日立、ストレージソリューションの売上計画を上方修正

ビッグデータ時代における情報・通信システム事業の方針を説明


日立 執行役専務 情報・通信システム社社長の岩田眞二郎氏
ビッグデータ時代への取り組み方針

 株式会社日立製作所は7日、報道関係者やアナリストを対象に、同社の情報・通信システム事業に関する説明を行った。

 そのなかで、ストレージソリューション事業の売上高目標として、2015年には60億ドル(約4500億円、1ドル75円換算)を目指す計画を明らかにした。2011年6月に公表した50億ドル(約4000億円、1ドル80円換算)から上方修正する。

 「約4500億円の事業規模のうち、3分の1程度がビッグデータ関連の事業になる」(日立製作所 執行役専務 情報・通信システム社社長の岩田眞二郎氏)とした。

 同社では、社会イノベーション事業のリーディングカンパニーを目指すことを標ぼう。そのなかで、国内事業の強化とグローバル事業の強化により、「強い製品、サービスで評価されるグローバルカンパニー」を目標に掲げ、今後の注力分野として、融合事業、高信頼クラウド事業、ビッグデータ利活用関連事業の3点に取り組む姿勢を明らかにしている。

 2015年度における同事業の売上高目標は2兆3000億円、営業利益率8%。そのうち、海外売上高8000億円、海外売上高比率35%を目指している。

 

立ち上がり時期の“ビッグデータ”関連事業を整備


ビッグデータとは
ビッグデータ活用へのステップ

 今回の事業説明では主に、ビッグデータ利活用関連事業について言及。さらに日立データシステムズ社の取り組みについても説明した。

 日立では、現在を、ビッグデータ活用関連事業の立ち上がり時期と定義。世界規模でビッグデータの情報化、知識化による高付加価値サービスの開発が進展し、ビッグデータ活用のための各種技術が向上していることを示しながら、「今後は、ビッグデータ活用関連事業が本格化する。非構造化データを含むビッグデータの利活用を実業へと本格適用するといった動きや、ビッグデータ利活用のためのプラットフォームの高度化がみられる」などとした。

 ビッグデータの利活用は、集める・ためる「データ蓄積」、探して使う「容易な検索」、発見・予測する「分析・予測」、新たな利活用を目指す「サービス創出」のステップを踏むとし、データ蓄積では、大量のデータをスケーラブルに、効率的に格納する「インフラクラウド」、容易な検索では多様にデータを一元的に管理する「コンテンツクラウド」、分析・予測では、ユーザーとの協創によるノウハウの形式知化を図れる「インフォメーションクラウド」が活用されることになり、これらのフェーズに対して戦略的にアプローチしていく姿勢をみせた。

 日立製作所 執行役専務 情報・通信システム社社長の岩田眞二郎氏は、「ビッグデータ時代において日立は、蓄積、検索という点では、他社に先駆け市場をリードしていると考えている。その背景には、世界トップクラスの先進のストレージシステムの実績、社会インフラ事業を製造業として完遂してきたモノづくり力や社会インフラと融合したITシステムの構築実績や運用・保守ノウハウを持っている。また、研究所と一体となった開発も強みだといえる。日立は、情報から制御までをカバーし、社会インフラ事業にも知見を持っている。こうした会社は、ほかにはみられない。特に情報と制御の結びつきはそう簡単にはいかない。そこをさらに強化していく」と説明。

 「また、分析とお客さま業との関係づけを行うことでは試行錯誤を繰り返してきた。お客さまの業務をどこまで理解しているのか、それをもとに分析シーケンスをどう作り上げるのかという点でも、日立の優位性が発揮できる」などとした。


ビッグデータ活用に関する日立の強み日立のデータ分析の特徴

 流通分野や医療分野、金融・保険分野、行政分野などにおいて、ビッグデータを活用したソリューションの実績があることなどを示したほか、鉄道分野やスマートシティにおける成果などをあげ、「収集・蓄積、検索・可視化、分析・予測といった技術によって、ビッグデータの利活用による、安心、安全、快適なサービスの実現に取り組む」などとも述べた。

 また、岩田氏は、「われわれが他社と戦えるエリアを考えた結果、インフラクラウド、コンテンツクラウド、インフォメーションクラウドという3つの領域にフォーカスしている。お客さまとの結びつきが強いという点でも、力を発揮できる領域である。結果として競合他社とフォーカスする領域が同じになったが、社内的には整合性が高い判断である。だが、競合他社に比べて、利益率が低いという点も課題である。ターゲットを高いところにおき、構造的な問題を解決することで、利益率を高めていきたい」などとした。


インフォメーションクラウドによりビッグデータ利活用を実現するという社内外での英知を結集する

 

Hitachi Data Systemsの事業戦略を説明

Hitachi Data Systems CorporationのJack Domme CEO

 一方、Hitachi Data Systems Corporation(HDS、日立データシステムズ社)のJack Domme CEOは、同社の取り組みについて説明した。

 HDSは、米国サンタクララに本社を置き、日本を除く全世界100カ国以上で事業を展開。5300人の従業員数を誇り、ストレージソリューション事業の連結売上高の約9割を占めるという。現在、売上高の約半分がソフトウェア、サービス、ソリューションによるものだという。

 売上高構成比は米州が50%、欧州が30%、日本を除くアジアが20%。フォーチュン100社のうち、82%の企業で同社製品を採用。300社以上のソリューションベンダーと提携し、1万9000台以上のコントローラの出荷実績を持つという。


HDSの概要HDSの事業概況

 Jack Domme CEOは、「2011年上期は前年同期比26%増となり、8四半期連続で記録的な売り上げを達成した。第2四半期は日立のストレージソリューション事業史上、最高の売上高を達成した。HDSは、ビッグデータ、分析、情報ソリューションのリーダーであり、ビッグデータ時代に最も適したソリューションを提供する企業であるという点が、お客さまに評価されている。2011年上期は、エンタープライズストレージが40%台半ばの成長率となっており、競合他社に比べて4~5倍の成長率となっている。これは、仮想化の用途で活用されているものであり、クラウドを活用するパートナーやお客さまから、正しい技術に対して評価を得ている証しである」などと語った。

 さらに、「データは何十年間にわたって保管され、削除されるデータや検索できないデータはないといっていい。情報はいつでも、どこでも、常に存在し、永遠に存在することになる。そのためには、データが、アプリケーションに依存せず、メディアに依存しないことが必要であり、永遠に管理されなくてはならない。こうしたビッグデータ時代のあるべき姿に対して、課題を解決していく」などと語った。

 また、ファイルコンテンツ分野における技術を持つBlueArcを先ごろ買収したことについても触れ、「BlueArcとは過去5年間にわたり、パートナーシップを組んできた経緯がある。データの仮想化、統合化において、多くの成果をあげており、この買収は理にかなったものであった」などとした。


ストレージソリューション事業の実績ストレージソリューション事業の売上高目標
インフォメーションセンタへの進化を目指すという2015年度の業績目標
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