米EMCトゥッチCEO、「システムは自動化・仮想化されたSoftware-Defined Data Centerへ」


 米EMCの会長兼CEOであるジョー・トゥッチ氏が29日、都内で記者会見を行い、同社の戦略やITを取り巻く環境変化などについて語った。

 トゥッチ氏は2012年3月、Dow Jones社が発行する投資家向け週刊誌「Barron's」において、「世界のベストCEO 30」の1人に選出されており、今回の来日は2008年以来、4年ぶりになるという。

 冒頭、EMCジャパン株式会社の山野修社長は、「過去11年間にわたり、約70社の買収をすべて成功裏に収め、EMCの売上高を4倍に、時価総額を6倍にするなどの成長を実現した。EMCのみならず、業界全体に大きな影響を与えている人物である」と紹介した。


米EMCのジョー・トゥッチ会長兼CEOEMCジャパンの山野修社長

 

自動化と仮想化を組み合わせたSoftware-Defined Data Centerへ

 トゥッチ氏は、まずユーザー企業のCIOが持つ課題に触れ、「運用にかかわる投資が4分の1を占めていること、2020年までに情報量が44倍に拡大すること、そして、企業は日々サイバー攻撃にさらされているという課題がある。これらの課題を解決するのが、クラウド・コンピューティングであり、私はこれが最も大きな波であり、破壊力でも過去最大のものになる」と指摘。そして、「CIOはどうやって、このクラウドのステージに乗っていくべきか」と質問を投げかけた。

 トゥッチ氏が提案するのが、「標準化」「仮想化」「自動化」の3つのステップだ。

 「世界のサーバー出荷の多くを占めるx86によるシングルアーキテクチャへと標準化すること、仮想マシンが物理マシンの導入実績を上回っているように、ネットワークまでを含めた仮想化に取り組むこと、そして、これらを自動化することが大切である」とし、「次に訪れるものが、自動化と仮想化を組み合わせたSoftware-Defined Data Centerだ」と定義する。

 「従来は、メールやデータベース、ERPといったそれぞれの役割で、それぞれのインフラを持つという縦割りのシステムであり、結果として複雑なものが必要とされていたが、Software-Defined Data Centerでは、仮想化と自動化が一緒になり、ストレージ、ネットワーク、セキュリティも仮想化され、管理ツールも内蔵化される。さらに、インフラとアプリケーションを分離し、横ぐしでインフラを構築することになる。アプリケーションが必要とするサービスレベル、ポリシー、コスト制約といったところからインフラを活用でき、これまでなかったほどの効率性を提供するとともに、選択肢や俊敏性も提供できる」などとした。

 これを補足するように山野社長は、「Software-Defined Data Centerを実現するためにさまざまなパーツが必要である。企業が異なるセキュリティレベルを持つ複数のデータセンターをまたいで、ひとつのデータセンターとして仮想化した形で構築したい、といっても、それはまだ実現できるものではない。また、プライベートクラウドとパブリッククラウドを活用したハイブリッドクラウドでも、異なる水準でひとつの環境で作らなくてはならず、これも難しい。Software-Defined Data Centerでは、データセンター、サーバー、ストレージ、セキュリティといったものを、ソフトウェアで管理することで、仮想化したひとつのデータセンターを構築するものになる」とした。

 トゥッチ氏は、「Software-Defined Data Centerでは、構成するさまざまなピースがあるが、まだ開発中のものもあり、買収を行っていくものもあるだろう」とも話している。

 

ビッグデータを活用しなくては変革できない?

 続けて、トゥッチ氏は、ビッグデータに関して言及。「企業において、運用コストを下げる、収入を増やすことが重要な課題である。そのためには組織が持つ情報資産をいかに活用するかということに尽きる。いま企業を取り巻く環境では、非構造化データが90%を占めている。また、毎日5ペタバイトずつ情報量が増加している。ビッグデータは、政府を含むすべての業界にインパクトを与えるものであり、ビッグデータを活用しなくては変革を起こすことは難しい」などと語った。

 こうした市場環境を示しながら、「持続性、共有性、保護などの観点から、情報の価値をみる必要がある。また、今日は価値があった情報が、明日は価値がなくなるという変化もある。それではどこにデータを格納するのが最適か。EMCでは、適切な場所は、ハードディスクやメモリ、フラッシュなど、すべての場所が最適であると考えている。そこでキーになるのはクラウドによる自動化である。それがSoftware-Defined Data Centerのメリットである」などとした。

 また、「ビッグデータの活用が企業に浸透するのに従い、例えば、小売業などでのビッグデータの活用は、CIOよりも、むしろマーケティング部門の人たちが利用するといったことが、これから増えていくだろう。EMCでは、こうした動きへの準備をしている」とも回答する。

 一方、トゥッチ氏は、これまでの買収戦略を振り返り、「これまでに73社の買収をしてきたが、まずは小さく買収することが大切。当社のビジョンにフィットするような買収を行う。そして、買収する企業に勤務する社員、開発者を両手を広げて迎え入れることが大切だ。EMCジャパンの山野社長も買収した企業(=RSA)から来ている。買収した企業には、より多くの開発費を提供し、EMCの営業力を活用して、これを広げていく努力をするのが成功の要因。今後もビッグデータに関する企業を買収していくことになる。アプリケーションを開発するパートナー企業と競合する企業は買収はしない。当社は、ビッグデータとクラウドという時代の流れにあわせて変化している企業である」などと語った。

 また、Lenovoとの戦略的提携については、「EMCにとって、中国市場を狙っていく意図がある」との説明を行っている。

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