IDC Japan、東日本大震災による国内IT生産への影響度と復旧状況を発表

2011年のウェハー生産高は10%減少と予測


リサーチバイスプレジデントの中村智明氏

 IDC Japan株式会社は4月14日、東日本大震災による国内IT関連事業所への影響における復旧見通しと2011年の生産インパクトについて発表した。

 今回、IDC Japanでは、IT製品に使用される48の素材についてメーカー50社の68事業所にわたって、復旧までの期間と2011年の生産高へのインパクトを調査した。同社 リサーチバイスプレジデントの中村智明氏は、調査を実施した背景について、「当社は普段、ITに特化した調査を行っているが、震災発生以来、多くのITベンダーから原材料や部品の状況が全く把握できないという声が寄せられた。そこで今回、IT関連製品で使われる原材料や部品までさかのぼって、その被害状況と復旧見通し、さらには2011年の国内IT産業にどのような生産インパクトを与えるのかを急きょ調査した」と述べている。

東日本大震災による国内IT関連事業所への影響

 調査結果によると、まず半導体産業では、世界シェアの55%を占めるウェハーファウンドリー3拠点が停止したことによる半導体メーカーへの供給不足が、2011年の世界のウェハー生産高にマイナス10%のインパクトを与えると予測する。各拠点の復旧見通しは、SUMCOの米沢事業所(山形、世界シェア20%)が11~15週間、信越半導体の西郷村事業所(福島、世界シェア30%)が14~20週間、MEMCの宇都宮事業所(栃木、世界シェア5%)が14~20週間の復旧期間を要すると推定している。

 この結果についてPC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの木村融人氏は、「調査結果は4月7日時点のものだが、現在の状況では改善が見られている。特に、SUMCOと信越半導体については、すでに5~7週で部分的に生産が再開できる見通しが報告されており、生産高へのインパクトも予想より減少するだろう」との考えを示した。

PC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの木村融人氏

 ウェハー生産の復旧ペースが速まることで、NAND生産も早期の復旧が見込まれ、「調査結果では、東芝セミコンダクターの三重県・四日市事業所はNAND生産の回復まで14~22週を要し、生産高へのインパクトはマイナス5%と予測したが、この数値についても改善することが期待される」(木村氏)と説明している。

 また、木村氏は、震災による大きな影響が危惧(きぐ)される原材料として、ディスプレイ関連を挙げ、「ディスプレイ関連では、スマートフォンを含めた液晶工場自体が被災している。さらに、ディスプレイに必要な多種多様の部材の工場も被災している。加えて、ディスプレイは、モジュールを組み合わせる部品が集約していることもあり、復旧までに長期間を要するのではないかと考えた」という。しかし、現状は最悪の事態には至っておらず、「ディスプレイに必要な部材は他メーカーで代替することができ、また工場のラインも多少の整備で復旧できることから、当初よりもネガティブポイントを引き下げた」としている。ただ、モバイル向けの液晶メーカーについては、「明確な復旧時期は見えていないのが現状」と指摘する。

ルネサスエレクトロニクスにおける前行程の復旧状況

 さらに今回、同社では、自動車向け半導体のSoC(System-0n-a-Chip)についても調査を行っている。中村氏は、「SoCでは、世界シェアの75%をもつルネサスエレクトロニクスの茨城・ひたちなか事業所が被災し、自動車業界から150人以上の応援を受けて復旧にあたっている。当初、生産再開は7月以降の予定だったが、現在は6月に前倒しされており、調査結果では生産高へのインパクトはマイナス14%と予測したが、この数値は改善するものと見込んでいる」と説明した。一方、同事業所で製造していた携帯電話用製品の一部はすでに台湾のTSMCへの製造委託を始めており、影響は軽微となる見込みだという。

 このほか、震災の影響が大きい原材料として、半導体の洗浄に使用される超純過酸化水素についても説明。国内シェア60%をもつ三菱ガス化学の福島・浪江事業所がコンビナート全体の被災により停止しており、復旧には数か月かかるという。しかし、ほかの事業所の回復により、40%の生産量を確保できる見通しで、生産高への影響はマイナス14%と予測している。

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(唐沢 正和)
2011/4/15 06:00