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クラウドでBIを Amazonの新サービス「QuickSight」

最大の魅力は「コスト」

 QuickSightはBI市場にどのような影響を与えるのかだろう。QuickSightの正式発表前にいち早く報じたWall Street Journalは、BIでは多数の製品がありながら「ビックデータから洞察を得られる」という約束を顧客に果たしてないBI市場の課題を指摘。現在でもビジネスレポートの半分以上がスプレッドシートをベースとしており、意思決定に活用されるデータは全体の40%にすぎないという。

 Forrester ResearchのアナリストBoris Evelson氏は「市場の競合が激しいわりには、企業の多くが現在提供されているBI製品に失望している」とWall Street Journalに語っている。

 そのEvelson氏はQuickSightの正式発表後、ZDNetへの寄稿でBI市場におけるインパクトを分析。QuickSightが注目に価するポイントとして、(1)AWSにデータを移行する方法を提供する、(2)AWSのメタデータを自動的に効果の高いBIに活用できる、(3)インメモリアクセラレーターのSPICEを利用してビックデータ分析を高速化できる、(4)業界級のデータ分析と仮想化プラットフォーム、(5)オープンなAPI――の5つを挙げる。

 中でも、Evelson氏が最大のポイントとするのは「価格」だ。「(QuickSightは)低価格のサブスクリプション形式で提供することによって、高価格で提供するBI、さらには同程度の価格のMicrosoft PowerBIにとっても恐ろしい競争相手になるだろう」と予想する。

 一方で、QuickSightの欠点として、すぐに使えるコネクタがない、データベースモデルとスキーマへの依存、長期的にみたTCO(総所有コスト)が不明なことなどを挙げ、「万能薬ではない」とも述べている。

 Wall Street JournalはBI市場に加え、AWSのプラットフォーム上により多くのデータを移行するよう促進するため「結びつきを強化できる」とする。また、これまでAWSの利用者は開発者や管理者などのIT担当がメーンだったのに対し、BIツールによりユーザーのすそ野をビジネスユーザーに広げる狙いもあると分析した。

(岡田陽子=Infostand)