ニュース

2017年の国内IT市場、事業部門によるIT支出は全体の約3割にあたる3兆7697億円~IDC Japan調査

 IDC Japan株式会社は13日、国内IT市場におけるLOB部門(事業部門:Line of Business)の支出について、産業分野別・企業規模別の動向分析結果を発表した。

 調査は、国内IT支出について、支出元がIT部門(IT Funded)であるか、事業/業務部門(Business Funded)であるか、という観点で分析を行ったもの。Business FundedにあたるLOB部門によるIT支出動向を、17の産業分野別と4つの従業員規模別に分析し、さらにに研究開発やマーケティングなど12の職務機能別に分析している。

 2017年の国内IT市場におけるLOB部門による支出(IT Funded)は、全体の32.1%にあたる3兆7697億円、IT部門による支出(Business Funded)は全体の67.9%、7兆9562億円と予測。それぞれの2015年~2020年の年間平均成長率は、IT Fundedが1.3%、Business Fundedが3.1%と予測している。

国内IT市場 支出元別 支出額予測、2016年~2020年(出典:IDC Japan)

 国内企業においては、事業部門のIT支出が進む業務領域がある一方で、IT部門が標準化を進め、ガバナンス強化を図る領域が共存する構図があると分析。また、IT部門とLOB部門が連携し、新たなIT活用やビジネスモデルの展開が推進され、両部門が対峙するのではなく、共同で推進するITプロジェクトが今後増加するとしている。

 産業分野別では、組立製造、プロセス製造、小売、情報サービス、建設/土木分野において、LOB支出の割合が高い。

 製造業と建設業においては、エンジニアリングおよび産業固有のオペレーション業務領域のソリューション導入の決定権が事業部にある傾向が強く、小売と情報サービスにおいては、マーケティングやカスタマーサービス、営業支援の領域を中心に、事業部門が主導的に導入する傾向が強いことが背景にあるとみている。

 企業規模別では、従業員規模100人未満の小規模企業が最も事業/業務部門IT支出の比率が高く、7割前後で推移。この割合は企業規模が大きくなるにつれ徐々に減少し、従業員規模1000人以上の大企業においては、IT部門による支出が7割以上を占めると予測してる。

 また、最もLOB支出の割合が高い職務機能は、エンジニアリング/アーキテクチャ/リサーチ、マーケティング、営業、サプライチェーンで、IT支出全体の4~5割を占め、特にLOB主導でシステム選定と導入が進められていく業務領域であると分析している。

 IDC Japanでは、昨今、IoTやコグニティブ/AIシステム、AR/VRをはじめとするイノベーションアクセラレーターの取り組みにおいて「実証実験で終了し、その先に進まない」ことが課題として挙がっていると指摘。そこれらのプロジェクトが、事業部門単独でIT部門や他部門の積極的な関与なく、小規模に実施されていることと関連しているとしている。

 IDC Japan ITスペンディング シニアマーケットアナリストの岩本直子氏は、「実証実験をLOB部門と共に進めるITサプライヤーは、そのプロジェクトが継続的な価値を企業にもたらし、顧客が目指すデジタルトランスフォーメーションの実現に貢献するためには、実証実験の提案段階から、ユーザー企業の組織内でのビジビリティ(可視性)を高める支援を含めるべきである」と分析している。