あらためて見つめ直すBPMの価値~PART01
実例から学ぶBPMの意義
■競争力の源泉は企業の“弾力”業務プロセスに主軸を移し、しなやかな変化対応力を得る
グローバル化が進展する中、企業はこれまで以上のスピード感を求められている。個別の部門やシステムにおける部分最適を積み重ねても、ビジネスの変化対応力は高まらない。部門横断的なプロセスに目を向けて改革を進める先進企業を例に、BPMの今日的意義を探る。
「このままでは、システムが事業拡大の重荷になりかねない」。日産自動車をプロセス可視化・標準化に駆り立てたのは、こうした危機感だ。「インドや東欧といった新興市場に進出する際、日本や欧米など成熟市場における業務フローやシステムをそのまま持ち込んでもうまくいかない」(グローバル情報システム本部IS企画統括部主担の大関洋氏)。
だからといって、業務フローをゼロから構築していては、迅速にビジネスを開始できない。一方、グループ内で稼働中のアプリケーションは1000近くあり、1つのアプリケーションには30~40のアプリケーションがひも付いている。このため、既存システムの一部を切り出して再利用することは難しい。
同社はこうしたジレンマから脱却するため、業務プロセスに目を向けた。標準プロセスの組み合わせで、新たな業務を短期間に構築可能にしようというわけだ。具体的には、グループ内の全業務プロセスを、6つのレベルに階層化。プロセスそのものや、前後のプロセスとの間で発生するインプット/アウトプット、KPIを定義し共有する取り組みを、2007年から推進している。
レベル1~4のモデリングは、IT部門に属するビジネスアナリストと、その予備軍であるビジネスドメインスペシャリストが担当。設計・開発や販売・マーケティング、サプライチェーンといった業務ドメインごとに、レベル4に当たるプロセスまでをすでに定義した。現在も、業務の変化に応じて改訂を続けている。
レベル5~6に相当するプロセスは、業務部門の担当者が自ら定義する。これまで、レベル6のプロセスのうち3分の1のモデリングを完了させた。残る3分の2も、2010年度中にモデリングすることを目指す。
【図1-1】日産自動車は、社内の全業務プロセスを6レベルに階層化。これまでに、IT部門のビジネスアナリストが中心となってレベル4までの定義を完了させた |