12世代目となった「Dell PowerEdge」の進化とは?

x86サーバーの本命Xeon E5-2600シリーズを搭載、高密度化や管理機能向上なども


 デル株式会社は3月7日に、12世代目のx86サーバー「PowerEdge 12G」(以下、12G)を発表した。さまざまな機能向上を果たしたこの製品では、メインコンセプトとして「大容量のキャパシティおよびハイパースケール」「仮想化をより効率的に実現」「スモールビジネス、リモートオフィスへの対応」といったものを掲げ、それぞれにおいて進化を遂げている。

 例えば、「12G」では、1ラックあたり30倍ものVMが動作できるように、スペースあたりの性能を飛躍的向上に向上させている。また、パーツ交換作業をシンプルにすることで、管理作業の生産性を85.5%向上することで、管理作業の自動化・エージェントレス化を実現している。

 さらに、前世代のPowerEdge 11Gと比べ33%省電力化を果たしているほか、サーバー内部に44個もの内蔵センサーを設置し、サーバー内部の熱や電力の状況を事細かに知ることで、電力の最適化を果たしているという

 こうした特徴を持つ「12G」の中から、PowerEdge R720をお借りしたので、数回にわたってその特徴を紹介・レビューしていく。

 また、最新世代のサーバー向けCPUである、Xeon E5-2600シリーズを搭載する意味も大きいため、今回は同シリーズの特徴についても説明しよう。

 

さらなる高密度化を果たした第12世代のPowerEdge「12G」

第12世代のPowerEdgeは、大容量のメモリやHDD、プロセッサが搭載できるキャパシティ、仮想化の効率をアップ、スモールビジネスやリモートオフィスに適した静音性を実現している

 新しいPowerEdgeサーバーは、Intelの最新サーバー向けプロセッサ「Xeon E5-2600シリーズ」を搭載しているが、単に新しいプロセッサを搭載しただけではない。「12G」(12世代目)という名称が表しているように、全体の機能が大きく向上している。

 今回発表された「12G」は、タワー型(5U)のPowerEdge T620、2Uサイズのラック型PowerEdge R720xd/R720、1Uラック型のPowerEdge R620、ブレード型のPowerEdge M620、データセンター向けのPowerEdge C6220など、さまざまなフォームファクターが用意されているが、すべてのサーバーにおいて前世代よりも同じスペースで搭載できるHDD/SDDの数が増えている。例えば、PowerEdge R720xdでは、2.5型HDDが26台(もしくは3.5型が12台)搭載できるし、タワー型のPowerEdge T620では2.5型HDDが32台搭載できるようになっている。

 また、HPCなどの使われる内蔵GPUが標準で2枚搭載できるようになっている。タワー型のT620では、最大4枚の内蔵GPUが搭載可能だ。


PowerEdge R720xdは、Hadoopなどのビッグデータ処理に向けたモデル。PowerEdge C6220は、2Uのサーバーにサーバーユニットを4つ搭載できるシェアード・インフラストラクチャを採用したデータセンターに向けたモデルPowerEdge R720は、最も標準的な2Uのサーバー。このサイズで内蔵GPUが2枚搭載できる。PowerEdge R620は、1Uのモデル。PowerEdge M620はブレードサーバーだPowerEdge T620は、5Uのタワー型サーバー。最も拡張性が有り、2.5型HDDが32本(3.5型HDDは12本)、内蔵CPUは4本搭載可能

 「12G」では、SSDをディスクキャッシュとして使う(CachCade I/Oアクセラレータ機能)ために、新しいRAIDコントローラが採用されている。CacheCade I/Oアクセラレータ機能は、RAIDコントローラに接続されたSSDを自動的にディスクキャッシュとして利用するため、数台のSSDを導入するだけで、RAIDディスクの性能を大幅にアップする。

 デルのベンチマークでは、Oracle Databaseを使用した場合、最大28倍のクエリー性能、3倍のユーザーがサポートできたとレポートしている。

 ストレージではもう一つ、PCI Expressインターフェイスに直結するSSDドライブ(Express Flash)が提供された。Express Flashは、2.5型のSSDで、インターフェイスとしてはPCI Expressに直結している。このため、SATA/SASインターフェスのSSDよりも高い性能を出している。

