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Yahoo! JAPAN、ブロケード製品でOpenStackプライベートクラウドインフラを構築

 ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社(以下、ブロケード)は18日、ヤフー株式会社が、スイッチ製品「Brocade VDX 8770」「Brocade VDX 6740」、ロードバランサー「Brocade ADXシリーズ」、ルータ「Brocade MLXe」を採用したと発表した。ヤフーではこれらを利用して、自社のサービス開発者向けOpenStackプライベートクラウドインフラを構築するという。

 Yahoo! JAPANでは、多数のサービスを支える同社のシステム基盤において、早い段階からサーバー、ストレージ、ネットワークなどのリソースをオンデマンドで提供できるプライベートクラウド環境を整えてきたという。しかし、ハードウェアに依存するシステム構成により、サービスの移転などで生じた余剰ラックスペースを別の用途で再利用しづらいなど、リソース活用の制約やコスト効率の面での課題があった。

 そこで2013年3月に、こうしたデータセンター内の課題を解決すべく、ハードウェアを抽象化することを新たな目標に定め、同年6月にプロジェクトを発足させたとのこと。ハードウェアの抽象化にあたっては、普及が急速に進み、オープンソースならではのイノベーションが期待できることから、クラウド基盤ソフトにOpenStackを採用した。

 そして、OpenStackベース環境の構築に際し、ネットワーク部分の設計で「共創」の取り組みができるかどうかを判断基準にベンダーの選定を実施。その結果、過去にヤフーの大規模なApache Hadoop基盤を支えるネットワークインフラなどで採用実績を持つこと、全社的にオープンな技術に対して積極的なコミットを示していることを評価し、ブロケードをパートナーとして選定している。

 今回のOpenStack基盤では、データセンターの上位ネットワークを支えるコアスイッチにBrocade MLXeルータを、ラック群を集約するアグリゲーションスイッチとラック内のトップオブラック(ToR)スイッチにBrocade VDXシリーズスイッチを利用している。

 一方OpenStackでは、ソフトウェアベースのトンネリングモデルでレイヤ2ネットワークサービスを抽象化するが、完全なソフトウェアベースではネットワーク性能が大きく劣化するとともに、管理すべきレイヤも増えて障害対応などが複雑になる。そうした点を考慮し、ヤフーとブロケードは「Brocade Neutron Plugin for VDX/VCS」を開発し、これを活用することで、性能ロスのない仮想ネットワークサービスとFWaaS(Firewall-as-a-Service)を実現した。

 このプラグインを通じてBrocade VDXの仮想ネットワーク機能をOpenStack環境から直接制御することで、ソフト制御による柔軟性を実現しながら、ハードウェアベースと同等のネットワーク性能を確保できるとのこと。ヤフーの計測によれば、ソフトベースのGREトンネリングと比べ、8倍のスループットと2分の1のレイテンシを達成したとしている。

 このほかヤフーは、OpenStack基盤上で稼働する仮想サーバー群のアクセス制御と負荷分散を行うためにBrocade ADXシリーズを導入。Brocade ADXを制御できるNeutronプラグインもブロケードと共同で開発し、ロードバランサーの機能をNeutronベースで抽象化した、性能ロスのないLBaaS(Load-Balancing-as-a-Service)での運用スタイルを目指すとした。

 ブロケード製品を組み合わせて構築されたヤフーのOpenStack基盤は、同社の国内データセンターと、同社の米国子会社であるYJ Americaの新規データセンターにおいて構築が開始されている状況で、12月よりテスト稼働が開始される。10月時点で作成済みの仮想サーバーは合計6万台もの多数に及び、今後も1カ月あたり平均5000台程度の仮想サーバーを追加。年内にはそのうち5万台以上がOpenStack基盤で提供される予定という。

 さらに2015年内には、10万台のシステム規模も視野に入れており、ネットワーク関連の運用工数を劇的に簡素化できるとの大きな期待が寄せられている。

 なおブロケードは、このプロジェクトで開発したプラグインを他の企業向けにも公開・提供し、今後も積極的にOpenStackベースのクラウド基盤導入をサポートする意向だ。

石井 一志