日本マイクロソフト、仮想化・クラウド対応を強化した最新サーバーOS「Windows Server 2012」
パッケージ版は9月26日に発売
Windows Server 2012のパッケージを手にする、日本マイクロソフト 執行役 マーケティング&オペレーションズ ゼネラルマネージャーのマイケル・ビール氏 |
日本マイクロソフト株式会社は5日、最新サーバーOS「Windows Server 2012」の提供開始を発表した。9月1日よりすでにボリュームライセンスを販売しているほか、パッケージ製品は9月26日に発売する。
Windows Server 2012は、Windows Server 2008 R2の後継となる新しいサーバーOS。企業内の小規模サーバーから、新しいニーズである大規模クラウドまでをカバーするために、前バージョンと比べて180以上の新機能の実装と機能強化が行われているという。
日本マイクロソフト 執行役 マーケティング&オペレーションズ ゼネラルマネージャーのマイケル・ビール氏は、「当社の2013年度(2013年6月期)の注力分野は『デバイス』『クラウド』『ソリューション』の3つだが、Windows Server 2012はすべての分野に関係がある製品だ。何百もの新しい機能が実装されており、増分的なリリースではない一大変革である」と述べ、その重要度を強調する。
■ミッションクリティカル領域も視野に入れた新しいHyper-V
Windows Server 2012の主な機能強化点 |
特に大きな強化がなされているのは、仮想化・クラウドの分野。中でも、仮想化ハイパーバイザーである“新しいHyper-V”(今回よりバージョン番号が廃止された)ではスケーラビリティが拡張されており、Windows Server 2008 R2に搭載されていた「Hyper-V 2.0」と比べて、仮想マシンごとの仮想CPUが最大4から64へ、仮想マシンごとのメモリが最大64GBから1TBへ変更された。
さらに、仮想マシンのライブマイグレーションについても、これまでのようにクラスタ構成が必須ではなくなったほか、複数の仮想マシンを同時にライブマイグレーションする機能や、より高速な移行に対応したため、実用性がかなり高まったという。
日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の梅田成二氏は、「新しいHyper-Vではミッションクリティカル領域での利用も意識するようになり、大規模環境を見据えて仮想マシンごとの仮想CPU数やメモリ量を大幅に向上させた。これまでも当社では『競合他社に追いつきます』というメッセージを発信してきたが、今回初めて他社の先へ行けた」と、この強化の意義を説明した。
事実、IDCによる仮想化ホスト数のシェアでは、2008年のHyper-V 1.0リリース当時は大きく水を空けられてたVMwareとの差が、2012年第1四半期にはついに逆転したとのことで、Microsoftの仮想化製品の採用は進んでいる。「もはや仮想化がここまで普及すると、仮想化にお金を払う時代ではない、ということではないか。サーバーを買ってきたら標準で仮想化ができる時代になったということで、(Windows ServerとHyper-Vが)支持をいただいているのかなと思う」と梅田氏は述べ、VMwareとの差をさらに開いていきたいとの意気込みを示した。
Hyper-Vの機能強化 | 日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長の梅田成二氏 |
クラウド対応という面でも、新たに搭載したネットワークの仮想化機能により、パブリッククラウドとオンプレミスのデータセンターとの連携性が向上。さらに、ID連携によるクラウド環境とのシングルサインオンにも対応したという。
このほかストレージでは、容量の異なる物理ディスクをまとめてストレージプール化する機能に加えて、ストレージプールの容量を実際に存在する物理ディスクの容量以上に見せかけるシンプロビジョニング機能を実装。さらに、同じデータをまとめてストレージの利用量を削減する重複除去(重複排除・除外)機能も搭載した。梅田氏によれば、社内の部門ファイルサーバーに重複除去機能を適用したところ、ストレージ利用量を25%削減できたとのことだが、複数の仮想マシンを収容している場合などにも効果的に利用できるとした。
ストレージの機能強化 | 社内の部門ファイルサーバーに適用した結果、25%のストレージ利用量を削減できたという |
■エディション構成を単純化
エディションについても整理・統合が行われた。Windows Server 2008 R2までは非常に多くのエディションが乱立しており、機能面でもさまざまに異なる製品が提供されていたため、ユーザーが直感的に製品を選ぶことは難しくなっていた。
今回はこれを改善するために、一般的なエディションを「Datacenter」「Standard」の2つのみとし、機能面でも同等とした。ライセンスモデルも単純化されており、「Datacenter」「Standard」ともにサーバーライセンス+CAL(クライアント アクセス ライセンス)の形態を採用。1つのサーバーライセンスにつき、単一ハードウェア上の2つの物理プロセッサで利用できるため、2ソケットサーバーで物理環境のみを利用するのであれば、サーバーライセンスはどちらのエディションでも1ライセンスのみでよい。
このように共通化された部分が多い「Datacenter」と「Standard」だが、2つのエディションが異なるのは仮想化の権利の部分だ。「Datacenter」では無制限の仮想インスタンスを利用可能なのに対して、「Standard」では仮想インスタンスが2つまで制限されているため、ユーザーは仮想環境でのインスタンス利用数を考慮してどちらかのエディションを選択することになる。
Windows Server 2012ではこのほか、小規模環境向けエディション「Foundation」の提供が継続され、クラウドとの共用を考慮した中小規模向けエディション「Essentials」が新設される。後者は従来のWindows Home ServerやWindows Small Business Serverの流れをくみ、これらの製品から一部機能が継承される。なお派生製品であるWindows Storage Server、無償版のHyper-VであるHyper-V Serverについても、Windows Server 2012をベースにしたものが順次提供される予定である。
Windows Server 2012のエディション | Windows Server 2012の各エディションで動かせる仮想マシン数 |
■Windows Server 2003からの移行を推進
それでは、Windows Server 2012はどの市場を狙っていくのだろうか。
梅田氏がまず挙げたのは、Windows Server 2003からの置き換えだ。2010年にメインストリームサポートが切れ、延長サポートも2015年7月で切れるWindows Server 2003だが、まだまだ国内では多くのサーバーがこのOSで稼働している。
特に、移行がしづらいアプリケーションサーバーやデータベースサーバーなどが多く残っており、日本マイクロソフトでは、こうした環境の移行を広く呼びかけていくという。梅田氏はこれについて、「Hyper-Vの強化によって、仮想化環境でデータベースやアプリケーションなどを動かせる環境が整ったと考えており、こうした移行しづらい“塩漬け”のサーバーの移行を推進したい。また、これらよりは移行が進みつつあるファイルサーバーについても、ストレージ仮想化、重複除去の機能によってよりコスト削減が見込めるので、積極的に呼びかけていく」と話している。
なおWindows Server 2012の参考価格は、ボリュームライセンスのOpen Businessの場合、「Datacenter」のサーバーライセンスが92万5000円(税別)、「Standard」のサーバーライセンスが17万円(税別)。CALは共通で、5CAL(ユーザー/デバイス)が3万2600円(税別)となっている。