Infostand海外ITトピックス

コンテナ標準化プロジェクト発足 Dockerの転機

「コンテナ標準戦争は終わった」

 標準化プロジェクトは、コンテナ技術を主導するオープンソース技術の2社、DockerとCoreOSの対立から来る業界の分裂を回避した。危機は、CoreOSが昨年末、Dockerとは別にコンテナ標準の「appc」と、そのランタイム「Rocket」(rkt)を発表したことで浮上したものだ。

 Dockerは昨年6月、同社の最初の正式版をリリースしたが、独自ライブラリlibcontainerの採用など、統合プラットフォームへと向かい、オープン標準から離れる動きを見せた。CoreOSはこれを批判し、コミュニティベースでappcの策定を始めた。

 CoreOSは「Dockerはいまや、広範囲な機能を一つのモノリシックなバイナリにコンパイルして、管理者権限でサーバーを動作させようとしている。同社の当初の“コンテナ標準”の約束は消えてしまった」(CEOのAlex Polvi氏)と述べ、よりオープンな仕様をappcで目指すと強調した。この動きをGoogle、Red HatやVMwareなどの大手が支持し、業界はかたずをのんで成り行きを見ていた。

 今回のOPCの設立はDockerとCoreOSが歩み寄った結果であり、コンテナ技術を利用している、あるいは利用しようとしている企業、開発者に歓迎されている。

 Forbesに寄稿したITコンサルタントのBen Kepes氏は「コンテナ標準戦争は終わった」と題して、次のように述べている。「Dockerが標準のデフォルトを定義したことは、同社が勝利したともとれる。しかし、これはCoreOSが負けたということではない。runCは結局のところ、誰でも利用できるフリーでオープンな標準だ。よりオープンなコンテナの標準を構築するという望みの中で、CoreOSはその主導権を取る代わりに、よい仕事をした」

 Dockerコンテナのエコシステムは拡大し続けている。Golub氏は開発者会議の中で、過去1年間の数字を示した。それによると、DockerConの参加者は1年前の550人から、少なくとも2100人に増加。また、Dockerのオープンソース開発参加者は460人から1300人に、GitHubのDockerプロジェクトは6500から4万に、そしてDocker関連の求人が2500から4万3000にそれぞれ増えていたという。

 正式版がリリースされて1年しかたっていない技術としては異例のスピードだ。エコシステムの成長を阻害するような小競り合いを演じている場合ではないのは当然だ。ただDockerが批判を受けた統合プラットフォーム化にも事情があった。

(行宮翔太=Infostand)