「いつでも」「どこでも」使える次世代のバーチャルインフラを提供していく-CitrixテンプルトンCEO


米Citrixのマーク・テンプルトンCEO

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(シトリックス)は24日、米Citrixのマーク・テンプルトンCEO来日に伴う報道向けラウンドテーブルを開催。同社のビジョンなどを、同CEOが説明した。

 テンプルトンCEOがその中で強調したのは、Citrixでは「いつでも」「どこでも」「何でも」したい、というニーズに真剣に向かい合っているということだった。これを実現し、変わりゆくビジネスニーズに対応するためには、PCだけでなく、複数のデバイスが必要になっている。

 この点について、「PCのようなデバイスと大型のスクリーンは、情報を作成するのに必要であり続けるだろう」「携帯電話のように小さなデバイスはアラート用、少量の情報をおやつとして食べられる」「バッテリ駆動時間が長く接続機能に優れるタブレットは、情報を容易に食べられる」との表現で、各デバイスの特性を説明。多様なデバイスがビジネスで十分に使えるようになり、企業の経営者も関心を示すようになっているとする。

 しかし、多くのデバイスをサポートする、というのはそれほど簡単なことではない。それでもCitrixがそれを行えるのは、同社が仮想化の技術を多数擁しているからだ、という。

 「仮想化のアイデアは、突き詰めると物理的な部分と論理的な部分を切り分け、その間に仮想化を置く、ということ。そうするとシステムや人が柔軟性を高められ、ハードウェアやデータセンターに縛り付けられることもなくなる。デバイスを選ばず、すべてのコンテンツをメーカーやOSにかかわらず、多種多様なデバイスに届けられるようになる」と、テンプルトンCEOはここでの仮想化の価値を説明。特に、XenAppによるアプリケーションの仮想化と、XenDesktopによるクライアントOSの仮想化を大きな要素として挙げた。

 かつて同社は、MetaFrame(現・XenApp)を使って、アプリケーションの仮想化をPCに対して提供し、その分野では大きな成長を遂げた。現在はこれを一歩進め、「あらゆるOS、プラットフォームをサポートする」(テンプルトンCEO)との姿勢を明確に打ち出しているのが、過去との大きな違いなのだ。

 WindowsとMac OSといったPC向けOSはもちろんのこと、iOS(iPhone OSを含む)、Androidをすでにサポートするほか、今後はBlackBerry、Windows Phone、WebOSなどもサポートしていく、との計画を表明している。

 こうした、デバイスにとらわれない「バーチャルコンピューティング」が、これからの進むべき道としたテンプルトンCEOは、「すべてを仮想化できるのがCitrix。ITはオンデマンドサービスとして提供するべきだ、というのが当社のビジョンであり、当社のバーチャルコンピューティングを一度入れると、どんなデバイスでも対応できる、と約束してきた。これからもそれに応えていく」とコメントしている。

テンプルトンCEOは、自身のiPadにWindowsを表示して見せたDellのAndroid搭載タブレット「Streak」も示し、デバイスを選ばないアクセスが可能になると話している

 ただし、たくさんのデバイスをユーザーが使うようになったとしても、Citrixではデバイス管理にまで踏み込んでいく考えはないという。ユーザーが利用するデバイスについては、現在は厳重な管理体制を敷いている企業が多い。その大きな理由として、デバイスの中に重要な情報が入っているから、という点が挙げられるだろう。

 しかし、デバイスが仮想化されると、データはあくまでサーバー内で一元管理されており、デバイス側にはあまり多く置かれなくなってくる。こうした点を踏まえて、「デバイス管理は重要ではあるが、斜陽の分野であるかもしれない」としたテンプルトンCEOは、「コンピューティングのある部分を捨てることで、コスト削減が実現する、ということがある。捨て去るものが多くなればITは軽く早くなってくる」とも述べ、すべてを管理しないことによってメリットが発生するかもしれない、という点についても指摘していた。

将来的にはセルフサービスの需要が高まってくる?

 また将来については、セルフサービスの需要が高まっていくだろうとの予測を示す。「多くの人たちは、日々自分がしているもっともいい体験は、セルフサービスであると考えている」としたテンプルトンCEOは、「駅で切符を買う」「ATMでお金をおろす」「Webでオンラインショッピングをする」といったセルフサービスの例を紹介。「仕事のためのサービスはまだセルフサービスになっていないが、必要なデータ、ツールをオンデマンドに使えるようにしていくことが必要だろう。これは、iPadのアプリケーションをApp Storeから選んで使うのと同じようなことだ」とした。

 パブリッククラウドについては、将来的にはかなり普及するのではないかとの見通しも話した。かつて、クラウドサービスの一部であるSaaSは、セキュリティなどの懸念から、利用はかなり限定的なものだったが、「例えばSalesforceは、SaaSベンダーとしては初めて売り上げが10億ドルを超えた」という点を指摘。活用が広がった理由として、「ベンダー側の機能強化に加えて、SaaSのコストメリット、柔軟性、速度のメリットをお客さまも理解するようになったから」と述べ、パブリッククラウドも同じような道をたどるだろうと予測した。

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