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“超機能”を生かしたソリューション別提案を推進――、MetaMoJiのデジタルノートアプリ「GEMBA Note」

 MetaMoJiが、デジタルノートアプリ「GEMBA Note」において、ソリューション別提案を開始した。

 業種や業態に特化した提案であり、GEMBA Noteで利用できるテンプレートとして提供。現場導入の迅速化を図ることができる。

現場での利用を想定した「GEMBA Note」

 GEMBA Noteは、その名が示すように、さまざまな現場での利用を想定したアプリだ。

 建設現場、営業現場、サポート現場などの「現場」において、タブレット、スマホといったデバイスを、より効率的に利用するための基本機能を搭載する。手書き機能や写真撮影機能などを使って、刻々と変化する現場の瞬間を記録・処理でき、これまで、事務所に戻って行っていた作業を現場で完了させることができるなど、作業効率の改善、現場での業務品質の向上、ミスの削減に大きく貢献可能な点が特徴だ。

 Metamojiの浮川和宣社長は、「オフィスで仕事をするワーカーは、全体の約3~4割に留まり、残りの6~7割は、現場で仕事をしているワーカーだといわれる。これまでのITツールのほとんどは、オフィスワーカーを対象にしたものであり、現場に最適化したツールがなかったのが実態。オフィス用のツールをもとに開発したアプリが現場で使われていたが、操作が煩雑になる場合が多く、利用現場にIT化が促進されなかったという背景がある。GEMBA Noteは、タブレットやスマホの機能を使って、その場で写真を撮影したり、手書きでメモ書きしたり、大事な瞬間をすぐに録音したりといったことを可能にする、現場での利用に最適化したアプリであり、まだ手つかずだった約7割の市場を対象にしたものになる。現場の効率化を図ることができる」と語る。

Metamojiの浮川和宣社長

 Metamojiは、ジャストシステムの創業者である浮川和宣氏が設立した会社で、これまで、手書き入力ができる日本語変換ソフト「mazec(マゼック)」や、この技術をもとにしたデジタルノートアプリ「MetaMoJi Note」を開発。MetaMoJi Noteでは、タブレットやスマホを利用しながら、手書きでの入力のほか、文章や写真、音声などのすべてのコンテンツをひとつのアプリで利用でき、しかも自由に貼り付けることができる環境を提案してみせた。そのほか、ペーパーレスを実現しながら、多地点を結んで会議ができる会議支援アプリケーション「MetaMoJi Share for Business」も開発している。

 GEMBA Noteは、MetaMoJi Noteをベースに開発したもので、タブレット業務アプリの基盤「GEMBAアプリ基盤」の上に構築。MetaMoJi Noteが持つ、自由自在な編集機能や写真貼り付け機能、ボイス録音機能をそのまま継承するとともに、「日付・カレンダー」の概念を追加されたほか、フォーム機能により、業務で求められる定型フォームを簡単に作成できる機能を追加。テキスト、手書き文字、写真、カレンダー、表計算、PDF文書といった多種多様な情報を、1ページ上に配置して利用することができるため、一覧性を損なうことなく、現場での活用が可能になる。

 2015年6月には、GEMBA Noteの前身となるデジタル野帳アプリ「eYACHO」を大林組と連携して開発。大林組では、これを約5800台の現場端末で活用しており、そこで得られた知見やノウハウもGEMBA Noteに盛り込んだ。

 2015年11月には、個人向けのベータ版を提供開始。その後、月2回の割合で開催してきたユーザー説明会を通じて、適用事例やソリューション事例を集め、機能を進化させてきた。

 2016年5月からは法人向け製品「GEMBA Note for Business」を販売開始し、6月には個人向け製品を発売した。法人向け製品の年間使用料は5ユーザーで10万円から。個人向け製品は月額480円、年間5000円。現在はiOS版の提供のみだが、年内にはWindows版の提供を予定している。

利用シーンを想定した4つのソリューション

 今回のソリューション別提案は、法人向けのGEMBA Note for Businessに対応したもので、現場で必要な情報を収集して、その場で報告書などを作成する「現場調査(実測・スケッチ)業務効率化ソリューション」、検査現場や検査結果を管理し、見える化することができる「検査記録ソリューション」、保守現場での活用など支援し、統合的管理を行う「GEMBAフィールドソリューション」、センサー情報などから収集したデータをもとに現場から制御などが行える「Metamoji GEMBA IoTソリューション」の4つを提案している。

 いずれも具体的な現場での利用を想定して開発した。同社が推進するテンプレート化の第1弾ともいえるもので、今後、テンプレートを増やすことで、業種別、業態別の提案を拡大していくことになる。

