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米MS、人工知能による重要メール識別機能「Clutter」をOffice 365で提供開始

人間関係を学習する「Office Graph」を活用、まずは英語圏から

 米Microsoftは11日、「Office 365」の新機能として、人工知能技術で重要メールを識別する「Clutter」の提供開始を発表した。

 Clutterを利用できるのは、「Office 365 for Business」の契約者で、英語ロケールかつファーストリリースにオプトインしているテナントに限定される。ほかの言語については、「ローカライゼーションが完成次第」提供を開始するとしている。

 Clutterは、Office 365で最重要メールを識別、分類する機能だ。利用する立場から見ると、受信メールで重要な物は自動的に目立たせられ、そうでないメールは「Clutter」フォルダに一時保存される。利用者は重要メールの処理に専念することで、時間を有効活用できることになる。

 重要メールを識別するために、Microsoftの「Office Graph」技術が利用される。Office Graphは、利用者個人が頻繁にドキュメントを共有している、頻繁に会っている、よくドキュメントを開いている、Yammerでフォローしているなど、オフィス内のさまざまな人間関係やアクティビティのつながりを学習している。これに基づいて、人工知能の一分野である機械学習技術を用いて受信したメールを振り分ける。

 利用者のメール行動も変化していくため、Office Graphはそれを過去の行動をもとに学習し続けて改良していく。そのため時間の経過とともに賢くなっていくという。

 また、Clutterは、既に設定しているメール振り分けルールは尊重し、それに影響を与えない。そしてClutterが振り分けを誤った場合は、自分で重要メールとチェックすることでClutterを訓練することができる。

 重要と見なされなかったメールはClutterフォルダにそのまま保存されており、後ですぐに見つけることが可能だ。

 Clutterが直接学習する利用者の行動は個人に限定されており、Outlook、Outlook Web Apps、Outlook Web Apps for Devices、EAS Connected Devicesのどのクライアントからも利用できるが、学習内容がほかの利用者と共有されることはない。Clutter機能はオプションメニューからいつでもオンまたはオフにすることができる。

 Microsoftは10日、同社の戦略として、個人や企業が時間を効率的に利用し、本当の意味での「生産性」を高められるように、モバイル、ソーシャル、自然なUI、知性を組み込んだソフトウェアを提供する戦略について説明していたばかりだ。オフィスワーカーは毎日大量にメールを処理しなければならないプレッシャーにさらされている。Clutterの知性がこの日常的問題を助け、生産性を高め、オフィスワーカーの幸福に寄与するかどうかが注目されるところだ。

青木 大我 taiga@scientist.com