グリーン・グリッドのデータセンター省エネアワード、最優秀賞は日立に
富士通とIDCフロンティアも受賞
グリーン・グリッド 日本技術委員会代表の田口栄治氏 |
左から、優秀賞を受賞した富士通の秋吉善博氏、最優秀賞を受賞した日立の渡部芳邦氏、特別賞を受賞したIDCフロンティアの山中敦氏 |
グリーン・グリッドは18日、日本国内の既存データセンターを対象に、エネルギー効率化に取り組む団体・企業を表彰する「グリーン・グリッド データセンター・アワード」の受賞企業を発表した。国内で初開催となる今回、最優秀賞に日立、優秀賞に富士通、特別賞にIDCフロンティアが輝いた。
同アワードは、データセンターのエネルギー効率化活動を評価するもの。2009年に英DatacenterDynamicsが欧州でスタートし、今回が日本での初開催となった。グリーン・グリッドが推奨するエネルギー効率化の指標「PUE(電力仕様効率)」「DCiE(データセンター施設の電力効率)」の継続的な改善をはじめ、ベストプラクティスの公開といった業界への貢献度などが評価基準となる。
選考はグリーン・グリッドのほか、DatacenterDynamicsや、グリーンIT推進協議会、日本データセンター協会で構成されるアワード実行委員会が実施。その結果、日立が最優秀賞、富士通が優秀賞、IDCフロンティアが特別賞を受賞した。
なお、審査委員会を務めるDatacenterDynamics 最高技術者&ディレクターのスティーブン・ウォン氏は「世界中で数百というエントリーを見てきたが、日本はいずれもファンタスティックで選考が難しかった」と発言。今回の応募総数は8社だったが、グリーン・グリッド 日本コミュニケーション委員会代表の坂内美子氏も「いずれも予想以上に素晴らしい内容だった」と質を評価する。
同アワードは2011年以降も国内開催する予定だ。坂内氏は「周知やメディア露出などを高めて、より大々的に2~3倍のスケールで実施していく」と早くも意気込みを見せている。
■「先進性」が評価されたIDCフロンティア
特別賞を受賞したIDCフロンティアは、北九州のアジアン・フロンティアでの取り組みが評価された。2年前にオープンしたデータセンターで、商用としては初めて外気空調を採用し、かつ大規模な敷地の中にモジュールを段階的に設置する、新しい構築手法を用いている。この先進性が評価された形だ。
IDCフロンティア 業務本部 業務管理部 経営企画グループ リーダーの山中敦氏は「アジアン・フロンティアは当社にとっても新たな取り組みだったが、経産省の指導などを受けながら、さまざまな実験を繰り返した結果、外気冷却の安全性、省エネ性を実証することができた。また、設計・構築・運用の現場が一致団結して会社として新たな機会となった。今後も取り組みを継続して、クラウドサービスなどに活用していきたい」と受賞に対してコメントした。
■「空調の改善」などが評価された富士通
優秀賞を受賞した富士通では、IT機器と空調機器の両輪でエネルギー効率化に取り組み、エネルギー使用状況をPUE算出しグラフ化する仕組みを構築。特に空調に関する最先端の技術により、目に見える形で即効性のあるPUE改善を実現したという。こうした管理面での活動が評価された。グリーン・グリッドによれば「グリーン・グリッドの思想に、管理のためにはメジャーが不可欠、ベストプラクティスを生み出すことが重要、というものがある。富士通の活動は、まさにその精神と一致していた」という。
富士通 アウトソーシング事業本部 グリーンデータセンタープロジェクト室員の秋吉善博氏は、「データセンター事業では、エネルギー効率の傾向を掴み、きちんと改善することが重要。設備だけでなく、エネルギーの専門部隊や技術部隊と一丸となり、熱だまりの解析などから空調の改善を行ってきた。当社では館林システムセンター新棟を公開したばかりで今年はそちらに注目が集まっていたが、今回のアワードでは日々の地道な改善活動が評価され、現場一同とても喜んでいる」とコメントした。
■「全社的な活動」が評価された日立
最優秀賞を受賞した日立は、「データセンタにおけるエネルギー効率化のスパイラルアップ」というプロジェクトが評価された。ほぼリアルタイムにPUEを計測し改善に努め、エアフローの見える化や外気温に連動した空調制御の仕組みなど、ユニークな取り組みを展開。実際に多大な効果を上げたことが評価されたほか、「全社的な取り組み」が最優秀賞の決め手となった。
グリーン・グリッド 日本技術委員会代表の田口栄治氏は「外気温に連動して内部の空調を制御するなど、日本人でないとできないであろう巧みの技が光っていた。が、それ以上に5年間で消費電力を50%に削減するなど、全社的な戦略として取り組んでいる点が印象的だった」と選考のポイントを述べている。
日立 ITサービス事業部長の渡部芳邦氏は「昨今、データセンターの役割はますます広がり、ビジネスに直結する要素になってきている。当社グループとしては、2007年から5年間で消費電力を50%にするCoolCenter50を推進し、順調に成果が出ている。さまざまなデータを収集・見える化し、PUEの指標でリアルタイムに評価する。そこで浮き彫りになった問題にグループ一体で取り組んできた。それに応じて、技術開発も進めてきたが、それらの活動が認められたのは光栄の極み。今後もこの受賞に恥じぬ活動を続けていきたい」とコメントした。