米Microsftとトヨタの次世代テレマティクス提携、国内の取り組みを説明
会見で握手するトヨタ自動車 常務役員の友山茂樹氏(左)と日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏 |
トヨタ自動車 常務役員の友山茂樹氏 |
日本マイクロソフト株式会社とトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は4月8日、米国時間4月6日に発表された米Microsoftとトヨタ自動車による「次世代テレマティクスに関する戦略的提携」について記者説明会を開催し、提携の狙いや国内における両社の取り組みなどを説明した。
今回の提携は、トヨタが2012年に販売開始する次世代環境車「EV(電気自動車)」および「PHV(プラグインハイブリッド車)」のテレマティクスサービスの展開にあたり、Microsoftのクラウドプラットフォーム「Windows Azure」を採用し、2015年までにトヨタとMicrosoftが共同で独自のグローバルクラウドプラットフォームの構築を目指すというもの。この提携を受け、両社は7月までにトヨタの顧客向けIT事業会社であるトヨタメディアサービス株式会社に10億円の増資を行い、トヨタメディアサービスによるグローバルクラウドプラットフォーム構築業務を支援していく。
提携の狙いについてトヨタ自動車 常務役員の友山茂樹氏は、「当社では、次世代環境車EV、PHVを販売開始するにあたり、消費電力の問題が普及促進の障害になると判断し、テレマティクスサービスの搭載とともに、エネルギー消費を統合的にコントロールするシステム『トヨタスマートセンター』の実証実験を日本で実施している。今回、低炭素・省エネルギーに対する社会的要請が日増しに強まるなかで、『トヨタスマートセンター』プロジェクトをグローバルかつ早期に立ち上げるため、新たな情報インフラとしてWindows Azureを採用し、グローバルクラウドプラットフォームの構築を進めていく」と述べた。
テレマティクスサービスに関するトヨタとMicrosoftとの協業は、1998年、トヨタ初の顧客向けマルチメディア情報サービス「GAZOO」をMicrosoftが技術支援したところからスタートしており、同サービスを手掛けたのが当時業務改善支援室の室長を務めていた現トヨタ社長の豊田章男氏であったという。その後、2000年にトヨタメディアサービスを設立し、Microsoftとの協業により2002年からテレマティクスサービス「G-BOOK」を提供開始。2009年には中国・北米市場にも展開し、「G-BOOK」の普及台数は245万台に達している。そして2010年、こうした背景をベースに、「トヨタスマートセンター」のグローバル展開に向けて、豊田氏がMicrosoft CEOのスティーブ・バルマー氏と会見し、今回の戦略的提携に至ったという。
トヨタの目指す次世代テレマティクスサービス | 具体的な提携モデル |
提携における両社の役割は、トヨタがグローバルクラウドプラットフォームの構築および新サービスの開発・運営をトヨタメディアサービスに委託し、Microsoftが開発に必要なクラウド技術、インフラ、人材を提供する。
日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏 | トヨタテレマティクス領域におけるテクノロジーの変遷 |
日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏は、「当社では、GAZOOの開発を支援して以来、トヨタのテレマティクスサービスに向けて10年以上にわたり最新テクノロジーを提供してきた。今回、この実績を基に、次世代テレマティクスサービスのクラウドプラットフォームとしてWindows Azureを提供する。今後、Windows Azure上で動作するテレマティクスサービス向けアプリケーションの開発を支援するとともに、トヨタへのマイクロソフト技術のスキルトランスファーを行っていく。さらに、米国本社と連携し、グローバル展開・運用をサポートしていく」と、国内における同社の役割について説明した。
「Windows Azule」によって実現する新たなグローバルクラウドプラットフォームの特徴としては、1)Windows上の開発資産をそのまま移行可能、2)従来に比べ大幅なコスト低減とスケーラビリティ向上を実現、3)広大な情報インフラにより最新のサービスを世界各地に展開可能、4)特定地域のインフラが災害などで稼働不能の場合は短時間に他地域でカバー、5)世界中のサービスプロバイダとフレキシブルに接続できるため、さらにオープンなテレマティクスサービスを実現できる--といった点を挙げている。
このグローバルクラウドプラットフォームを活用した具体的なサービスイメージについてトヨタの友山氏は、「スマートフォンからEV、PHVの充電開始時刻を設定したり、充電中にエアコンを起動したり、電力残量や移動可能距離、充電スポットを確認できるサービスを提供する。また、走り方から燃費を把握し、エコ運転をアドバイスするサービスなども、Windows Azureをベースにしたグローバルクラウドプラットフォームから提供していきたい」とし、2012年から販売開始するEV、PHVに向けて日米同時でサービスリリースしたい考えを示した。