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日本とともにIoT、世界など新市場開拓狙う インフォテリアが2015年度事業戦略を発表

 インフォテリア株式会社は、2015年度(2016年3月期)の事業戦略説明会を開催した。同社は、シンガポールに設立した拠点に平野洋一郎社長が常駐する体制を作り、海外向け製品開発に注力している。現在の海外売り上げは3%にとどまっているが、今後は新製品に関しては英語版を日本よりも先にリリースし、「東京オリンピックごろまでには、英語圏を含む海外での売り上げと日本での売り上げを半々にしたい」(平野社長)方針だ。

 日本でのビジネスも順調に拡大し、エンタープライズ向け主力製品である「ASTERIA」は導入企業が5000社を突破し、今後はエコシステム拡充、アダプタ開発プログラム、ユーザー会の発足を新たに開始する。エンドユーザー向け主力製品である「Handbook」は、パートナー拡充を進める。

 経営体制としては、コーポレートガバナンス強化を狙い社外取締役を過半数とし、社内業務を担当するメンバーは、平野社長以外は執行役員として業務にあたる体制とする。海外事業拡大を想定し、会計基準もIFRSを採用する。

 平野社長は1カ月のうち3週間をシンガポールで過ごし、1週間を日本で過ごすペースで業務を進めている。シンガポール以外にも杭州と香港に開発拠点、上海、カリフォルニアに営業拠点を置き、日本法人とあわせてワールドワイドで開発、営業を行う体制を構築している。

 XML専業ソフトメーカーとして1998年に創業以来、「一貫して社内外、システムの垣根を越えて、ネット技術を駆使したデータ交換と活用を可能とする事業を手がけてきた」と平野社長は説明する。

平野洋一郎社長
「つなぐ」に特化した製品群を提供

 エンタープライズ向けの主力製品である「ASTERTA」は企業データ連係分野で、エンドユーザーが利用する「Handbook」はモバイルコンテンツ管理分野で、それぞれトップシェアを獲得しているという。

 ASTERIAについては、2015年5月末現在でユーザー数が5020社となった。このユーザー数をさらに拡大していくため、2015年度には、1)エコシステムの拡充、2)ユーザー会の発足、3)従量課金制を定着、という3点を重点事業として取り組む。

 「ASTERIAをさらに多くのお客様に使って頂くためには、さらなるエコシステムの拡充が必要。また、当社発信以外の情報を共有する仕組みとして、ユーザー会を発足し、ユーザーの皆さん同士での情報交換が行える環境を作っていきたい。従量課金制度は、これまで取り込めていなかった短期利用といったニーズをすくい取るために、月額利用料金の提供を開始する」(平野社長)。

 現在、パートナーとしてはシステム構築とASTERIAの販売を行うマスターパートナーが20社、ASTERIAベースのシステム開発を行うテクニカルパートナーが9社、ASTERIAと連携するソフトが57製品となった。

エコシステムの拡充
ユーザー会を発足
従量課金制度

 さらに今年度から、他社のソフトと連携するためのアダプタを開発する「アダプタ開発プログラム」をスタートする。「APIによって他社ソフトの連携は可能だが、プログラミングレスでつながるというASTERIAのコンセプトを実現するものとして、アダプタ開発プログラムをスタートする。クラウド時代となってマイクロサービスが多数登場しており、こうしたものと簡単につながることで、利便性が向上することになる」(平野社長)。

 具体的には開発ライセンス、プロモーション支援などを行っていく。第1弾製品として、名刺管理サービス「Sansan」とのデータ連係を実現するアダプタを信興テクノミストが開発し、7月16日付けで提供を開始している。

アダプタ開発プログラム
クラウド上のマイクロサービスとつないで使えるように

活用広がるHandbook、クラウド版が9割超へ

 Handbookについては、導入件数が816件となり、クラウド版が90%と高い割合を示すようになった。こうした変化を受け2015年度の重点施策として、1)販売チャネル拡大、2)インサイドセールスの実施、3)伝える力の強化という3点を掲げている。

 「販売チャネルは、従来は大手中心だったトータルパートナー21社に加え、地方でビジネスを行うパートナーなどを含めた中小案件を扱うセールスパートナー11社、Handbookの利用価値をあげる独自製品を提供して頂いているバリュープライスパートナー9社をさらに拡大する。インサイドセールスは従来のWebでの販売、パートナー経由での販売に加え、当社社内でインサイドセールスを行い、ハイタッチ営業で新しいお客様を増やしていく。さらに製品として、従来のモバイルコンテンツ管理に加え、情報を手渡す、フィードバックの収集、共有といった機能を強化していく」(平野社長)。

Handbookとは
クラウド版比率が90%を超える
販売チャネルの拡大
伝える力の強化

新製品は日本語版より英語版を先にリリースする

 こうした既存事業の強化とともに、新たな事業として日本以外でのビジネス拡大にさらに取り組んでいく。その姿勢が最も如実にあらわれたのが、新製品については日本語版よりも、英語版を先にリリースするという方針だ。

 「バージョンアップではなく、全く新しい製品については英語版から先にリリースする。長年、日本で販売してきた製品は日本に偏ったニーズに対応している。顕著なのはUI部分で、英語圏はシンプルなUIを望むのに対し、日本では細かい機能を望むためにシンプルな機能は歓迎されない傾向がある」。

 今後もASTERIA、Handbookといった日本で実績をもつ製品は、日本でのニーズを最優先に開発を行う。その一方で、英語版でリリースした製品をどれくらいのタイムラグで日本語版として投入するのかについては、「製品ごとに異なるため、一概にはこうなると説明できない」という。

 また、PCからスマートフォン、スマートウォッチのような新しいデバイスが主流となっていることに対応するため、「当社自身がハードウェア事業に進出する予定はないが、ハードウェアを手がけるスタートアップ企業に投資し、ハードウェア発のソフトウェアとはどういうものなのか、勘所をつかむ取り組みもスタートした」と説明した。

 投資を行ったのはドイツにあるスタートアップ企業SENIC社。スマートデバイスをまとめてコントロールするスマートリモコン「Nuimo」を開発している。

 また、インフォテリア自身でApple Watch用ソフトとして提供している「lino」は全世界で100万ユーザーを獲得し、第2弾として「SnapCal」、第3弾として「Handbook」を提供。

Apple Watch対応状況

 IoT向けソフトといては、タブレット入力フォームツールとして提供していた「Gravity」を、IoTを視野に入れて再設計し、入力系、プロセス系など複数モジュールで構成し、今年度順次提供することを計画している。

 「今後、IoTを包含した企業システム構築基盤としての利用を想定し、製品を提供していく」。

IoTを視野に入れて再設計した「Gravity」
IoTを包含した企業システム構築基盤に

三浦 優子