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VECとNTT Com、製造現場とクラウドを高セキュリティにつなぐ実証実験

日本で「第4次産業革命」めざす

 製造業・ビル・エネルギーおよび電力業界を対象にソリューション普及を進める任意団体Virtual Engineering Company(以下、VEC)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は9日、製造現場とクラウドをつなげた高セキュリティな「Industy 4.1J」実証実験プロジェクトを発表した

 監視システムの運用にあたって発生する現場とクラウド間の通信頻度・速度・量が、現在設置されているネットワーク機器で実際に対応できるかなど、生産現場の効率化に必要な各種技術要件を確認する実証実験を、10日から開始する。

 ドイツやアメリカが推進している「Industry 4.0」。産業分野に焦点を当て、インターネットを利用して現場の情報をパブリッククラウドに蓄積、リアルタイムに分析・活用し、「第4次産業革命」と呼べるような社会革新をめざした取り組みが進められている。

 ところが、制御システムを標的にしたサイバー攻撃の脅威が高まってきた2009年頃より、日本企業をはじめ多くの企業では、制御システムをインターネットから切断するという対策を取ってきた。これでは生産活動で発生するさまざまなデータをクラウド上に収集することが不可能となるため、クラウド活用による現場の改善が進められない。そこで、いかにサイバー攻撃が恒常化する世界で生産現場とクラウドを安全に接続するかが大きなテーマになっているという。

 こうした背景の中で実証実験プロジェクトでは、「Industry 4.1J」を実現するため、以下の活動に取り組む。

 1つが、クラウド・現場間のセキュアな通信に必要な要件の検証。セキュリティ品質に優れた最新のセキュア通信プロトコル「OPC UA」を現行の制御システムに適用した場合も正常に通信できるかを実験する。

 もう1つが、監視システムの正常な稼働に必要な要件の検証。現場のシステムでの異常検知やクラウドへのデータミラーリングをリアルタイムに行うためには、両環境間で現場からの大量のデータを高速に通信しあう必要がある。そこで、クラウドや制御システムに大容量・高速なデータを実際に流通させ、求められる接続構成と仕様を確認する。

 また、VEC会員企業から提供される監視システムをクラウドに導入し、実際にクラウド上で稼働するかを実験する。クラウドにはNTT Comの「Bizホスティング Enterprise Cloud」を活用する。

 さらに実際に現場で運用されている制御ロジックを監視システムに組み込み、システムが正常稼働状況をシミュレートできるかどうか、また、異常の原因がたとえば機械のバルブの故障なのか、外部から侵入したマルウェアなのかをシステムが判別できるか実験する。

クラウドを使った監視システムのイメージ

 NTT Comの協賛の下、アズビル/アズビル セキュリティフライデー、OSIsoftジャパン、サン電子、ジェイティ エンジニアリング、シュナイダーエレクトリック、立花エレテック、デジタル、ベルチャイルド、富士電機、マカフィー、村田機械、安川電機が参加。

 今後については、成果を一般公開するとともに、VEC会員が提供するサービス・制御製品とNTT Comが提供する「Arcstar Universal One」「Bizホスティング Enterprise Cloud」を組み合わせることで、日本国内や海外に多数の生産拠点を持つ企業へ、高度で安全な現場改善ソリューションを提供する。また、VECが制御システムセキュリティ対策の企業向けeラーニング事業を4月からスタートし、セキュアな製造現場を実現できる人材育成にも取り組む考え。

川島 弘之