「宇宙進出だ、いや巨大コングロマリットだ」、Bill Gates氏の“謎の新会社”



 Microsoftの共同創設者にして大富豪、Bill Gates氏が第一線から引退して4カ月。慈善事業に専念するといっていた同氏が地元シアトルに新たな会社を立ち上げていることが明らかになった。カネ、地位、名声をすべて手に入れたが、生来のテクノロジー好きのGates氏のこと。何をしようとしているのかが関心の的となっている。


 “Gates氏の謎の新会社”を報じたのは、Microsoftの本社があるワシントン州シアトルのテクノロジーニュースサイト、TechFlashのTodd Bishop氏だ。Bishop氏は地元紙Seattle Post-Intelligencerで、「The Microsoft Blog」などに執筆してきたMicrosoft通の記者で、同紙を退社してTechFlashを立ち上げた。

 10月22日付のBishop氏のブログ記事によると、Gates氏はMicrosoftのフルタイムの仕事を退いたあと、ひそかに新会社をつくり、ハイテクを装備したオフィスを構え、商標登録までしていたという。会社の名称は「bgC3」で、米特許商標庁への登録では、業種は「シンクタンク」で、住所はINGTON 4000 Carillon Pt Kirklandとなっている。届け出は今年9月29日だ。

 この住所はワシントン湖の東岸の高級住宅地で、同じく東岸にあるGates氏の大邸宅からは5キロほどの距離にある。Bishop氏の調査では、「bgC3」は2008年3月設立で、もともとはCarillon Holdingsという名称だったが、7月初めに現在の名前に変更されていたという。Gates氏の“引退”から10日後のことである。

 商標は「科学・テクノロジー関連サービス」「産業分析・調査」「コンピューターハードウェア・ソフトウェア設計・開発」の区分を含んでいるという。また、「bgC3」の意味するところは、「bg」がBill Gates、「C」がCompanyあるいは「catalyst」(触媒)、そして「3」は彼の3番目の会社(組織)、すなわちMicrosoft、Bill & Melinda Gates Foundationに続くものである、とGates氏に近い筋の話として説明している。


 このニュースは大きな反響を呼び、Gates氏が新会社で何をしようとしているかの推測がどっと飛び出してきた。

 例えば、Computerworldのブログは、AppleのSteve Jobs氏がマウンテンビューのどこかにプライベートオフィスを持っているというのは、シリコンバレーの事情通には知られた話だが、Gates氏が、そんな小さなことをするはずがない―というわけで、大胆な推測に基づく次の5つのシナリオを挙げてみせた。

1)宇宙進出:「C3」には、星間物質である「Tricarbon」(炭素三量体)の意味がある
2)DNA解析
3)新しいコマンドライン・インターフェイス:C3は、BASICやC++と何か関係ありそう
4)Web 2.0にかかわる何か驚異的なスタートアップ
5)エネルギーからメディアまで何でも扱う巨大なコングロマリット

 ここまでくると、ちょっと悪ふざけっぽいが、実際にブログスフィアをにぎわせている憶測には「かもしれない」と思わせるものも多々ある。

 例えば、「ビジネスベンチャーではなく、科学・テクノロジー分野を含む開発支援会社」「Microsoftともill & Melinda Gates Foundationとも距離を置いたディスカッションの場」「新テクノロジーの情報を相互利用するためのクリアリングハウス」などなどである。

 テクノロジーとは切っても切れないGates氏のこと。いきおい、そうした分野の新しい活動であるとみる者が多い。


 しかし、The Wall Street JournalのRobert Guth記者はブログで、「bgC3」はそんな大げさなものではない、と言い切っている。Guth氏はGates氏から、Microsoftと財団の間に、くつろげる小さなくオフィスを持つという話を聞いており、数カ月前、湖畔にあるそのオフィスを訪れたこともあるという。Guth氏は言う。

 ―考えてみてほしい。Gates氏は、常に生活をみてやらねばならないスタッフを抱えている。彼らには給料が必要だ。そこで何をするか? スタッフのための法的な実体を用意しなければならない。

 つまり、“謎の会社”は個人スタッフを養うための会社であり、実際、オフィスを訪ねる前に、彼らがそこを「bgC3」と呼んでいるのも聞いたという。

 これに対しBishop氏は反論する。

 すなわち、「bgC3」がスタッフのための会社である可能性はあるが、ロゴを登録し、商標と名称の権利を守る手続きをとったことは十分注目に値し、この会社が公的なものであると考えられる。さらに、Gates氏は個人的なビジネスのための会社として、すでにWatermark Estate Management Services LLCという会社を持っている…などである。

 とにかくこの話、まだまだ不明な部分が多く、結論は出そうにないが、Gates氏への関心と、期待が依然として大きいことをあらためて示したものであることは間違いないだろう。

関連情報
(行宮翔太=Infostand)
2008/10/27 08:56