富士通、Azureベースのクラウドサービス「FGCP/A5」~国内データセンターからAzureの機能を提供


 富士通株式会社と米Microsoftは7日、MicrosoftのPaaSであるWindows Azure Platformを活用したクラウドサービス「Fujitsu Global Cloud Platform FGCP/A5 Powered by Windows Azure」(以下、FGCP/A5)を発表した。8月1日より、富士通のデータセンターを通じて提供を開始する。

 FGCP/A5は、富士通のサーバーやストレージといったハードウェアと、MicrosoftのWindows Azure platform Applianceを組み合わせて、富士通が提供するパブリッククラウドサービス。両社では2010年7月に、Windows Azure platform Applianceを利用したクラウドサービスの提供について提携を発表しており、それがFGCP/A5として結実したことになる。


FGCP/A5の概要左から、日本マイクロソフトの樋口泰行社長、米Microsoftのエリック・キッド ジェネラルマネージャー、富士通の工藤義一執行役員常務、佐竹功二PaaS事業部長
国内の館林のデータセンターなどを利用
サービスメニュー

 機能面ではWindows Azureと同様、.NET、Java、PHPを初めとするアプリケーションフレームワーク、ストレージ機能などを利用可能で、基本サービスはコンピュート、ストレージ、SQL Azure、AppFabricなどから構成されている。また、アプリケーションの移行、システム構築・運用、サポートといった付加価値サービスも用意された。

 第1弾としては、日本国内の富士通のデータセンターからサービスが提供されるが、これがFGCP/A5の最大の特徴になる。Windows Azureは、いわばクラウド上で稼働するWindows環境であり、オンプレミスにたくさん存在するWindows資産を活用可能なため、ユーザーの注目度は高くなっている。

 しかし、Microsoft自身が提供するWindows Azureの場合は、日本向けの場合、香港やシンガポールのデータセンターを利用するのが一般的。日本マイクロソフトではレイテンシなどの性能上、ほとんど国内からの提供と変わらない十分な性能を提供できるとしているが、コンプライアンス上の問題などから、国内のデータセンターを利用したいというニーズは非常に強い。

 FGCP/A5は、そうしたニーズに応えるには最適ということだ。しかも前述したように、富士通によるSI、コンサルティング、サポートなどの付加価値サービスをあわせて提供することで、質の高いクラウドサービスの利用も可能になる。

 富士通 執行役員常務 サービスプロダクトビジネスグループ長の工藤義一氏は、こうした点について、「Windows Azureが持つ特徴を継承するほか、当社のデータセンター、運用ミドルウェア、高品質なサポートなどの付加価値を提供できる点が強み。こうしたサービスを世界に先駆けて日本で提供できる」と、今回のサービス提供をアピールした。

 すでに、顧客に対してのアプローチも始まっており、4月21日より20社でのトライアルを開始。また、前述したような強みが評価されて、大手企業を中心に100社での商談が始まっているとのこと。

 大手企業に対しては、日本マイクロソフトと富士通から、現行業務のクラウドへの移行を提案するほか、中堅・中小企業には、ビジネスパートナーと連携して、販売を進めていく考え。さらにISVに対しても、自社アプリケーションのクラウド提供のプラットフォームなどとして、採用を呼びかけていくとした。

 加えて今後は、国内提供のみならず、米国、欧州、アジア、豪州へのグローバル展開も計画。5年間で、大手企業400社、中堅・中小とISVでは5000社への導入を目標としてビジネスを進める。

 価格面では、「基本的にMicrosoftのサービスと同等のものを実現した」(工藤執行役員常務)とのことで、例えば、Windows AzureのXSインスタンスでは5円/時間、Sインスタンスでは12円/時間、ストレージは1GBあたり15円/月、ストレージトランザクション1万回あたり1円、などと設定されている。


サービス提供価格対象市場とビジネス目標

 なおMicrosoft側でも、「富士通のFGCP/A5提供で、お客さまはより迅速にクラウド展開が可能になり、また、なじみのある(Windows環境の)アプリケーションプラットフォームを使い続けられる」(米Microsoft Windows Server Cloud Engineering担当ジェネラルマネージャー、エリック・キッド氏)、「当社はパートナーシップが基本で、クラウド時代でもこれは同様。パブリッククラウド展開でも、ミッションクリティカルになればなるほど、きめ細かいソリューションが要求されるので、富士通の多様なソリューションやサービスを付加した、高品質なクラウドの提供によって、多様なニーズに応えられるのではないか」(日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏)と述べ、これを歓迎。

 また、「このプロジェクトの経験を逆にWindows Azureの開発に活用できたらとも思っている。営業やマーケティングといった分野でも協業を進めていきたい」(樋口社長)として、協業によるトータルの価値向上に力を入れていくとしている。

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