ニュース

日立、2016年第3四半期の連結決算を発表 通期予想の営業利益を上方修正

 株式会社日立製作所(以下、日立)は1日、2016年度第3四半期(2016年4月~12月)連結業績を発表した。売上収益は前年同期比9.8%減の6兆5193億円、営業利益は同8.6%減の3731億円、税引前利益は同10.9%減の3569億円、当期純利益は同10.6%増の1912億円となった。

2016年第3四半期の連結決算の概況

 日立の代表執行役執行役専務兼CFOの西山光秋氏は、「売上高では、日立キャピタルや日立物流、空調事業による事業再編の影響のほか、為替で4600億円のマイナス影響があった。だが、それを除くと、売上高で2821億円の事業を拡大があった。また、収益性改善効果は658億円。為替の影響や事業再編の影響は大きいものの、これを除くと、9セグメントすべで増益になっている。営業利益率は5.7%と前年同期から0.1ポイント上昇している。グローバル企業に比べるとまだまだだが、構造改革の効果、低収益事業の改善という点での手応えを感じる。この勢いを2017年度につなげたい」と総括した。

日立の代表執行役執行役専務兼CFOの西山光秋氏

 国内売上収益は前年同期比9%減の3兆3005億円、海外売上収益は同11%減の3兆2187億円。海外売上比率は49%。海外売上収益は、為替の影響を除くと、前年同期比5%増となっており、「特に欧州において、鉄道事業がけん引しており、欧州の売上高は為替影響を除くと前年同期比16%増になっている」とした。

事業部門別の業績

 事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年同期比7%減の1兆3973億円、調整後営業利益は前年同期に比べて142億円増の917億円、EBITは同190億円減の515億円となった。

部門別の業績概要

 減収要因は、海外子会社における為替影響に加え、海外ATMの販売が減少したことが影響。増益は、通信ネットワーク事業を中心とした事業構造改革の効果に加えて、社会インフラ分野向けシステムの収益性改善などが影響した。

 「情報・通信システムの増益は、プロジェクトマネジメントの改善、構造改革の成果によるもの。金融、公共などが貢献している。メガバンクの統合やマイナンバー需要などが、2014年度でピークアウトすると考えていた。だが、金額は減少しているものの、社会インフラ分野への取り組みなどを通じて堅調である」と語った。

 また、組織改革のなかで、ICT事業統括本部のITプラットフォーム開発機能とサービス&プラットフォームビジネスユニットを統合し、サービス&プラットフォームビジネスユニットを新設。同じく同事業統括本部の社会インフラ分野向けシステムインテグレーション機能を公共ビジネスユニットに統合し、公共社会ビジネスユニットとすることを発表。「ICTとIoTの開発に携わるプラットフォームを統合し、Lumadaを中心としてグローバルで一体運営をしていくことを目指す」とした。

 なお、IoTプラットフォームである「Lumada」は、2016年12月時点で、190件のユースケースがあり、「流通・小売業向けの冷蔵庫温度監視や、製造業向けクレーン設備監視などのソリューション中心に、第3四半期だけで20件増加した」という。

 2016年度中には200件のユースケースの獲得を目標にしているほか、Lumadaのグローバル展開の加速に向けて、各ビジネスユニットに「Chief Lumada Officer(CLO)」を設置。「一般的に、Chief Digital Officerと同様の取り組みを行う役割。社外に対するIoTソリューションの提供だけでなく、社内でもLumadaを活用することで収益性を高める。自社工場においても、Lumadaを活用しており、コスト低減の効果があるが、受注増にどれぐらいつながっているのかどうかは不明である。来年度の予算計上のなかで貢献度を推し量り、KPIとして出したい。Lumada関連事業を加速していきたい」とした。

事業ポートフォリオ改革とLumadaの展開状況
成長戦略に向けた事業体制の強化

 一方、社会・産業システムの売上収益が前年同期比5%増の1兆5876億円、調整後営業利益が前年同期から19億円減の340億円。電子装置・システムの売上高は前年同期比1%増の8178億円、調整後営業利益は前年から86億円増の525億円。

 建設機械の売上高は前年同期比8%減の5070億円、調整後営業利益は前年同期から42億円減の101億円。高機能材料は売上高が前年同期比10%減の1兆673億円、調整後営業利益は前年同期から52億円減の879億円。

 オートモーティブシステムの売上高は前年同期比2%減の7231億円、調整後営業利益は前年同期から57億円減の353億円。生活・エコシステムの売上高は前年同期比22%減の4207億円、調整後営業利益は前年同期から54億円減の121億円。

 その他(物流・サービスなど)の売上高は前年同期比47%減の4964億円、調整後営業利益は前年同期から193億円減の193億円。金融サービスの売上高は前年同期比34%減の1792億円、調整後営業利益は前年同期から131億円減の213億円となった。なお、金融サービスは、日立キャピタルを持分法適用会社としたため、第2四半期までの実績となっている。

通期業績見通しは営業利益を上方修正

 2016年度の通期業績見通しは、2016年10月公表値に対して、営業利益で200億円増の5600億円とした。その他項目については据え置き、売上収益が前年比10.3%減の9兆円、税引前利益は同16.8%減の4300億円、当期純利益は同16.2%減の2000億円とした。なお、セグメント別での修正を行っている。

 情報・通信システムは、売上収益は2兆400億円、調整後営業利益は1430億円と据え置いたが、EBITでは90億円減の750億円とした。「構造改革費用の追加によるもの」と説明した。

部門別の通期業績見通し

 一方、成長戦略実現に向けて事業体制を強化。14ビジネスユニットおよび生活・エコシステム事業、オートモーティブ事業を、シナジー創出の観点から、「電力・エネルギー」、「産業・流通・水」、「アーバン」、「金融・公共・ヘルスケア」の注力4分野に再整理し、それぞれに担当副社長を配置。「注力分野全体をリードすることになる。大きくくくり直すことで、より大規模なM&Aにも取り組みやすくなる」などとした。

 さらに、日立コンサルティングのCEOであるHicham Abdessamad氏が、「米州」、「アジア・パシフィック」、「欧州・ロシア・中東」の3地域における社会イノベーション事業をけん引。「Chief Lumada Officer」の設置のほか、次の成長に向けた投資戦略を立案する「投融資戦略本部」と、中長期的な新事業創出を担う「未来投資本部」を新設することも発表した。未来投資本部では、ロボットやAI、コネクテッドモビリティなど、次世代テクノロジーの潮流や、社会変化の動向をとらえた中長期的な強化分野の検討や、プロジェクトの統括を行うという。

 なお、米トランプ政権については、「まだ具体的な政策が出ていない状況にある。今後、取引先である自動車メーカーなどの動きを注視したい。日立は、シリコンバレーに開発拠点があり、米国は重要な市場であることに変わりはない」と述べた。