NEC、2011年度第1四半期は297億円の最終赤字~キャリアネットワークの改善などで赤字幅は縮小


第1四半期の実績
取締役執行役員兼CFOの川島勇氏

 日本電気株式会社(NEC)は28日、2011年度第1四半期(2011年4~6月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比0.2%増の6691億円、営業損益は前年の232億円の赤字から38億円改善した194億円の赤字、経常損益は405億円の赤字から108億円改善し296億円の赤字、当期純損益は431億円の赤字から134億円改善したものの、297億円の最終赤字となった。

 NECの取締役執行役員兼CFO、川島勇氏は「パーソナルソリューションやITサービスが減少したが、キャリアネットワークの増収により、売り上げはほぼ前年並み。またパーソナルソリューションやキャリアネットワークの黒字化などによって営業損益が改善した。震災の影響はプラス方向、マイナス方向に同じくらいあり、ほぼ相殺されている」と述べている。

 セグメント別の業績では、ITサービスの売上高が前年同期比2.3%減の1575億円、営業損益は17億円悪化して74億円の赤字。官公庁や医療機関向けは堅調に推移したものの、流通業や通信業向けが減収となり、トータルでも前年割れとなった。主に、SIが落ち込んでいるという。

 プラットフォームの売上高は、前年同期比0.2%減の799億円、営業損益は10億円悪化して54億円の赤字。ソフトウェアは、データセンター事業が堅調に推移したほか、サーバー統合・仮想化やクラウド基盤など、運用管理領域の伸長により増収となった。一方ハードウェアは、データセンター案件が堅調に推移したものの、大型案件が減った影響を受けて減収。企業ネットワークは逆に大型案件を獲得したため増収となっている。


ITサービス事業の概要プラットフォーム事業の概要

 キャリアネットワークの売上高は、前年同期比12.9%増の1319億円、営業損益は78億円改善し、18億円の黒字となった。国内ではLTEの立ち上がり、CATVの補正予算案件対応によって売上高が拡大したほか、海洋システムも大型プロジェクトの遂行により増収。モバイルバックホール(パソリンク)でも売り上げが回復しているという。

 社会インフラの売上高は前年同期比0.7%増の588億円、営業損益は1億円改善の4億円の黒字。航空宇宙・防衛システム分野が減少したが、放送、消防・防災など社会システム分野が堅調で、前年並みとなっている。

 パーソナルソリューションは売上高が前年同期比5.2%減の1835億円、営業損益は17億円改善して4億円の黒字。

 モバイルターミナルは、国内外でのスマートフォンの本格展開を受け、携帯電話の出荷台数は増えたが、スマートフォンへのシフトに伴って単価が下落し、売上高は前年並みとなった。「携帯電話の出荷台数は前年同期の110万台に対して今四半期は120万台半ばくらい、うち半数がスマートフォン。スマートフォンでは単価が1万円くらい下がっている」と川島氏はこの影響を説明する。

 一方のPCその他は、ディスプレイでの為替の影響、前年同期のデジタルシネマ需要の反動、PCの単価下落といった要因により、減収になっている。PCの出荷台数は60数万台で、対前年同期では微増とのこと。

 その他に関しては、売上高が前年同期並みの576億円、営業損益は6億円改善したが5億円の赤字となった。


キャリアネットワーク事業の概要パーソナルソリューション事業の概要

 

2011年度連結業績見通しは5月の発表から変わらず

2011年上期の業績予想

 2011年度の連結業績見通しは、5月10日の予想からは変更なく、売上高は前年比5.9%増の3兆3000億円、営業利益は前年から322増の900億円、経常利益は550億円増の550億円、当期純利益は275億円改善した150億円の黒字としている。

 また今回は、2011年度上期の業績予想が初めて発表された。それによると、売上高は前年同期比1.4%増の1兆4900億円、営業損益は前年同期から11億円悪化したプラスマイナスゼロ、経常損益は23億円改善して200億円の赤字、当期純損益は120億円改善して150億円の赤字。

 「上期の予想では、堅調な投資動向を背景にしたキャリアネットワークの改善などにより、前年同期比1.4%の改善を見込むが、営業損益では、戦略投資費用増などの消去・配賦不能部分が悪化し、プラスマイナスゼロを見込む。震災の影響は、第1四半期に比べると改善されるだろう」(川島氏)とした。

 また、「ITサービス事業については、震災の影響による国内IT投資の落ち込みは想定ほどではなかったが、IT投資の持ち直しは下期からを想定しており、前年並みの見込み。その中でもクラウド、グローバルでの売り上げ拡大は進めており、第2四半期だけなら前年同期比1.3%の増収を見込んでいる」とした。

 一方キャリアネットワークは、スマートフォンの急速な普及に伴うトラフィック増を背景に堅調に推移。海洋システムでの大型プロジェクトの確実な遂行や、海外でのパソリンクの好調さなどにより、上期で前年同期比12.6%の売り上げ増を見込む。

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(石井 一志)
2011/7/29 00:00