは、東アジア(主に国立天文台)、北米、欧州が協力し、チリの標高5000メートルの高原に建設した大型電波望遠鏡。山手線の内側と同程度の規模である、直径約18.5キロメートルの敷地にパラボラアンテナを66台配置し、アンテナから受信したミリ波・サブミリ波の信号を計算機で処理。最大直径18.5キロメートルの巨大なパラボラアンテナを使った場合と同等の高画質な電波画像が合成できるという。
これにより、宇宙ができて間もないころの生まれたての銀河や、星の誕生や太陽系のような惑星系の誕生、有機分子などの生命に関連した物質など、光(可視光)では見えない暗黒の宇宙が見えてくるという。
今回開発したのは、アルマ望遠鏡の画質向上のために導入される小口径の干渉計システム「アタカマコンパクトアレイ」のデータ処理を担う、専用スーパーコンピュータ「ACA相関器システム」。
同システムは、富士通のPCサーバー「PRIMERGY」35台と、富士通アドバンストエンジニアリングが開発した専用計算機で構成される。入力されるデータは毎秒5120億個(毎秒約200GB)にものぼり、この大量のデータを毎秒120兆回という超高速計算でリアルタイムに処理する。
また、標高5000メートル、0.5気圧という過酷な環境での安定動作を実現。具体的に0.5気圧による冷却効率の低下を克服するため、4096個の同一処理LSIユニットを並列配置し、1024本の光ファイバーで相互接続することで、冷却に必要な空気の流れを確保し、発生熱量の偏在と高密度化を防いでいる。
これにより、遠い天体などからの非常に微弱な受信電波を、約50万の周波数帯域に分割して処理し、観測に適したデータとして出力できる。これは宇宙に存在するガスが毎秒5メートルの速さで動く様子までとらえられる分解能とのこと。
国立天文台 アルマ室長の井口聖教授は「アルマ望遠鏡による観測で、銀河がどのように生まれ進化してきたのか、太陽系のような惑星を持つ惑星系はどのようにして生まれるのか、さらには生命の起源は宇宙にあるのか、といった謎に迫れることを期待しています。ACA相関器システムのデータ処理は、このような電波天文学の研究には不可欠な存在です。天文学の新しい世界が切り開かれると確信しています」と述べている。