日立、半期過去最高益を達成した2010年度上期決算~国内の情報・通信システム事業は減収に

日立GSTは株式公開に向けた準備を開始


決算の概要
国内・国外の売上高

 株式会社日立製作所(日立)は2日、2010年度上期(4月~9月)の連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比9%増の4兆5024億円、営業利益は2428億円増の2180億円と黒字転換、税引前利益は3739億円回復して2638億円の黒字。当期純利益も前年同期から2912億円増の1580億円となった。

 売上高ではエレクトロニクスや自動車関連分野の需要回復に伴い、高機能材料部門やオートモーティブ部門、電子装置、システム部門を中心に前年同期を上回り、営業利益では、全社的に資材費の削減や固定費の抑制や売上高の増加、事業構造改革などの効果もあり、すべての部門で前年同期から改善した。

 純利益は計画に対しても580億円増加しており、営業利益も計画を上回る実績。半期として過去最高益を計上したという。

 国内売上高は前年同期比4%増の2兆5235億円、海外売上高は16%増の1兆9788億円となり、海外売上高比率は前年同期の41%から44%に増加した。

 日立の三好崇司執行役副社長は、「国内を中心に事業を展開している情報・通信システム、社会・産業システム、金融サービスの3部門が減収となっている」としたほか、「本年度からカンパニー制を導入して半年だが、自主経営体制が明確になり、同業他社に比べて、いまどういう水準にあり、どう行動するべきかといった発想がより強くではじめている。だが、カンパニー制で目指す、スピード豊かな経営、グローバル展開という観点ではまだまだの状況だといえる」などと総括した。

事業部門別の売上高
事業部門別の営業損益

 事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前年同期比3%減の7748億円、営業利益は22億円増の345億円となった。

 「国内は減収、海外は増収。特にストレージソリューションが海外向けを中心として堅調に推移した」という。

 国内においてはIT投資抑制が続いたことで、ソフトウェアおよびサービス、ハードウェアがいずれも前年同期を下回った。

 ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比2%減の5201億円。そのうちソフトウェアの売上高が5%増の738億円、サービスが3%減の4463億円。

 ハードウェアの売上高は前年同期比4%減の2544億円。そのうち、ストレージは5%減の862億円、サーバーは9%減の249億円、PCは10%増の149億円、通信ネットワークは3%減の652億円。

 また、ストレージソリューション事業は、売上高が前年同期比4%増の1480億円となった。

 一方、電力システムの売上高は前年同期比1%減の3848億円、営業利益は104億円増の143億円、社会・産業システムの売上高は5%減の5089億円、営業利益は117億円増の107億円、電子装置・システムの売上高は17%増の5290億円、営業利益は296億円増の162億円、建設機械は売上高が29%増の3344億円、営業利益は166億円増の182億円、高機能材料の売上高は21%増の7004億円、営業利益は451億円増の502億円、オートモーティブシステムの売上高は27%増の3646億円、営業利益は280億円改善し109億円。コンポーネント・デバイスの売上高は17%増の4147億円、営業利益は434億円増の302億円、デジタルメディア・民生機器の売上高が10%増の5069億円、営業利益は222億円改善し、109億円の黒字。金融サービスの売上高は19%減の1866億円、営業利益は87億円増の112億円、その他部門の売上高は2%増の3752億円、営業利益は55億円増の128億円となった。全部門で黒字化している。

 コンポーネント・デバイスのうち、ハードディスクドライブ事業は、2010年1~6月の売上高が前年同期比32%増の2707億円、営業利益は前年同期の89億円の赤字から368億円となった。出荷台数は前年同期比32%増の5470万台。そのうち、2.5型が47%増の3230万台、3.5型が2%減の1600万台となった。サーバー向けは44%増の340万台、エマージング向けが148%増の165万台、外付けHDDが146万台となった。

 「7~9月はPCの在庫調整もあり、不安感がある。今後は、2.5型を中心に厳しい状況にあるとみている」などとした。

2010年度連結業績見通しを上方修正

2010年度連結業績見通し

 なお、2010年度(2011年3月期)連結業績見通しを修正した。

 期初見通しに比べて、売上高が1000億円増の9兆3000億円、営業利益は700億円増の4100億円、税引前利益は750億円増の3900億円、当期純利益は700億円増の2000億円とした。

 「上期は景気回復の恩恵を受けたが、足元から来年1~3月にかけて、不透明感が増してくる。各国の経済政策の効果が一巡したこと、新興国が緊縮に向かっていること、経済新興国でインフレ施策が出始めていること、円高の影響がある」などとした。

 為替の影響は年間売上高で4000億円のマイナスがあると見ている。下期の想定為替レートは、ドルが80円、ユーロが110円としている。

 情報・通信システムは、期初見通しに比べて売上高、営業利益ともに変更がなく、売上高は前年同期比1%増の1兆7300億円、営業利益は54億円増の1000億円としている。

 「国内は少しは戻るだろうが、厳しい状況には変わらないと見ており、年度見通しは変えていない」とした。

三好崇司執行役副社長

 一方、三好副社長は、「2012 中期経営計画」の進ちょく状況についても触れた。

 日立の強みを発揮するグローバルな成長戦略、社会イノベーション事業への経営リソースの重点投入といった観点から説明。スマートシティの実証実験を国内外で展開をはじめており、大崎電気工業と海外スマートグリッド関連事業で提携したことや、英国、オランダにおいて、現地の企業とデータセンターの開設で提携したこと、中国でのデータセンター体制の強化。さらに、クラウド事業に関しては、統括組織による高信頼性クラウドサービスの提供と拡販を加速。2015年度には売上高目標として5000億円を掲げている。

 「財務体質、コスト競争力をもう一段改善したい。構造改革はまだ終わっていない。また、社会イノベーション事業は、グローバル展開に向けて投資を強力に推進していく」などとした。

 なお、同社では、ストレージ事業を担う日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)が、ニューヨーク証券取引所、もしくはナスダックでの新規株式公開に向けて準備を開始したことを発表した。

 今後、経済環境および資本市場の動向をみながら、新規株式公開時期を検討する。

 三好副社長は、「2003年にIBMからストレージ事業を買収後、大きな赤字を出したという反省があった。だが、この事業に精通した人材を採用し、それにより、多くの人物が集まったことで、経営スピード、コスト追求力が大きく変化した。日立の研究所を中心とした研究開発によって生まれた技術をもとに、製品とするのは日本人が得意とすること。これに米国人のスピード経営、コスト追求力がうまく合致した。この経験はほかの事業にも生かしていきたい」とした。

関連情報
(大河原 克行)
2010/11/2 19:13