 実際デルのテストでは、15K SAS HDD×16台をRAID化したドライブよりも、Express Flashは10倍の性能を示している。


新RAIDコントローラは、SSDをHDDキャッシュとして利用可能。さらに、PCI Expressインターフェイスに直結するSSDも用意されているCacheCade I/Oは、16台のRAIDと比べて2倍のアクセス性能を示している。すべてがSAS SSDのドライブに比べると性能は落ちるが、HDDが利用できるので大容量かつ、低価格で高いディスク性能が得られる。Express Flashは、SAS SSDよりも速く、最も高速なドライブとなっている

 

ネットワーク面での改良

 12Gでは、ネットワークに関してもフレキシブルなシステムに改良されている。セレクト・ネットワーク・アダプタにより、内蔵のNICをモジュラー型にしているため、10Gigabit Ethernet(GbE)、1GbE、10Gbps FCoE(CNA)など、ユーザーの必要に合わせて簡単に変更できる。もちろん、バックパネルのコネクタも変更できるようになっている。

 NICに関しては、ユーザーがI/Oポート数や帯域管理ができるNICパーティショニング機能(スイッチ非依存)も用意されている。これを利用すれば、10GbEを仮想的な複数のネットワークとして利用することができる。


セレクト・ネットワーク・アダプタを使えば、内蔵NICを自由に変更可能。ユーザーのニーズに合わせて、10GbE、FCoEなどに変更可能。

 

消費電力面にも配慮、80PLUS Platinumの高効率電源を用意

 HPCに利用するGPUは、非常に電力を消費し、熱も多量に発生させる。このため、12Gでは、複数の内蔵GPUを搭載することを考え、80PLUS Platinum認証(94%)の高効率電源が複数(495W、750W、1100W)の種類用意されている。さらに、今年中には、電源効率を96%にアップしたTitanium認証の750W電源も用意されている。


「12G」では、すべてのモデルでPlatinum電源を採用。これにより、電源変換の効率が94%に達する。年内には、Platinumを超える効率を実現したTitanium電源をリリースする

 前世代の「11G」は、3モデルだけが外気冷却に対応していた。これに対し「12G」では、すべてのモデルが外気冷却に対応している。最高動作温度としては45度、最高湿度90%までの環境に対応している。もちろん、こういった高温、高湿環境で常時動作できるわけではないが、夏場の一時期だけデータセンターの室温を上げて、消費電力を下げるといった運用も可能になる。


「12G」は、外気冷却にも対応。動作温度をアップすることで、データセンターのエアコンの電力消費を抑える

 

管理機能のiDRAC7 Enterpriseを採用

 管理機能として、新しいiDRAC7 Enterpriseが採用された。iDRAC7 Enterpriseは、単なるIPMIだけでなく、OS非依存のエージェントフリーモニタリング機能が提供されている。この機能により、OSやハイパーバイザーを問わずに、さまざまな環境でハードウェアの監視が行える。

 また、統合システム管理コンソールのOpenManage Essentials、統合電力管理コンソールのOpenManage Power Centerなどの管理ソフトウェアも付属している。

 パーツやマザーボード交換時の自動再設定機能が用意されることで、パーツ交換後、自動的に保存されている設定やファームウェア更新することで、システムの安定性とメンテナンス時間の簡略化を図っている。


iDRAC7を中核として、サーバーの管理・運用の効率化しているDell OpenManage PowerCenterを利用することで、サーバーの電力監視だけでなく、ラックごとの電力監視も可能になる

サーバー向けのSandy Bridge世代プロセッサXeon E5-2600シリーズを搭載

 ここまではCPU以外の機能強化を紹介してきたが、最後に、最新のXeon E5-2600シリーズを搭載することの価値を説明する。

 昨年、クライアント向けに第2世代Core iシリーズとして提供開始されたSandy Bridge(開発コード名)世代のプロセッサだが、サーバーへの本格的な展開は1年遅れてしまっていた。

