シスコ、アプリを高速化する新サービス「Application Velocity」

スイッチ、ルータほかボーダレスネットワークの製品ポートフォリオも拡充


専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は26日、ボーダレスネットワークアーキテクチャの新たな構成要素として、アプリケーションのパフォーマンスを高速化するサービス「Application Velocity」を発表した。あわせて、ボーダレスネットワークの製品ポートフォリオを拡充し、スイッチ、ルータ、セキュリティ、モビリティ関連製品において、高性能・高密度を実現する新製品群を発表した。また、顧客のネットワークに対する投資価値を高めるテクニカルサービス「smart services」も強化した。

 「Application Velocity」の発表にあたり、専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏は、「ボーダレスネットワークは、クラウド時代に向けて、データセンターだけでなくキャンパス、ブランチ側まで含めたエンドトゥエンドの新しいネットワーク基盤を提供するもの。今年3月のフェーズ2では、エンドポイントの仮想化を実現するソリューション『セキュアボーダレスネットワーク』を提供した。そして今回、フェーズ3として、アプリケーションの仮想化にフォーカスしたソリューションを投入する。これにより、アプリケーションの物理的な場所にかかわらず、的確なユーザーが目的のコンテンツに安全にアクセスできるネットワーク環境を実現することができる」と説明している。

ボータレスネットワークアーキテクチャのロードマップ「Application Velocity」の概要

 ボーダレスネットワークアーキテクチャの主要な構成要素となる「Application Velocity」は、仮想化およびアプリケーション対応ネットワークのパフォーマンスを高速化する新たなネットワークサービス。第2世代サービス統合型ルータ「Cisco ISR G2」をプラットフォームに、さまざまな独自技術を導入することで、アプリケーションの可視化や制御性の向上、アプリケーション高速化、およびWAN最適化の迅速で広範囲な導入、そしてアプリケーションの信頼性向上をサポートする。

 主な独自技術としては、「Cisco WAAS Express」、「Cisco WAAS on the ISR G2 Services-Ready Engine(以下、Cisco WAAS on SRE)」、「Cisco Unified Computing System Express(以下、Cisco UCS Express)」を導入している。

 「Cisco WAAS Express」は、Cisco IOSソフトウェアをベースとした新しいWAN最適化ソリューション。TCP最適化、ペイロードの圧縮と送信データの冗長性排除をサポートするほか、利用可能な帯域を2倍に広げ、アプリケーションのパフォーマンスを向上する。

 「Cisco WAAS on SRE」は、統合型ルータ、オンデマンドのアプリケーション高速化とWAN最適化サービスで構成され、企業のブランチオフィスのリソース集約型アプリケーションを最適化する。

 「Cisco UCS Express」は、シスコのユニファイドコンピューティングシステムアーキテクチャをデータセンターからブランチまで拡大し、エンドツーエンド仮想化を実現する。これにより、専用サーバーを使用することなく、VMware vSphere HypervisorやMicrosoft WindowsサーバーをCisco ISR G2 SREモジュール上で稼働できる。

 また、同社は、「Application Velocity」の発表にあわせて、ボーダレスネットワークの製品ポートフォリオ拡充を実施する。今回のポートフォリオ拡充では、スイッチからルータ、セキュリティ、モビリティ関連製品まで、ボーダレスネットワークアーキテクチャを構成する全製品において、高性能・高密度を実現する新モデルをラインアップする。

「Cisco Catalyst 4500 Eシリーズ スイッチ」の概要Cisco Catalyst 4500 Eシリーズ「Catalyst 4507R+E」

 スイッチ製品の新モデル「Cisco Catalyst 4500 Eシリーズ スイッチ」は、モジュラ型プラットフォームで、システムあたり848Gbpsのシステム帯域幅と最大384PoEP対応ポートの高密度を実現し、キャンパススイッチのパフォーマンスレベルを向上した。さらに、新しい「Supervisor Engine 7-E」により、10G 100ポートのアグリゲーション型スイッチとして、1Gファイバーから10Gファイバーへの市場の移行を促進する。

 ハードウェアで高速処理されるCisco Medianet、Cisco EnergyWise、Cisco TrustSecなどのボーダレスネットワークサービスを完全装備するほか、今回、Cisco IOS XEソフトウェアの搭載によってサードパーティサービスの提供が可能となった。また、インサービスソフトウェアアップグレード(ISSU)機能を活用して、10ミリ秒未満のスーパーバイザーフェールオーバーというクラス最高水準の障害復旧能力と、Cisco IOS Flexible NetFlowによるアプリケーションの可視性向上も実現している。

「Cisco ASA 5500シリーズ」のポートフォリオCisco ASA 5585-X

 セキュリティアプライアンス製品の新モデル「Cisco ASA(Adaptive Security Appliance)5585-X」は、コンパクトな2RUフォームファクタでマルチスケールパフォーマンスを実現する。最大のファイアウォールパフォーマンスで20Gbpsのマルチプロトコルスループットと、35Gbpsのラージパケットスループットのサポートに加え、1万同時VPN接続、秒間35万コネクション、最大で800万同時コネクションの処理が可能となっている。また、業界最高水準の侵入防御システム(IPS)とCisco AnyConnectによるAlways-onリモートアクセスをサポートする。

 ルータ製品の新モデル「Cisco ASR 1001ルータ」は、業界最小の1RUのエッジルーティングソリューションで、このサイズでは最高水準のハイパフォーマンスを備えている。サービス稼働時で最大5Gbpsのスループットを実現し、ハイエンドなエンタープライズブランチ、WANエッジ、マネージドサービス環境での迅速な展開が可能となる。ハードウェアの追加を必要とせずに2.5Gbpsから5Gbpsにパフォーマンスをアップグレードできるほか、各種サービスの追加もオンデマンドで行える。

 アクセスポイント製品の新モデル「Cisco Aironet 1040シリーズ アクセスポイント」は、同社の新しいモビリティ製品。中小企業向けのエントリーレベルながら、エンタープライズクラスのパフォーマンスを実現した802.11nワイヤレスアクセスポイントとなっている。

「Cisco AnyConnect」の概要シニアマネージャ プロダクトマネージメントの大木聡氏

 このほか、エンドユーザーセキュリティのためのソフトウェア「Cisco AnyConnect」を「3.0」にバージョンアップ。「新バージョンでは、SSLとDTLS、無線&有線LAN対応の802.1Xサプリカントおよび802.1AE MACsecに加え、IPsec IKEv2もサポートし、ネットワーク上のエンドポイントのセキュリティをさらに強化した。また、クラウドセキュリティサービスを提供するScanSafeに対応することで、ハイブリッド型のセキュアモビリティもサポートし、モバイルワーカーを保護する。さらに、Apple OSXやApple iOS、Windows 7などのモバイルプラットフォームにも対応している」(シニアマネージャ プロダクトマネージメントの大木聡氏)という。

 なお、顧客のネットワークに対する投資価値を最大に高める次世代サービス群「smart services」も強化した。新サービスの「Cisco Smart Net Total Care Service」では、ボーダレスネットワークアーキテクチャを目指すサービスプロバイダやエンタープライズ、金融の顧客に対応可能なITテクニカルサービスを提供する。独自手法でネットワークの状態を的確に把握し、運用効率の向上とリスクの低減、サポート費用の低減に能動的に対処する。

関連情報
(唐沢 正和)
2010/10/26 17:34