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富士通の2017年度第1四半期連結決算、増収増益で2014年度以来の黒字に

 富士通株式会社は27日、2017年度(2017年4月~6月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比2.5%増の9226億円、営業利益は前年同期の137億円の赤字から49億円の黒字に転換。税引前利益は155億円の赤字から74億円の黒字に、当期純利益は140億円の赤字から21億円の黒字に転換した。第1四半期の黒字化は、2014年度第1四半期以来となる。

2017年度第1四半期の連結業績

 富士通 代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏は、「業績は『普通』であった。計画通りであり、想定したものが想定した通りに出てきている。改善効果も実感として持っている」とコメント。

 「売上高は、為替と再編影響を除いた実質ベースではプラス。国内サービス、ユビキタス、ネットワーク、LSIが伸長し、これで380億円の増収。また、円高の影響で30億円の減収。さらに、ニフティのコンシューマ事業が連結対象外となり、130億円の減収影響があった。そのほか、海外子会社の法的紛争手続きにより利益に90億円のマイナス影響がある。これはペナルティーではなく、もくろんでいた費用の回収ができなかったもの。だが、ニフティのコンシューマ事業売却影響を除くと、すべてのセグメントで増収となった。このほか、次世代クラウドの先行投資を拡大している」と総括した。

富士通の塚野英博代表取締役副社長兼CFO

【お詫びと訂正】

  • 初出時、塚野氏の肩書きを誤って掲載しておりました。お詫びして訂正いたします。

セグメント別業績

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年並の6726億円、営業利益は前年同期比26.3%減の52億円。ニフティのコンシューマ事業が連結対象外となり、減益影響はあるものの、国内でサービスおよびネットワークが伸長し、全体では前年並となった。

 そのうちサービス事業の売上高が前年同期比0.7%減の5742億円、営業利益が同44.5%減の83億円。また、サービス事業のうち、ソリューション/SIの売上高は前年同期比3.5%増の2189億円、インフラサービスの売上高は同3.1%減の3553億円となった。システムプラットフォームの売上高は同4.1%増の1353億円、営業利益は前年同期から48億円改善したものの30億円の赤字。そのうち、システムプロダクトの売上高は前年同期比5.8%減の501億円、ネットワークプロダクトの売上高は同16.9%増の482億円となった。

 「ソリューション/SIは、金融分野の大規模プロジェクトや公共分野のマイナンバー商談の開発ピークアウトなどの減収影響があったが、製造、流通、サービスなどの幅広い業種でカバーし、高い水準にあった前年実績をクリアした。また、国内がアウトソーシングを中心に好調に推移。デジタルビジネスの拡大に向けてSE部門の体制見直しを行い、それに伴い教育投資を強化している。海外は前年度第4四半期にビジネスモデル変革費用を投資し、それにあわせたリソースシフトを実施している段階にある。上期中は厳しい状況になるが、下期には効果につなげたい」とした。

 また、「システムプロダクトは、国内でのメインフレームが増加し、高採算であることから収益面でも貢献。だが、前年同期に好調のIAサーバーが低調になった」という。

事業別セグメント情報
テクノロジーソリューション
テクノロジーソリューション(サービス)
テクノロジーソリューション(システムプラットフォーム)

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比16.2%増の1540億円、営業利益は159.2%増の55億円。

 「PCは、狭額縁大画面といったデザイン性を高めたデスクトップや、世界最軽量とともに堅牢性の高いノートPCなど、差別化した製品が市場に受け入れられ、個人向けを中心に伸長。法人向けPCも堅調して増収となった。PC事業は黒字化している。携帯電話はミドルレンジスマートフォンやらくらくスマホシリーズが増加して増収となった」とした。また、「PC、スマホともに、メモリなどの部材の市況価格が上昇しているのに加えて、ドル建て購入が多いため、これも部材価格の上昇に影響した。しかし増収効果により、これをはね返して増益になった」という。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比4.1%増の1353億円、営業利益は前年から46億円増の34億円となり黒字転換した。そのうち、LSIの売上高は前年同期比9.3%増の696億円、電子部品は同0.9%減の659億円。スマートフォン向け製品の所要増に加えて、為替の円安効果もありLSIを中心に増収になった。

ユビキタスソリューション
デバイスソリューション

通期業績見通しは据え置き

 一方、2017年度(2016年4月~2017年3月)通期業績見通しは据え置き、売上高は前年比0.8%減の4兆1000億円、営業利益は同57.5%増の1850億円、当期純利益は同63.9%増の1450億円とした。

業績見通し
セグメント別の業績見通し

 富士通の塚野英博取締役執行役員専務兼CFOは、「第1四半期には、ネットワークにおいて、国内の基地局が前年から伸長したが、国内および北米ともに他社との競合の激しさが増している。下期に北米での新機種立ち上げにより売り上げ増を計画に織り込んでいるが不透明感がある。また、PC、携帯電話、LSIともに所要が増加している。この状況が今後も継続することを期待しているが、ボラタリティの高いビジネスであり、急激な市場環境の変化に注視していく。一方でビジネスモデル変革による体質改革を実行していく」とした。

 また、「国内ビジネスでは、2022年~23年までは右肩上がりの状況が続くだろう。国内は盤石であると考えている。東京オリンピックに向けた流れもあり、設備投資意欲が高く、AIやセキュリティにも関心が高い。また、2025年の万博の誘致もある。問題は、3分の1を持っている海外ビジネス。海外での利益貢献をどうするのかが課題になる」とした。

 なお、レノボとの事業統合を前提とした提携については、「心配をおかけし、お待たせして申し訳ない。だが、粛々と進んでいる。市場が世界全体に及んでいるため、その点を両社でしっかり協議しながら、ひとつの事業から最大の価値を生み出していくことを目指している。壊れてしまうのではないかという指摘もあるが、これは壊れない。それほど時間はかからないと見ている」と話す。

 また、「仮に、これができなくなったとしても、長期的に見れば、PC事業は、スケールを模索する事業であり、いまのままで、その水準にまで引き上げることは難しい。仮に、国内だけでPC事業をやるということにしても、生き延びる時間は長くなるが、しょせんは有限の時間である。より強くなるための方策は見つけなくてはならない」と発言。同社幹部が、「仮に」という言葉を使って、レノボとの事業提携の進ちょくについて説明したのは今回が初めてのことだったが、「あくまでも仮にということで話しただけの話であり、無くなるものではない。『できあがる』といえる」とした。

 さらに、「もともとの計画は、2015年度にプランを策定し、2016年度に実行し、2017年から新たなポートフォリオでやっていきたいというのが理想であったが、これが約半年遅れになっている」と述べた。