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水冷でも安心・安全? 超高密度型スパコン「HP Apollo 8000」

高密度シャーシ型「HP Apollo 6000」も

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は7日、HPCなどに向けた高密度型サーバー製品群「HP Apollo」を発表した。水冷型のスーパーコンピュータ「HP Apollo 8000 System」(以下、Apollo 8000)と、シャーシ型サーバー「HP Apollo 6000 System」(以下、Apollo 6000)を同日より販売開始する。

 HPでは、多様化するワークロードに対応していくため、サーバー製品群を1)コアビジネスアプリケーション、2)ミッションクリティカル環境、3)仮想化/クラウド、4)ビッグデータ/HPCといった4つに分け、それぞれのワークロードに特化した製品を提供する戦略を採用した。

 その中で、4)のビッグデータ/HPC/web/スケールアウトといった領域向けは、「HP Moonshot」や「HP ProLiant SL」を提供してきたが、ここへ新たに加わるのがHP Apolloになる。HPサーバー事業統括本部 アライアンス・ビジネス開発本部の宮本義敬本部長は、「スケールアウト分野でも、コアあたりの性能を重視する、コア数を重視する、GPGPUを利用するといったように、高密度省電力という切り口は共通していても、その中で求められるものが違う。そこに対して、当社では最適なものを提供する」と述べ、異なるワークロードの中の細かなニーズに対しても特化型の製品を提供していく、という方針を説明した。

 このような方針のため、Apollo 8000とApollo 6000はシリーズ名称こそ同じだが、中身はまったく異なる製品になっている。

HPサーバー事業統括本部 アライアンス・ビジネス開発本部の宮本義敬本部長
4つのカテゴリに分けて、ワークロードに特化した製品を提供していく

安心水冷システム採用のスパコン「Apollo 8000」

 Apollo 8000は、水冷ラックと高密度サーバーを一体化させたスーパーコンピュータで、サーバーラックをシャーシとして、サーバートレイを直接搭載する仕組みを採用。144台の計算ノード(2ソケット)を1ラックに集約し、250テラフロップスを超える性能を実現しており、従来製品と比べて設置面積あたりのテラフロップス性能を4倍に向上させた。

 その肝は、独自の水冷アーキテクチャを採用した水冷ラックにある。水冷は、空冷と比べて高い冷却効率を持つことは周知されているものの、冷却水漏れなどによるトラブルの懸念がつきまとっていた。しかしHPでは、独自の安心水冷技術によって、これを解決したという。

 具体的には、もっとも熱を発生するCPUやメモリ、GPUといった部分から、ヒートパイプを使って熱を側面に集約。そこを冷却水によって冷やすといった仕組みにより、サーバー内へ水を循環させない水冷システムを構築した。また、常温(25℃以下)の水を利用するほか、CPU/メモリ/GPU以外は空冷とするハイブリッド型の構造によって、冷却コストを最小化している。

 HPサーバー製品統括本部 プロダクトマーケティング本部 ハイパースケールビジネス開発部の岡野家和氏は、「常温の水を利用することで、従来の水冷システムのようにチラー(chiller)を使って冷却水をガンガン冷やす必要はなくなったし、使用済みの温水を再利用できるのも特徴。水は、ラック中央の金属で密閉された中にのみ存在し、サーバーはドライなままで水冷システムと密着するので、水漏れが起こらない」と、その特徴をアピールしている。

 岡野氏によれば、Apollo 8000をすでに導入している米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)の試算では、冷却に使った温水を暖房や融雪に利用する二次利用も含め、5年間で最大100万ドルの電力コスト削減が見込めるという。

 参考価格は2億5152万1200円(税込)からで、別途、配管工事やファシリティ側の対応が必要になる。

Apollo 8000

電源ユニットを共有するシャーシ型サーバー「Apollo 6000」

 一方のApollo 6000は、高密度を追究したシャーシ型サーバー。5Uシャーシに最大20ノードのサーバーを搭載できるので、ProLiant SLシリーズと比べて2倍となる、1Uあたり4ノードの実装を可能にした。また、電源をパワーシェルフとしてシャーシの外へ出し、最大4シャーシで共有可能にしているため、高い電力効率を提供できるのも特徴だ。

 サーバートレイは、第1弾としてXeon E3(4コア、最大3.7GHz)を搭載した1ソケットタイプ「ProLiant XL220a Gen8 v2」が提供される。小コア・高クロックが求められる電子回路設計やモンテカルロシミュレーション(投資分析・物理科学など)のワークロードに適しており、コア数が少ないことから、コア課金のソフトウェアライセンス費用を抑制できるとしている。

 岡野氏は、「標準のラックに入るほか、電源やファシリティ側の設備にも特別なものは必要ない。メンテナンスも前面から簡単に行える」と述べ、導入の簡単さをアピールしていた。

 参考価格は、1シャーシ、各ノード最小構成×20ノード(10サーバートレイ)の場合で523万1520円(税込)となる。

Apollo 6000の概要
Apollo 6000のシャーシ。2枚ほどサーバートレイも収納されている。上に乗っているのがパワーシェルフ
HPサーバー製品統括本部 プロダクトマーケティング本部 ハイパースケールビジネス開発部の岡野家和氏。手にしているのはサーバートレイのProLiant XL220a Gen8 v2

石井 一志