ニュース

複数クラウド/ネットワークにまたがる仮想ネットワークインフラを容易に構築・運用、富士通研が新技術を開発

 株式会社富士通研究所(富士通研)および米Fujitsu Laboratories of America(FLA)は7日、複数のクラウドや企業ネットワークにまたがる仮想的なネットワークインフラ(以下、仮想ネットワークインフラ)について、設計・構築・運用を容易にする技術を開発したと発表した。

 従来、1つのクラウドや企業の拠点などであれば、ユーザーの要求するネットワークの設計図(以下、論理ネットワーク)をもとに、SDN(Software Defined Networking)技術を用いることで、比較的容易に仮想ネットワークインフラを構築できた。

 しかし、複数のクラウドや拠点をまたがって仮想ネットワークインフラを構築しようとすると、それぞれのSDNコントローラの設定方法が異なること、各ITインフラ間を接続するために、VPNやVXLANなどの仮想ネットワークインフラが介在し、専門的なネットワークの知識が必要になることなど、高度な知識を持つエンジニアが、時間をかけて対応せざるを得なかったという。

複数のクラウドサービスにまたがる仮想ネットワークインフラを作る場合の課題

 今回両社では、これを解決するために複数の技術を開発した。まず、ITインフラを構成する各要素の設定や動作状況の観測機能について、ネットワークの構成要素を模した論理的なソフトウェア部品と対応づける技術を開発した。これにより、設計された論理ネットワークから、複数のITインフラをまたいで自動的に仮想ネットワークインフラを構築できるようになる。

 加えて、仮想ネットワークインフラの運用や障害対応管理についても論理ネットワーク上で行えることから、設計、構築、運用、障害対応といった仮想ネットワークインフラのライフサイクル管理を、論理ネットワーク上で実現できるとのこと。

ITインフラの抽象化技術の概要

 もう1つの技術は、仮想ネットワークインフラの設計において、論理ネットワークの接続状況から設計者の意図を抽出し、論理ネットワークから仮想ネットワークインフラに変換するのに必要な仮想ネットワーク機能を自動で補完する技術。設計された論理ネットワークにおける構成要素の接続部分に着目し、接続の両端に位置する、ITインフラ、サブネットやノードといった異なるレベルのオブジェクトの接続を確認することで、設計者の意図を判別し、必要となる仮想ネットワーク機能を自動的に補完する。

仮想ネットワーク機能自動補完技術

 これらの技術を活用すると、複数の企業や拠点にまたがる複雑な仮想ネットワークインフラの構築を、専門的な知識なしに短時間で行えるようになる。例えば、1つのクラウドと、端末が数十台規模の拠点にまたがった仮想ネットワークを設計・構築する場合、従来は仮想ネットワークの専門知識を持つエンジニア4人×3日かかっていたというが、新技術を用いることで、エンジニア1人×1日で完了できるようになるため、10分の1以下に構築時間を短縮できるとしている。

 また、この技術をクラウド移行へ適用することも可能で、業務システムをクラウドへ移行する場合に、論理ネットワーク上での操作を行うだけでクラウドマイグレーションを短時間で実現できるようになる

 なお富士通研とFLAは、この技術を用いて論理ネットワークでライフサイクル管理を行うための他機能の開発を進め、2017年度以降に、富士通株式会社のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」上で、企業ユーザー向けのネットワーク管理機能として商用化する予定。