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富士通研、ネットワーク障害の影響を短時間で特定できる運用効率化技術

富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の松岡直樹主任研究員

 株式会社富士通研究所(富士通研)は28日、ネットワーク障害の影響を短時間で特定できる運用効率化技術を開発したと発表した。仮想サーバー間の通信への影響範囲を特定するには、専門家でも数時間かかっていたものを、ネットワークの専門的知識を持たない運用管理者が、10秒以内で特定できるようになるという。

 クラウドの普及によって利用者の利便性が高まる一方で、クラウド環境における構成の複雑化を背景に運用負荷が増加。障害時の迅速な対応にも課題が生まれている。

 例えば、クラウド運用において、物理サーバーに障害が発生した場合、それによって影響を受けた仮想サーバーを特定し、被害状況や復旧見込み時期などを算定して報告するために、かなりの工数と時間がかかるといった課題が発生している。

 「影響を受けた仮想サーバーまでは短時間で特定が可能。だが、どの仮想サーバー間の通信が影響を受けているのかを特定するといった詳細情報の取得には、多くの時間を要している。1万台規模の大規模クラウド環境においては、特定までに数時間を費やす場合もある。実際には、仮想サーバーの特定後、復旧作業と並行的にどの仮想サーバー間の通信が影響を受けているのかといった作業を開始する例が多いが、手作業での特定となる場合が多く、結果として利用者に対する報告などに時間がかかっているのが現状。今回開発した技術によって、影響範囲の絞り込み作業の負荷軽減を行える」(富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の松岡直樹主任研究員)という。

影響範囲の特定には、かなりの工数と時間がかかってしまっていた

 富士通研究所が新たに開発した技術では、物理サーバー間の通信経路情報と仮想サーバー間の通信経路情報を自動生成。それぞれの仮想サーバーがどの物理サーバーに収容されているのかという情報に基づいて、それぞれの対応関係を解析し、影響を受けた仮想サーバーを10秒以下で特定することができる。

 物理サーバーと仮想サーバーの対応付けの自動化では、クラウド環境からサーバーとネットワークの構成情報を取得して、仮想サーバー間および物理サーバー間の通信経路情報を自動生成。これらの情報を事前に取得する一方で、障害が発生した際に、物理サーバーと仮想サーバーの通信経路情報の対応関係を自動解析できる。

 「仮想サーバー間の影響範囲の特定においては、仮想サーバーと物理インフラを運用している管理者が異なることも、ネットワーク障害を受けた仮想サーバー間通信の特定に時間がかかる要因のひとつだった。これが、自動化することで解決する。また詳細情報の取得には、ネットワークに精通したネットワーク管理者が必要だったが、自動化することで、知識を持たない管理者が、障害を受ける仮想サーバー間通信を特定できるようになる」(松岡主任研究員)という。

富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の佐藤昌浩氏

 富士通研究所によると、「サーバー1万台、テナント数4000程度の大規模クラウド環境においては、10秒以内で詳細な影響範囲特定が可能になる。3万台規模でも10秒程度での特定が可能。また、1000台規模であれば、瞬時に特定することができる。短時間での障害復旧につなげられるほか、クラウド利用者に対する迅速な報告が実現できる」(富士通研究所 ICTシステム研究所システムプラットフォーム研究部の佐藤昌浩氏)としている。

 現在、富士通研究所および富士通グループ内で実証実験を行っており、そこでは、数時間かかっていた詳細な特定作業を、数秒で完了させているという。なお、詳細な影響の特定において、CPUやメモリなどのリソース追加は不要だという。

 さらに、同技術では、物理サーバーの通信経路情報に加えて、冗長経路も考慮。現用経路である場合と、予備経路である場合を判別して、現用経路に障害が発生した場合にのみ、影響を特定する作業を行うといったことも可能だ。

 「この技術を活用することで、障害影響特定の自動化、クラウド利用者対する迅速な障害報告、属人化の解消という3つのメリットを提供できる。今後、さまざまな環境で評価を実施し、2015年度中の製品適用を目指す」(松岡主任研究員)という。

影響を受けた仮想サーバーを10秒以下で特定可能
プロトタイプの画面イメージ。障害の影響を受けた仮想システム内のコンポーネントが赤色に点滅。障害を受けた仮想サーバー間の通信情報をポップアップ表示する

 富士通が提供するプライベートクラウド向け管理ソフトウェアである「ServerView Resource Orchestrator」や、ネットワークサービス管理ソリューション「Proactnes」などへの搭載が見込まれている。将来的には富士通グループ企業の製品への適用が行われる可能性もありそうだ。

大河原 克行