インメモリソフト「SAP HANA SP5」提供開始――HANA成功の背景とは?


リアルタイムコンピューティング事業本部 本部長の馬場渉氏
SP5の新機能

 2年前の限定出荷開始から2年、SAPジャパンは11月27日、インメモリデータベース「SAP HANA」の最新版「SAP HANA SP5」を発表、同日より提供開始した。これに伴い同社はプレスセミナーを開催し、リアルタイムコンピューティング事業本部 本部長の馬場渉氏が、SP5の最新機能について、またHANAが支持される背景について語った。

 馬場氏によると、SAP HANA SP5はミッションクリティカルなトランザクションアプリケーションや分析アプリケーション処理を1つのプラットフォームで実行できるという。これは、「2年前、われわれがHANAの完成系として目指していたバージョンに相当する」と馬場氏は言う。

 では、SP5で強化された機能はどのようなものなのか。さまざまな機能がある中で、馬場氏は「アプリケーション開発の拡張機能とデータセンターオペレーションの拡張機能が肝だ」とした。

 まずアプリケーション開発の拡張機能については、「これまでのバージョンでもアプリケーション開発は可能だったが、開発のシンプルさやスピード、簡素化にはつながっていなかった」と馬場氏。SP5では、「アプリケーションサーバーがデータベースの中に埋め込まれているため、データベースが速くてもアプリケーションサーバがボトルネックになるといったようなこともなく、開発作業のバッチ処理や待ち時間に悩まされることがない」という。

 また、データセンターオペレーションの拡張機能については、ミッションクリティカルでの利用に耐えうるよう、バックアップやデザスタリカバリ、フェイルオーバーオプション、権限認証をはじめとするセキュリティ機能などが強化されているという。


イノベーションにも方法論を

 順調にバージョンアップを続け、導入数を増やすSAP HANA。同社ではHANAと、モバイル、そしてクラウドの3つを事業の柱としてイノベーション戦略を立てており、「この3分野がうまく機能して、これまでわれわれが弱かった金融や小売業界にも強くなってきた」としている。

 同社のイノベーション戦略はなぜうまく機能しているのか。それは、「トランスフォーメーションを仕組み化したのと同様に、イノベーションも仕組み化したためだ」と馬場氏は説明する。

 「SAPは伝統的にトランスフォーメーションに強かった。トランスフォーメーションをビジネスプロセスエンジニアリングという方法で仕組み化したためだ。これで誰もがトランスフォーメーションできるようになった。イノベーションの歴史はまだトランスフォーメーションの10分の1に過ぎないが、新しい発想で会社を変えることに対しても方法論を提供していきたい」(馬場氏)

 では、イノベーションを起こすための方法論とは何なのか。その答えは「デザインシンキングだ」と馬場氏。SAPでは、社員教育や提案活動にもデザインシンキングを取り入れているという。

 デザインシンキングとは、伝統的なIT利用者であるIT部門と、SAPが開拓してきたビジネス主導のIT利用者である業務部門、そして、そのさらに先にいる最終消費者のことまで考えてデザインすることだ。

 「技術を活用することで何がどうなるかを理解することが重要だ。システムの改善で製造業の部品点数が削減したとする。しかしそこから一歩先を見て、部品点数の削減が何につながるかを理解すべき。この場合だと、部品点数が減ることで消費者はより安価な製品を入手できるのだ。また、日本の製薬企業の例だと、ガンの治療薬を営業するMRが、ビッグデータを活用して過去の患者の投薬後の経過を分析、似たような症状を示す新たな患者にこの薬を投与すべきかどうか提案するといったことも行っている。つまり、営業担当者の生産性が高まるのはもちろん、最終的な薬のエンドユーザーである患者の苦しみを軽減することもできるのだ」(馬場氏)

 このように、「利用者を中心にした発想やスペックがHANAには実装されている。エンドユーザーまで視野に入れながら事業展開していることこそ、HANAが成功した背景だ」と馬場氏は述べた。

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