「パートナー拡大やクラウドに注力」、シマンテック河村新社長が戦略語る


代表取締役社長の河村浩明氏

 株式会社シマンテックは8日、戦略説明会を開催。5月に同社、代表取締役社長に就任した河村浩明氏が4つの重点施策などを説明した。

 河村社長はまずサイバーアタックの現状について、「ますます深刻化している。データ漏えいによる1年間の被害額は60兆円。麻薬市場を超えるほどになっている。さらにiPadなどの多様な端末が増えるにつれ、サイバー犯罪者にとって攻撃のターゲットが増えることになり、ますます危険な状況になるだろう」と予測。

 また、クラウド化の流れについては、「企業がITを所有から利用する時代へ移り、新しいメディアや端末のビジネス活用で、データ量やトランザクションも爆発的に増加していく。一方、企業のIT投資は、従来のハードウェアやソフトウェア、保守などが削減され、代わりにクラウドサービスやハイレベルサービスに投資が流れ込む」と言及した。

 クラウド化はすなわち「システム中心」から「情報中心」への移行である。これに対してシマンテックの強みは、「セキュリティ、データ保護、ストレージ管理という3つの領域で相乗効果を狙える点だ」(同氏)。

 さらに「世界最大級のグローバルインテリジェンスネットワーク(1億3000万台のPCを監視)」「パートナーエコシステムを形成するディストリビューションモデル(国内売り上げの7割ほどを占める)」「日本市場に特化したエンジニアリング(現在、国内人員50名ほど)」(同氏)も付け加え、これらの強みを基に展開する2010年度の戦略を説明した。

 重点施策として挙げたのは、1)パートナーにおけるシマンテックシェアの向上、2)OEMパートナーへのエンベデッドソリューション、3)Big Enterpriseにおけるビジネス強化、4)クラウドサービスプロバイダ(CSP)の4つ。

 1)については、「リセラーカバレッジの強化」「テクニカルコミュニティの増強」「新パートナープログラム」でシェア向上を図る。

スペシャリゼーションプログラムを順次拡充

 同社パートナープログラムの「SPP」では、2009年より開始している特定分野に特化した「スペシャリゼーション」プログラムを拡充する。すでに「Endpoint Management」「Data Loss Prevention」「Archive and eDiscovery」「SMB」に特化したプログラムがスタートしているが、さらに「Foundational Enterprise Security」「IT Comliance」「Storage Management」「Data Protection」「High Availability」に関しても、7月より順次開始。「さらにSPP自体のパートナーレベル基準そのものを新しいものに変える方針。具体的な要件については検討中だが、2010年10月~12月には内容を発表し、2011年4月~6月より全面運用をスタートさせる」(同氏)としている。

 2)については、すでに富士通のサーバー製品にスケーラブルファイルサーバー製品「FileStore」を搭載するなど、さまざまなOEM供給を行っているが、さらにストレージ仮想化やアーカイブ&統合バックアップなどOEMパートナーとの連携を強めていく。

 3)については、「パートナーエコシステムの浸透を図り、製品提供からプラットフォーム提供へシフトする」(同氏)と説明。最近の同社製品スイート化もこの流れをくんだ施策となる。

クラウドに向けた施策

 4)については、「プライベートクラウドの安全な管理」「パブリッククラウドのインフラ支援」「シマンテックによるクラウドサービス提供」の3点に注力。

 プライベートクラウドの安全な管理では、法令順守、安全性、信頼性を高める製品を企業向けに提供するもので、特に「仮想環境におけるデータバックアップ(NetBackup/Backup Exec)」と「高可用性の実現(Veritas Cluster Server)」を管理の課題として挙げ、VMware/Microsoft/Citrixなどの仮想化ソフトベンダーと協力して解決していく方針だ。

 一方、パブリッククラウドのインフラ支援では、クラウドサービス事業者に、顧客企業のデータをシームレスに暗号化・重複排除・バックアップする仕組みを提供。「当社の技術をコンポーネントとしてパートナーへ提供し、課金などの必要な他社コンポーネントと組み合わせてSaaSスターターパッケージを作成。クラウドサービス事業者が迅速・安価にビジネスを開始できるよう支援する」(同氏)。

 これら4つの重要性を強調しつつ、河村社長は「当社は垂直統合型の戦略ではなく、水平展開型の戦略にて事業を展開する。そこで重要となるのが、パートナーエコシステム。これを順調に構築していけるかが、シマンテックが今後生き残っていけるかを左右する大事なテーマ。パートナーに少しでも多くシマンテックファンを作り、顧客に強力な価値と豊富なチョイスを提供できるよう地盤を固めていく」とまとめた。

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