仮想化道場

Haswellアーキテクチャの最上位プロセッサ「Xeon E7 v3」

 5月6日に発表されたIntel Xeon E7 v3プロセッサは、昨年発表されたXeon E5 v3シリーズの上位プロセッサとして、ミッションクリティカル分野のサーバーに利用されるプロセッサだ。

 今回は、Xeon E7 v3の詳細に関して解説する。

Xeon E7シリーズは、ミッションクリティカル分野など企業の基幹システムを支えるサーバーのプロセッサとして利用されている。このほか、メインメモリが大容量化することで、仮想化のインフラやインメモリデータベースなどのシステムに利用されている
Xeon E7シリーズは、ハイエンドの企業システムや特定用途のサーバーなどに利用されている
Xeon E7 v3のプロセッサ写真。Xeon E7-4800世代から見れば、非常にコンパクトなプロセッサになっている

コア数の増加よりもメモリ容量の増強を優先

 今回発表されたXeon E7 v3は、最大コア数が18コア、最大スレッド数が36スレッドをサポートするプロセッサだ。ラストレベルキャッシュに関しては、最大45MBとなっている。

 前世代のXeon E7 v2(開発コード名:Ivy Bridge-EX)は最大15コア/30スレッドだったため、CPUコア数が劇的にアップしたわけではない。これは、Xeon E7 v2とXeon E7 v3では、プロセッサのマイクロアーキテクチャは改良されたが、製造プロセス(22nm)が変わらないためだろう。

 次世代のBroadwell(開発コード名)ベースのXeon E7(開発コード名:Broadwell-EX)は14nmのプロセスで製造されるため、コア数を増やすこともできるだろう。

 ただ、Broadwell-EXのベースとなるBroadwellアーキテクチャは、低消費電力のコアを目指して開発されていたことから、コアあたりのパフォーマンスはそれほどアップしていな。このためBroadwell-EXでは、Xeon E7 v3と同じく最大18コアあたりにしておき、それよりも消費電力を下げることに注力すると言われている。

 従って最大コア数を20コア以上に上げるのは、Broadwell-EXの次のSkylake-EX(開発コード名)になるのではと予測される。

 ちなみにSkylake-EXは、現状のスケジュールでは2016年後半、もしくは2017年になるだろう。ノートPCやデスクトップPCなどクライアントに向けたSkylakeプロセッサは、2015年後半にリリースされるが、サーバー向けのSkylakeはXeon E5などのシリーズでも2016年になるだろう。

Xeon E7 v3の特徴。CPUコアとしては、昨年発表されたXeon E5 v3で使用されているHaswellコアを利用している。なお信頼性を向上させるRun Sureテクノロジーは、Xeon E5 v3で採用されていた機能をバージョンアップした
Xeon E5 v3の特徴。比較するとコア数もラストレベルキャッシュも同じ。Run Sureテクノロジーやメモリのサポートの仕方(SMB経由)などが異なる
Xeon E7 v2とXeon E7 v3の機能比較。最大コア数が3つ増え、メモリはDDR4をサポートした。劇的な性能向上とはいえないが、DDR4サポートがパフォーマンスの向上に寄与している
Xeon E7シリーズは、昨年発表されたXeon E7 v3シリーズから、Xeon E5シリーズなどと同じようにTick/Tock戦略で毎年アップデートが行われている。次世代は、Broadwellコアを利用した製品になる
Xeon E7 V3のラインアップ。最大2.5GHz動作、18コアのプロセッサで、最大165Wを消費する。
Xeon E7 v3が持つ各種機能は、企業のミッションクリティカルサーバーとして必要な基盤を提供する

 このように、CPUコア数やラストレベルキャッシュの容量などを見ると、昨年発表されたXeon E5 v3と全く変わらないが、このポイントだけでXeon E7 v3の特徴を表しているわけではない。

 大きな特徴といえるのが、最大メモリ容量だ。

 もともとXeon E7シリーズは、Xeon E5シリーズとは異なり、専用のメモリインターフェイス(SMI=スケーラブル・メモリ・インターフェイス)を4チャンネル持っている。SMIはSMB(スケーラブル・メモリ・バッファ)チップを経由して、DDR3/DDR4メモリにアクセスする。

 SMBは2チャンネルのメモリインターフェイスを持ち、各チャンネルあたり3枚(1つのSMBで合計6枚)のDIMMがサポートされている。

 つまりXeon E7 v3では、最大24枚(4×2×3)のDIMMを搭載することができる。もし64GBのDIMMを24枚用意すれば、1ソケットあたり1.5TBもの大容量メモリが搭載できる。

Xeon E7 v3のメモリは、4チャンネルあるSMIにSMBチップを接続して、DIMMをつなぐ。SMBチップは、2チャンネルのメモリチャンネルを持つ。このため、最大24本のDIMMが接続でき、64GB DIMMを使えば1.5TBのメインメモリがサポートされる

 またXeon E7 v3では、プロセッサ間のインターコネクトのQPI V1.1(最大9.6GT/s)を3本持っているため、専用のノードコントローラなどを使用せずに、4ソケットや8ソケットサーバーを構築することができる。

 Xeon E7 v3で4ソケットサーバーを構成した場合、最大6TBもの膨大なメモリ容量を持つサーバーとなる。8ソケットサーバーを構築すると144コア/288スレッド、12TBのメモリを持つサーバーとなる。

 ただ、4ソケットより大きなサーバーを構成する場合、ネットワーク的に離れた場所に置かれるプロセッサが出るため(プロセッサ間の通信がダイレクトに行われずに、途中に別のプロセッサをはさむことになる)、デメリットがある。

 このため、HPのHP Integrity Superdome Xなどでは、パフォーマンス的なデメリットが出ないように、独自開発のノードコントローラXNC2を使用することで、プロセッサのインターコネクトをXNC2に集め、すべてのプロセッサ(8ソケット)がXNC2を介して接続するようなアーキテクチャにしている(Superdome Xでは、XNC2を2用意することで、16プロセッサのサーバーを構築することもできる)。

 ちなみに、Xeon E7 v3では、DDR3(1600MHz)とDDR4(1600MHz、1866MHz)のメモリをサポートしている。価格的にはDDR4メモリは高価だが、Xeon E7 v3を採用したサーバーは、企業のミッションクリティカル分野で中核を担うものとして利用されるケースが多いと思われるので、全体のパフォーマンスを考えれば、スピードが速いDDR4メモリを採用するのが一般的になるだろう。

Xeon E7 v3では、4ソケットサーバーを構築しやすいように、1プロセッサにQPIが3本出ている。QPIをそれぞれのプロセッサに接続することで、シングルホップでほかのプロセッサに接続できる

(山本 雅史)