 このうち「現場調査(実測・スケッチ)業務効率化ソリューション」は、シャッター会社の営業現場を想定して開発したものだ。

 シャッターは、一見、サイズが規格化されているように見えるが、実は、それぞれの場所にあわせたサイズに加工して納品するケースが多いという。新築よりもリフォームの案件が増加していることも、加工品の案件を増加させることにつながっているようだ。

 その際、営業担当者は、現場に赴き、実測するほか、スケッチをしたり、写真を撮影したりといった作業を行う。だが、スケッチが苦手な社員はその作業に時間がかかったり、スケッチ項目が漏れていると改めて現場に戻って作業を行ったりといった手間がかかっていた。また、会社に戻ると、このスケッチをもとに、工事指示書への転記作業が必要という非効率な状況も発生していた。転記作業だけでも平均で1件あたり約1時間かかっていたという。

 「シャッター会社では、技術者の数が限られているため、技術者が現場に行くことが少ないのが実態。営業担当者が実測などの作業を行っている。一方で、会社側には、営業担当者はなるべく多くの顧客を訪問してもらいたいため、事務作業の負担を減らしたいというニーズもあった。現場調査(実測・スケッチ)業務効率化ソリューションは、そうした背景から生まれたものになる」(浮川社長)という。

 現場調査(実測・スケッチ)業務効率化ソリューションでは、実測に必要な作業内容を画面上から指示。写真撮影や採寸、記入などのガイドに従って操作、入力すれば、誰でも簡単に工事指示書をその場で作成できる。写真は、iPadのカメラ機能を活用し、画像を取り込み、手書きで注意項目を書き込むことも可能。記入したものは、そのまま工事指示書として現場から会社に送信。即時に技術者が確認して、詳細に内容を確認したい部分をその場で指示することも可能だ。

 「かつての営業担当者は自ら設計図を描くことができたが、いまの若い営業担当者は文系出身が多く、設計図を描くことができないという声も聞く。現場調査(実測・スケッチ)業務効率化ソリューションを利用すれば、GEMBA Note for Businessのツールボックスを開くだけで、新人営業担当者でも、正確な情報を工事指示書に反映でき、正確性ととも、業務の効率化も図ることができる」とする。

記録作成
簡易製図部品
メールで送信

 2つめの「検査記録ソリューション」は、検査結果を現場で確認し、不具合が発生した際には、迅速に対応することを支援するもの。「管理者視点で検査現場や検査結果を見える化することができ、検査チェックリストや帳票を現場ごとにカスタマイズし、最適化した管理が可能になる。各責任者のレベルで確認すべき内容をレビューしやすい環境を構築でき、さらに、アクセス権を設定することで、検査結果や改ざん防止にもつなげることができるのが特徴」だとする。

 検査記録ソリューションは、我々な領域への対応が可能というが、まずは、食品製造業を対象に提案を進めたいという。

 例えば、食品製造工程では、受け入れ、保管、解凍、加熱、包装などの工程があるが、管理コンソールからどの工程で遅れが出ているかをリアルタイムで確認したり、どこに不具合が発生しやすいのかといったことも確認できる。もちろん検査工程の状況も確認が可能だ。

 「製造現場では、常に改善が進んでおり、それに伴って検査管理を行うソリューションも柔軟に変更する必要がある。また、食品の製造工程の管理が強化されるなかで、検査工程を一元的に管理したいというニーズも出ている。検査管理者は一日中、工場内を飛び回っているケースも多いが、それを一カ所で管理できるようになる」とする。

 食品製造工場は、全国各地で増加しているが、同様の課題が共通的に発生しているという。GEMBA Note for Businessの使い勝手の良さと柔軟性は、こうしたニーズに合致すると自信をみせる。

検査ライン責任者朝会シート
食品製造現場
検査記録受け入れ検査チェックシート(逸脱発生時)
逸脱対処後の検査状況検索結果画面
解凍検査の検査条件入力画面(検査ライン責任者と検査担当者が同時に確認する)
ライン責任者による検査状況検索画面

 3つめの「GEMBAフィールドソリューション」は、フィールエンジニアが現場で利用することを想定したソリューション。常に現場を回っているフィールドエンジニアが、外出先から、コールセンターに入った修理依頼情報を取得。訪問先企業の状況などを収集し、それをもとに、現場に駆けつけ、作業を行い、作業が完了したら、その情報を、本社などの業務システムに出力することができるというものだ。管理者視点で統合的管理を行えることが特徴だという。

 コールセンターが取得した情報は、Salesforceコネクタを使ってSalesforceと連携。この情報をGEMBA Note for Businessに出力する。また、GEMBA Note for Businessから出力された作業完了情報も、Salesforceに統合され、管理者などが確認できるという。