 シングルソケット向けのXeon E3-1200シリーズは発表されていたが、CPUソケットもLGA1155ソケットを使用するなど、ある意味、クライアント向けのプロセッサをそのまま流用したものといえる。

 本格的にサーバーに展開するためには、市場で主流となっている2ソケットサーバー向けのXeonが必要とされており、多くのユーザー企業、サーバーベンダーが待ち望んだのが、3月に発表されたXeon E5-2600シリーズ(LGA2011ソケットを使用)だ。


Xeon E5-2600シリーズは、高いパフォーマンス、電源効率、セキュリティ、I/O性能などにより、今後のデータセンターにぴったりなプロセッサだXeon E5-2600シリーズの新機能一覧
E5-2600シリーズは、多くのサーバーベンダーのベンチマークで高い性能を発揮しているXeon E5-2600シリーズは、以前のX5600シリーズと同じ消費電力で性能が1.5倍にアップしている

 Xeon E5-2600シリーズの特徴としては、グラフィックコアを搭載していたクライアント向けの第2世代Core iプロセッサからグラフィックコアを削除し、サーバー向けにCPUコアを増強したり、キャッシュメモリの容量を増やしたりしている点だ。さらに、メモリインターフェイスの強化も図られた。

 コア数については、プロセッサを再設計することで、最大8CPUコア/16スレッドまでサポートしている。これは、第1世代のCore iシリーズから採用されいた、プロセッサのモジュラー設計により実現している。

 クライアント向けの第2世代Core iプロセッサが搭載していたグラフィックコアに関しては、サーバー向けということで削除し、

 また、3次キャッシュメモリを最大20MBに増加しているが、CPUコアと3次キャッシュメモリの接続には、第2世代Core iプロセッサと同じリングバスを採用している。ただし、サーバー向けにスピードをアップしている。

 外部メモリチャンネルは1プロセッサあたり4本に拡張され、1チャンネルあたり3本のDIMMを搭載可能。メモリはDDR3-1600に対応した。

 2ソケットのサーバーでは、最大24枚のDIMM(12本×2プロセッサ)、最大1.5TB(64GB×12本×2プロセッサ)ものメモリが搭載できる。ここまでくると、2ソケットのサーバーであっても、ある程度のプライベートクラウドを構築できるだろう。また、最近注目されているビッグデータ分野においても、大容量メモリが搭載できることは大きなメリットになる。

 このほか、2つのプロセッサを接続するQPI(Quick Path Interconnect)インターフェイスも、以前のXeon 5600シリーズ(Westmere世代)の6.4GT/sから、8.0GT/sへと1.25倍スピードアップしている。QPIの性能アップにより、2つのプロセッサ間でのデータ通信の性能がアップする。これにより、システム全体の性能も向上するのだ。


Xeon E5-2600シリーズは、2ソケットをサポートしたサーバー向けプロセッサの本命だ。最大8つのCPUコアを備え、PCI ExpressインターフェイスもCPUに統合した

 Xeon E5-2600シリーズには、ターボ・ブースト・テクノロジー2.0が搭載されているため、消費電力に余裕がある場合は、動作クロックを大幅に引き上げて、CPUコアあたりの処理性能をアップする。

 例えば、Xeon E5-2690は定格では2.9GHz動作だが、ターボ・ブースト時には3.8GHzで動作する。ターボ・ブーストでどのくらいクロックアップするかは、各プロセッサの仕様によって異なるが、TDP(Thermal Design Power:熱設計電力)の高いプロセッサほど、ターボ・クロック時に引き上げられる動作クロックが高くなっている。


Xeon E5-2600シリーズは、TDPに余裕があるときに動作クロックを引き上げるターボ・ブースト・テクノロジー2.0が採用されている。ターボ・ブースト・テクノロジー2.0は、CPUが自動的に動作クロックを引き上げるため、新たなソフトウェアの導入は必要ない

 またプロセッサアーキテクチャはSandy Bridge世代と同じため、第2世代Core iプロセッサで採用したAVX命令などにより、浮動小数点演算の性能を2倍にアップできる(ただし、ソフトウェアがAVXをサポートしている必要がある)。


