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「Who uses OpenStack?」、ユーザー調査の結果を公開
OpenStack Summit Tokyo 2015レポート
(2015/11/2 09:00)
オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」の国際カンファレンス「OpenStack Summit Tokyo 2015」が、10月27日から30日まで、初めて日本で開催された。参加者は5000人を超え、そのうち約三分の二が海外からの参加者だったという。
いかに世界のユーザーグループを支援するか
3日目の29日には、「Ambassador Community Report」のセッションが開かれた。OpenStackのAmbassador(大使)とは、世界各地のOpenStackユーザーグループのリーダーから認定されて、世界のユーザーグループとOpenStack Foundationの仲立ちをする存在だ。
Ambassador Community Reportセッションには、世界各地のAmbassadorが集まり、会場の参加者たちをまじえて、ユーザーグループとそれに対するOpenStack Foundationの支援についての課題を議論した。なお、日本からは長谷川章博氏と吉山晃氏が壇上に上がった。
世界のユーザーグループの参加者は約4万人だという。北米が多く、アジアパシフィック地域とヨーロッパがそれに続く。
議論では、新しい公式ユーザーグループの認定方法や、そのときに特定の一企業が支配するグループでないことをチェックする必要性、既存のユーザーグループの認定、トレーニングやスポンサーシップでの支援、ドキュメント整備、OpenStack Foundationとのコンタクト方法、メーリングリスト、ユーザーグループの立ち上げ方、イベントの開催サポート、講演できる人のリストを作るかどうかなどについて話し合われた。会場にはチュニジアのユーザーグループの人も参加しており、人もリソースも足りないという話も出た。
「Mitaka」へ向けたProduct WGの取り組み
2日目には、OpenStack Foundationによるアナリストとメディア向けの説明会も開かれた。
OpenStackの次期リリース「Mitaka」に向けて、Carol Barrett氏(Intel)とShamil Tahir氏(IBM)が、OpenStack FoundationのProduct Working Group(Product WG)の取り組みを解説した。ちなみに、OpenStackの各リリースのコード名は、アルファベット順の頭文字に合わせて、直前のOpenStack Summit開催地にちなんだ地名が選ばれる。
Product WGは、実際にOpenStackを使っているユーザーやオペレーターの多種多様な要望と、OpenStackの各開発プロジェクト側の状況とを分析し、次期リリースに盛り込む機能などを決定するグループ。企業でいえばプロダクトマネージャーに相当する重大な任務を負う。なお、Product WGは2014年後半から設けられた。
Product WGの活動全体とユーザーのニーズの分析についてはBarrett氏が説明した。リリースに向けての活動は、半年に一度のDesign Summit(OpenStack Summitで併催)にて始まる。
ユーザーストーリーには「Draft」「Proposed」「Tracked」の3つの段階がある。これらを分析のパイプラインにかけ、各プロジェクトを見ながらギャップ分析し、ロードマップにマッピングしていくという。見直しは2週間に1回行われ、開発チームに伝えられるという。
Tahir氏は、「ロードマップは変わるもの」と前置きして、プロジェクトごとのロードマップについて解説した。
Product WGでは、次のリリースに向けてどういう機能について作業するか、すべてのプロジェクトのPTL(Project Technical Lead)と話し合うという。そうしたロードマップを、Tahir氏は、「10,000フィート上空から俯瞰(ふかん)」「1,000フィート上空から俯瞰」「100フィート上空から俯瞰」と3種類の粒度から紹介した。
“10,000フィート上空から”としては、各プロジェクトがそれぞれ「scalability」「高可用性」「管理性」「モジュール性」「相互運用性」の5つのテーマのうちどれに注力するかを、リリースごとにチェック。これによって、多くのプロジェクトが注力するテーマや、1つのプロジェクトが継続して追求しているテーマなどがわかる。
“1,000フィート上空から”としては、各テーマとリリースごとに、各プロジェクトの取り組み内容を深掘りした。オーケストレーションの「Heat」では複数のエンジンの切り替え、DB as a Serviceの「Trove」ではMySQLの扱い方の変更など、これによりプロジェクトの流れやプロジェクト間の関係がわかるという。
“100フィート上空から”としては、各プロジェクトに関するページを紹介。コアサービスからそれ以外(BIG TENT)まで、それぞれのプロジェクトについて情報が集まっているところを見せた。
ユーザー企業の利用状況をデータで見る
アナリストとメディア向けの説明会ではほかに、Mark Collier氏(OpenStack FoundationのCOO)が、「Who uses OpenStack」と題して、ユーザー調査の結果のサマリーを紹介した。なお、全結果はOpenStack Foundationのサイトで公開されている。
地域ごとのユーザー数としては、北米が44%で最大。それにアジアの28%が続く。「東京でOpenStack Summitを開催したのも、アジアや日本での関心が高かったから」とCollier氏。
利用している企業の規模としては、昔は小さいスタートアップ企業か超大企業か両極だったが、いまでは散らばっていることが、全体の割合と推移とで示された。OpenStackを利用する理由としては、スピードが1位、それにベンダーロックイン回避、運用効率化、コスト削減などが続いた。
ユーザー企業が関心を持つ新技術としては、コンテナ、NFV、PaaS、IoTなどが挙げられた。OpenStackを利用している場として、オンプレミスのプライベートクラウド、パブリッククラウド、ホストされたプライベートクラウド、コミュニティクラウドの割合も示された。
使っているバージョンとしては、Icehouseが根付いてきているという。「大規模なデプロイで使える初めてのリリースと思われたのかもしれない」とCollier氏は見る。使われているプロジェクトについては、現在“コアサービス”と呼ばれるプロジェクトを85~89%が使っていることがわかり、「これを見て、コアサービスとそれ以外を分けて説明するように変えた」という。
用途としては、1位はソフトウェア開発/テスト/QA/CIといった分野、2位はインフラ、3位がEコマースを含むサービスだった。
ユーザーがOpenStackを動かすCPU総コア数と、その推移も示され、「健康的なトレンドだと思う」とCollier氏は語った。