 また、修理作業に必要な情報も画面に表示することができ、作業手順や注意個所などについても、GEMBA Note for Businessで確認できる。

 「作業手順などの情報表示については、オフラインでも利用できるようになっており、下水道管のなかでの作業など、電波が届かない場所でも利用することができる。また、多様な現場に対応できるように、帳票を自由にカスタマイズできるのも特徴であり、Salesforceの情報を活用し、マネジメントコンソールから、判断や現場への指示が可能になる」という。

チェックリスト
作業完了報告書
帳票
Salesforceコネクタを使ってSalesforceと連携可能だ

 4つめの「Metamoji GEMBA IoTソリューション」は、センサーなどを通じて、さまざまな対象物から得られるデータに人間の判断、解釈、補正を加味して、遠隔操作などを行うことができるものだ。遠隔で操作する制御手順を視覚化。これにのっとって操作をすれば、安全性の高い運用などを実現できるという。

 具体的な例として、英国ロンドンに設置したディーゼル発電機の発電量を計測し、その情報をAWS IoT プラットフォームを通じて収集して、GEMBA Note for Businessの画面上に貼り付けたフォーム部品を使って表示。さらに、日々の測定値を見やすく表示したり、制御手順を自由に変更したりといったいった操作が可能になる。

 「離れた場所にある機器を、現場から制御したり、アラート通知やレポートティング、診断なども行える。ノートに書く感じで、制御手順を変更することが可能であるほか、収集した情報から変化の気づきが得られるような工夫もしている」という。

発電量
発電制御
手順書による制御
カレンダーによる集約表示

 こうしたソリューション別の提案はこれからも増やしていく考えであり、それらの展開においては、パートナーとの連携も進めていくことになる。

 パートナー連携としては、すでに、アニドックが、GEMBA Note for Businessを活用した「訪問診療ソリューション」を開発したことを発表している。

 アニドックは、動物病院を直営するほか、自宅でペットを診察する往診獣医「anidoc (アニドック)」事業を展開。往診時の記録や顧客管理システムの構築において、GEMBA Note for Businessを採用し、短期間での運用を開始。同製品が持つ日付管理や、手書き機能によって、現場での操作性と管理性を両立しているほか、顧客管理システムとして利用していた「Salesforce」との連携も実現している。これを、ソリューションテンプレートとして、今後、横展開していくことになる。

 Metamojiでは、こうしたソリューション型提案において、製造、金融・保険、飲食、設備管理、保守サービス、医療・福祉、建設、研究、農業、食品加工などにも幅広く業種展開を行っていく考えを示し、それに伴い、テンプレートを増やしていく考えだ。

「多機能」とは異なる「超機能」

 こうしたソリューション別の提案において、威力を発揮するのが、GEMBA Noteが持つ「超機能」という考え方だ。

 「超機能」は浮川社長の造語であり、一般的に言われる「多機能」とは異なる。

 GEMBA Noteには、数多くの機能が搭載されている。浮川社長も「現場が求めている機能はすべて搭載しており、現場のニーズをすべて網羅できるアプリ」と自信をみせる。

 だがGEMBA Noteでは、多機能にすることで使い勝手を悪くするという、アプリが持つ宿命を排除することにこだわっている。ワープロソフト「一太郎」のジャストシステムの創業者である浮川氏が、その時代から、これまでに何度も苦労してきた点を抜本的に解決する考え方として行きついたのが、「超機能」であるといえよう。

 GEMBA Noteでは、必要な機能だけを使う形に利用者自身がカスタマイズでき、あとの機能は隠すことができる。必要な機能だけを使って、現場にあわせた仕様にカスタマイズすることで、現場が求める操作性を失うことなく、アプリの利用環境を作ることができるのだ。さらに、同社独自の手書き処理技術や、快適に動作するための工夫が随所に盛り込まれ、これに、タブレットやスマホの高機能化が加わり、スムーズな操作環境の実現にもこだわっている。

 こうした超機能の考え方が、ソリューション型提案を加速することになり、現場での操作性をさらに高めることになる。

 現時点では、テンプレートの数が少ないため、むしろ、テンプレートを開発できる企業などが、GEMBA Noteの活用を検討している。だが、簡単な操作でテンプレートの開発が可能であるため、より現場に即した形で開発するには、自ら開発した方が最適だ。そして、テンプレートが増加することで、これを利用した導入も増えていくことになり、これも、GEMBA Noteの利用促進を促すことになる。

 誰でも利用できることが前提となり、「待ったなし」での入力や処理が求められる現場に最適化したアプリとしてのGEMBA Noteの位置づけは、ソリューション型提案の加速によって、さらに定着していくことになりそうだ。