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福井県済生会病院、VMware製品で統合インフラ基盤を構築 設備投資コストと運用管理工数を大幅削減

VMware NSXによるマイクロセグメンテーションでセキュリティも強化

 ヴイエムウェア株式会社は6日、福井県済生会病院が、プライベートクラウドソリューション「VMware vCloud Suite」とネットワーク仮想化ソフトウェア「VMware NSX」を導入し、統合インフラ基盤を構築したと発表した。システム構築はネットワンシステムズ株式会社が担当し、8月から稼働を開始しているとのこと。

 福井県済生会病院では、システムを部門ごとに導入していたことから、各システムがサイロ化してしまい、部門ごとのコンピューティングリソースが十分に活用できていないという課題があった。そのため、電子カルテのインターフェイスサーバーなどに障害が起こっても、冗長構成が十分に組めないといった問題により、安定的な医療サービスの提供を実現しにくい環境にあったという。また病院全体で、将来的にITの効率性と可用性の向上や事業継続性の強化を進めていくことも課題になっていたとのこと。

 さらには、医療分野におけるマイナンバーの導入を見据え、患者の個人情報を確実に保護する必要が生じているものの、ひとつに集約された統合基盤では、外部からの標的型攻撃に対し統合基盤内部で拡大・漏えいするリスクが高いため、入り口対策にとどまらない内部セキュリティ対策が求められていた。

 そこで同病院は、各部門システムを仮想集約するVMware vCloud Suiteに加え、セキュリティ脅威の拡大を目的として、VMware NSXの導入を決定した。

 福井県済生会病院では、これらのソリューション導入により、60台の物理サーバーで稼働していた約40の診療部門システムを、EMCジャパンの仮想化向けインフラ構成「VSPEX」を用いた、11台のブレードサーバーに統合した。これにより、院内に設置していたサーバースペースを半分に削減したほか、ハードウェアの集約と電気代削減によって、設備投資コストを従来の50%以上抑制できたという。また部門ごとのメンテナンスを廃止し、中央での一元管理に移行したため、運用管理の全体の工数を50%以上削減した。

 あわせて、統合ITインフラ基盤全体での健全性が可視化され、障害発生前の未然防止に対応。コンピューティングリソースの余剰や無駄遣いも見える化され、無駄なハードウェアリソースの追加を回避できた点もメリットとした。

 さらに統合ITインフラ基盤ではVMware NSXを用いて、企業内部のネットワークを可能な限り小さくセグメント化することで、マルウェアの拡散を抑え込む「マイクロセグメンテーション」を実装。セキュリティ脅威の拡大を防止する対策を施すとともに、部門システム単位での細やかなセキュリティ設定を実現したとのこと。

 また同時に、診療部門システムのメンテナンス用の仮想デスクトップ(VDI)環境も構築しており、VMware NSXとトレンドマイクロの総合セキュリティソフト「Trend Micro Deep Security」を連携させて、ウイルス感染したデスクトップを検知すると自動的にそれを隔離し、検疫後に自動復旧する仕組みも整備している。

 なお今後は、VMware Horizon Enterprise Editionによる、院内の電子カルテ用端末のVDI移行も検討している。この導入によって院内の電子カルテ用の端末数を最適化することで、ライセンスコストが最適化できるとともに、ローカルPCでの顧客の個人データの管理を廃止し、セキュリティ強化を進めたい考えだ。

石井 一志