日本の開発者はクラウドの可能性を最も理解している~米Microsoft

DP&Eグループのアブハドバ コーポレートVPに聞く


 「『Windows Azure』、『Kinect』、『Windows Phone』。この3つのプラットフォームをMicrosoftは提供し、その上で、ディベロッパーの柔軟な発想を支援する開発ツールを提供する。クラウド時代になっても、ディベロッパーに対する姿勢はまったく変わらない」――。

 米Microsoft ディベロッパー&プラットフォーム エバンジェリズグループのワリッド・アブハドバ コーポレートバイスプレジデントはこう切り出した。そして、「日本のディベロッパーが、クラウドの可能性を最も理解している」とも語る。

 Microsoft社内ではD&PEと呼ばれるディベロッパー&プラットフォーム エバンジェリズグループは、ディベロッパーに対する支援を行う組織であり、7月から始まる同社2012年度においては、冒頭に触れた、3つのプラットフォームへの取り組みが重点課題になると語る。

 2003年から2005年までMicrosoftの日本法人でも勤務した経験を持つ、アブハドバ コーポレートバイスプレジデントに、クラウド時代におけるディベロッパー向け支援策について聞いた。

 

ディベロッパーにとって、クラウドには3つのバリューがある

――2010年3月にスティーブ・バルマーCEOが、「Microsoftは、今後、クラウド・コンピューティングに優先的に投資する」と宣言してから、間もなく1年半を経過しようとしています。この間、クラウド・コンピューティングに対するディベロッパーの意識はどう変化していますか。

米Microsoft ディベロッパー&プラットフォーム エバンジェリズグループのワリッド・アブハドバ コーポレートバイスプレジデント

アブハドバ氏:ディベロッパーの意識は、この1年半で驚くほど変わったといってもいいでしょう。クラウド・コンピューティングは、ディベロッパーにとって3つのバリューがあります。

 ひとつは、フレキシビリティがあること、そして2つめにはパワフルであること。最後に、より多くのユーザーにリーチできる幅を持っていることです。もはや、ディベロッパーにとってクラウドは懐疑的なものではなく、どうやってクラウドを最大限に活用するかが重要なテーマになっています。

 一方で、クラウド時代においても、ディベロッパーに対するMicrosoftの姿勢や戦略にはまったく変更がありません。これまで同様に、クラウドの世界においても、Windows Azureという、開発者にとって最高のプラットフォームを提供し、さらに、Microsoftが提供するOS以外を含めた、幅広いデバイスでもそれが利用できるようになっている。

 また、PHP、Java、.netに対応しており、さらに、Windows Azureに対してベストツールとなるVisual Studioを用意している。Windows Azureは、豊かなサービスであり、優れたツールを充実させるとともに、エコシステムを実現するプラットフォームです。そして、可用性についても高い評価を得ており、高い水準でのSLAも提供できる。だからこそ、ディベロッパーはMicrosoftのクラウド・コンピューティングに期待しているわけです。DP&Eがこの1年半に渡って取り組んできたのは、とにかくディベロッパーに対して、「見せる」ということでした。

 それを実践してきたことで、Microsoftのクラウド・コンピューティングを活用すれば、リッチネスなサービスが提供でき、ディベロッパーにも大きなビジネスチャンスがあることを理解してもらったと考えています。


――日本のディベロッパーの理解はどの程度進んでいると見ていますか。

アブハドバ氏:クラウド・コンピューティングに関して、最もその可能性を感じているのが日本のディベロッパーではないでしょうか。6月に日本を訪れ、日本の大手グローバル企業と話をしました。そこで感じたのは、東日本大震災の経験が、クラウドはあらゆる点で有用なツールになるとの認識に強くつながっているということでした。今後、日本におけるクラウド・コンピューティングの活用は一気に加速していくものと見ています。

 

KinectとWindows Phone 7からも新しい価値が

――注目されるMicrosoftの技術のひとつとして、Kinectがあります。これに関してはどんな動きがありますか。

アブハドバ氏:Xboxは、世界中のコンシューマコンソールのなかで最も早く成長している製品であり、Kinectは、そのXboxのための周辺デバイスとして登場しました。

 しかし、この技術はゲーム専用機だけの技術にはとどまりません。6月中旬には、PC環境での開発を可能とするKinectのSDKの提供を開始しました。これにより、今後、Kinectの技術を使ったPC用のアプリケーションが出てくる。ゲームに向けて活用されるだけでなく、われわれの生活に役立つものが出てくることになるでしょう。これはまさに次世代のアプリケーションといえるものです。

 学生向けのIT技術イベントとして、7月8日から米国ニューヨークで開催した「ImagineCup」世界大会においても、Kinectの技術を活用したプロジェクトは、10プロジェクトにも及んでいました。

――出遅れが指摘されているWindows Phone 7ですが、日本においては、Mangoが5月に発表されました。その後の手応えはどうですか。

アブハドバ氏:日本のディベロッパーの多くが、Mangoのリリースによって、いよいよWindows Phone 7という新たなプラットフォームが登場してくることに期待しています。日本では、間もなく製品がリリースされることになります。

 Mangoによるアプリケーションは、日本におけるWindows Phone 7搭載端末の発売と同時に、マーケットプレイスでもリリースされることになります。このイノベーティブな技術に、みんながエキサイトしていますよ。

 そして、極めて重要なプラットフォームだと認識してもらっている。Windows Phone 7は、すばらしいプラットフォームであることは間違いない。ただ大切なのは、Windows Phone 7に関しては、短期的なものではなく、長期的なアプローチを行っていく必要があるという点です。マーケティングをきちっと展開していくことも必要ですが、ディベロッパーに対して、しっかりとした形で働きかけをしていく必要があります。


――2012年度はDP&E部門としても忙しい1年になりそうですね(笑)。

アブハドバ氏:2012年度は、「Windows Azure」、「Kinect」、「Windows Phone 7」という3つのプラットフォームが大変重要な年になります。これは言い換えれば、「クラウド」、「NUI(ナチュラルユーザーインターフェイス)」、「デバイス(モバイルデバイス)」ということになります。この3つの領域はすべて重要なものとなります。

 Microsoftはイノベーションカンパニーであり、新たなテクノロジーを提供しつづけるために、エンジニアリングへの投資をますます加速させていきます。そして、この3つのプラットフォームをベースにした形でバリューを提供することに力を注いでいくことになります。

 特に、日本のディベロッパーについては、2つの点に期待しています。ひとつは、クラウドに対して迅速に移行すること。そして、もうひとつはMicrosoftのアセットを活用してもらい、HTMLとJavaScriptに対する準備を進めてほしいという点。また、Kinectのアプリケーションを開発するという点では、日本が適した文化を持っている国だと考えています。これは日本の学生に対しても期待している要素のひとつですが、日本人は革新的なことに取り組む文化を持っている。その革新性を生かすことができ、知恵を最大限に活用するためのツールをMicrosoftは提供することができる。すばらしいものが日本から登場してくることを期待しています。

 

日本での経験が自分の仕事や生活を豊かにした

――ちなみに、日本での勤務経験は自身のキャリアにどう生きていますか。

アブハドバ氏:2003年から2005年までの3年間にわたるMicrosoftの日本法人での勤務によって、新たなスキル、カルチャーを学んだことで、自分の仕事や、生活を豊かにすることができるようになった。特にコミュニケーションの面では多くのことを学ぶことができたと思っています。私は、日本という国がとても好きですよ(笑)。

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