オールグリーン、純国産のリアタルタイム透過型ネットワーク評価装置を本格販売


 株式会社オールグリーン・ネットワークス(以下、オールグリーン)は、純国産のリアタルタイム透過型ネットワーク評価装置「PacketReplayer-150」の本格販売に乗り出す。これにあわせて新たに代理店を増やすなど、販売網を強化する考えだ。

 

1Gbpsのワイヤスピードでの評価を行えるPacketReplayer-150

PacketReplayer-150
オールグリーンの早水潔社長

 PacketReplayer-150は、ネットワークをモニタし、パケットデータを記録・再生する装置で、Rcap形式のパケットデータをネットワーク上に再現。1Gbpsのワイヤスピードの評価などを可能にするという。

 主な機能として、L2~L4の任意のパケットを任意のレートで送出し、受信パケットの遅延やパケット破棄率などの測定が可能な「パケットジェネレータ機能」、ネットワーク内のトラフィックから任意の条件でフィルタをかけ、モニタ出力を可能にする「パケットモニター機能」を搭載。さらに、装置内に取り込んだ最大800万のパケットを、フレームギャップを含めて再現する「パケット記録・再現機能」、ネットワーク内で発生する遅延、パケット破棄、シーケンス逆転などの現象を再現する「ネットワークエミュレータ機能」のほか、後ろ側でほかのトラフィックを送出しながら、SIPの負荷試験を行うことができるマルチフロー対応も実現している。

 「PacketReplayer-150は、いわばパケットのレコーダといえるもの。ネットワークエンジニアがフィールドで遭遇するトラブルの解析や、導入前評価を目的としたツールとして活用できる。負荷をリアルタイムに発生させたり、再現したりできることから、データセンターにおけるサーバーの導入時やIPTVの開発分野でも利用が期待できる。これだけの機能を統合した形で製品化しているのは当社の製品だけ」(オールグリーンの早水潔社長)とする。

 筐体は、300×205×35mmのほぼA4サイズ、重量は1.7kgとなっており、ネットワークエンジニアがノートPCとともに現場に持ち運んで利用することも想定した。

 10/100/1000Tを自動認識するポートを4個、パケットジェネレータ用ポートを2個、パケットモニタ用を1個、制御用ポートを1個搭載。パケット記録用バッファとして512MB×2を用意している。

 「不定期にファイアウォールがダウンする問題が発生した際に、その状況の再現や検証に時間を要する場合がある。また、導入の際に事前検証を行いたいがパケットの記録・再生や、デグレード検証できる製品がない、あるいはネットワーク機器の負荷試験、実網を使った負荷試験や遅延測定を行いたいが、パケットジェネレータ、ネットワークアナライザが高価なために利用できないといった問題が聞かれる。PacketReplayer-150によって、こうした課題を解決できる」としている。

 さらに、同製品は純国産製品という点が大きな特徴となっており、「これによって高い信頼性を実現できる」(早水社長)とする。

 独自開発のネットワーク用LSI「AGI-CAM」を搭載するとともに、CPUには、ルネサスエレクトロニクスのSH-4を採用。仕様や基本設計は、NECの半導体技術者であり、同社の創業者である小倉直志代表が直接携わり、回路設計は日立製作所で技師長を務めた同社社員が携わるなど、上流工程をすべて内製化しているほか、実装設計や製造は、東芝や日立などからの業務委託を受けている山梨県上野原市のミヤ通信工業に委託。さらに制御ソフトウェアの開発は、NECからの委託などで実績を持つ神奈川県横浜市のブリッジ・メタウェアが担当している。

 PacketReplayer-150は、2010年10月から出荷を開始し、慶應義塾大学や企業の研究所などに約10台を出荷。今後、販売網を整備することで、システムインテグレータなどを対象に拡販を図る考えだ。

 今年1月からは、同社に23%を出資しているプラネックスホールディングスの子会社、プラネックスコミュニケーションズが販売代理店となり、国内販売を開始。1月中には、東京・秋葉原のネットワーク専門店においても、展示が開始されることになる予定だ。また、今後、国内での代理店を募集し、販売網を拡大していく計画という。

 さらに、「今回の製品化に当たって23件の特許を取得しており、特許への問い合わせを通じて、海外から製品および技術を取り扱いたいという声も出ている。こうしたルートを通じて、米国、中国、韓国などでの販売を拡大したい」としている。

 価格は198万円。「今後、量産化の進展や、特定機能に絞り込んだ製品として投入することで、半額程度にまでコストダウンがはかれる可能性がある」とのこと。

 

データセンターの省電力化を実現するギガビットECOレイヤ2スイッチも開発

 また、製品化にあわせて、PacketReplayer-150に搭載しているボードを活用したギガビットECOレイヤ2スイッチを開発。同製品は、総務省のPREDICTプログラムにおいて、慶應義塾大学の研究成果を反映しており、これがPacketReplayer-150にも活用されている。

 ギガビットECOレイヤ2スイッチでは、ポートやボードごとに遠隔電源のオン/オフ機能を搭載していることから、使用状況に応じて消費電力を削減することができる。また、消費電力の監視なども可能になる。

 「データセンター内のサーバーの電源を落としても、ケーブル内には電流が流れている。ポート単位でこれを削減できることから、約15%の省電力化を実現可能。ボード単位とすることで20~30%の削減が可能になる」としている。

 

純国産による信頼性、耐性の高さにこだわった

 オールグリーンは、1999年8月にテルミナステクノロジーとして設立。インターネットおよびマルチメディア機器用の半導体開発でスタート。2007年に現社名に変更し、同半導体を活用した装置の設計、開発、販売を開始した。

 社長の早水氏は、NECでオフコン、パソコン事業に長年携わった人物で、1981年のPC-9800シリーズの発売時には、独立系ソフトウェアメーカーとの橋渡し役を務め、PC-9800シリーズ用ソフトウェアの品ぞろえ拡大を陣頭指揮。その後、国内パソコン市場において50%を超える圧倒的シェア獲得に向けた礎を築いた。その後、日本DECやフォーバル・クリエーティブでネットワーク事業などに関与した経験を持つ。

 「これまでの長年の経験を踏まえ、純国産による信頼性、耐性の高さにこだわった。すべてを日本で開発、生産するという強みを生かし、エンジニアに安心して使ってもらえる製品だと考えている」としている。

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(大河原 克行)
2011/1/21 12:43