Xeon E5-2600シリーズは、Sandy Bridge世代のアーキテクチャを採用しているため、新たにAVX命令をサポートしている。浮動小数点演算が高速化するため、科学技術計算、金融工学などの用途には、大きなメリットがある

 もう一つつ重要なポイントとしては、Xeon E3-2600シリーズでは、PCI Express3.0を40レーン内蔵している(インテグレーテッドI/O機能)。PCI Express3.0は、1レーンあたり2Gbps(双方向)となっている。これは、PCI Express2.0に比べると2倍の性能アップを果たしている(PCI Express2.0は1レーンあたり1Gbps)。

 さらに、以前のプロセッサでは、チップセット側でPCI Expressがサポートされていた。このため、プロセッサから見ると遅延が大きかった。Xeon E5-2600シリーズでは、プロセッサ内部にPCI Expressを統合しているため、インターフェスのスループットが向上している。

 最近のサーバーでは必須になりつつある10GbEのイーサネットインターフェイスも、性能の低下を招かない。また、サーバーベンダーによっては、HPCに向けて、複数のGPGPUが搭載できるサーバーを設計することも可能だ。


インテグレーテッドI/Oでは、プロセッサ側にPCI Expressインターフェイスを内蔵することで、PCI Expressカードの性能をアップする

 ネットワークに関しては、E5-2600シリーズでは、DDIO(Data Direct I/O)という機能を用意している。この機能は、PCI Expressに接続された10GbEからのデータを直接プロセッサの3次キャッシュメモリにコピーするもの。これまでのように、ネットワークからのデータをいったんメインメモリに保存してからプロセッサにコピーする必要はなくなる。つまり、ネットワークからのデータトランザクションに関して、余計なステップが入らないため、高速に動作するようになる。

 DDIO機能は、インテル以外のネットワークカードでも利用できるため、多くのユーザーにとっては大きなメリットとなる。特に、ネットワークストレージを利用するクラウドにおいては、性能を向上させるだろう。


DDIOを利用すれば、ネットワークに送受信するデータをメインメモリにいったん保存せず、プロセッサ内部のキャッシュを使うことで、メインメモリからプロセッサへのデータ転送のステップが省ける。これにより高速なネットワークを高い効率で利用可能だインテグレーテッドI/O、DDIOなどの組み合わせにより、I/Oのパフォーマンスが向上する

 Xeon E5-2600は、上位のXeon E7シリーズが持つRAS(Reliability、Availability、Serviceability)機能の一部を取り込んでいる。

 E5-2600シリーズでは、メモリチャンネルが4本存在する。DIMMは、それぞれのチャンネルに挿すことが前提になっている。もし、あるDIMMにトラブルが起こったときに、そのDIMMだけを切り離すと、4チャンネル(4本)が前提で動作しているメモリアクセスにトラブルが起きる。

 このため、E5-2600シリーズでは、別のメモリチャンネルに存在するDIMMも切り離して、システム自体がストップしないようにする(Failed DIMM Isolation機能)。ただし、メモリ容量が少なくなるため、早急に問題があるメモリを発見して、トラブルを解消する必要がある。

 これ以外にも、PCI Expressのホットプラグ機能、CMCI(Corrected Machine Check Interrupts)機能がサポートされている。

 CMCIは、あるCPUコアにトラブルが起こった場合は、OSと協調して、トラブルをチェックして、CPUを再設定して、システムダウンを起こさずにシステムを動かし続ける。もちろん、ハードウェアだけでなく、OSがトラブルをチェックして、OS側でも再設定する必要がある。

 このようなRAS機能は、基幹システムを動かすサーバーは、突然ストップしないことが重要だ。トラブルが起きても、縮退しながらも動作するということが必要になる。

 

 ここまで見てきたように、「12G」は、クラウドを構築するインフラ、ビッグデータを処理するためのサーバーなど、今後のデータセンターにとって必須となる機能がさまざま詰め込まれている。競争力を持つ、フレキシブルな運用ができるITインフラにはぴったりなサーバーといえるだろう。

 次回は、実際にお借りした「12G」のPowerEdgeサーバーのベンチマークを行ってみたいと思う。

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