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準天頂衛星と自律走行型トラクターによる無人農作業、日立造船らが実証実験

 日立造船株式会社、株式会社日立製作所(以下、日立)、ヤンマー株式会社は14日、稲の立毛時期において自律走行型ロボットトラクターを用いた無人作業に成功したと発表した。「精密農業」の実現をめざす。

 3社は総務省が実施する「海外における準天頂衛星システムの高度測位信号の利用に係る電波の有効利用に関する調査」の委託先に選定されている。同調査では、準天頂衛星システムから配信される高度測位信号が、オーストラリアにおける精密農業に利活用できるかを検討する。

 具体的には、同地域の稲を栽培する農場において、高度測位信号を用いて自律走行型ロボットトラクターを制御し、実際の農作業を行う実証実験を実施する。従来のGPSでは精度に難があるため、オーストラリアの電子基準点(測位・測地用途の基準点)などによる測位補助を行う測位方式を採用し、さらに準天頂衛星システムで高い測位精度を利用するための測位方式として、「RTNet」「RMIT」「MADOCA」の3種類の高精度測位方式を検討し、どれがオーストラリアでの精密農業に適切な方式かを選定する。これらにより、誤差5cmの精度で農作業ができることをめざすという。

営農調査実施構成

 2014年11月末に最初の実証実験を行い、自律走行型ロボットトラクターを使用した稲の立毛時期における条間走行(植えた稲と稲の間をタイヤが通る走行)と農作業に成功した。今後は2015年1月に稲の生育状況を自律走行型ロボットトラクターで計測するなど、時期に応じて複数の農作業を行い、効果を検証していく。実施期間は2015年3月までを予定。

 調査後は実証実験で得られた成果を基に、農業従事者や政府関係者へのヒアリングを通じ、高精度測位信号を用いた精密農業の実用化に向けた課題を抽出。将来的には、同調査実施機関を中心としたコンソーシアムを立ち上げ、精密農業事業を積極的に展開し、位置情報の高精度化技術として、オーストラリア以外のアジアや日本でも応用していく方針という。

 調査には3社のほか、日本とオーストラリアの研究機関が協力。参加機関として、日立オーストラリア、北海道大学、JAXA、CRC-SI、ロイヤルメルボルン工科大学、ニューサウスウェールズ大学、ニューイングランド大学、RRA、SmartNet AUSなどが名を連ねる。

川島 弘之